外務省:ハーグ条約中央当局の在り方に関するパブコメの取りまとめ結果について

「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(仮称)」(ハーグ条約)を実施するための中央当局の在り方に関する意見募集の取りまとめ結果について

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hague/pubcome_kg.html

平成23年11月24日

1.経緯

近年増加している国際結婚の破綻等により影響を受けている子の利益を保護する必要があるとの認識の下,政府は,5月20日付の閣議了解において,「ハーグ条約について,締結に向けた準備を進めることを決定。

今回,パブリックコメントの形で意見募集に付した内容は,ハーグ条約に関する関係閣僚会議における了解事項等及びこれまでに開催された計2回の「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」での議論を踏まえ,中央当局部分の法案の作成に向け論点を整理したもの。

2.取りまとめ結果

  1. (1)意見募集期間:平成23年9月30日~10月31日
  2. (2)意見募集総数:168件(団体20件,個人148件)
  3. (3)意見の主な内容は以下のとおり。

第1 中央当局の指定

〈賛否両論あり〉

  • 法務省が中央当局となるべきであるとの意見もあった。

第2 子の返還に関する援助

1.返還援助申請

〈賛成意見のみ〉

2.返還援助申請を我が国以外の条約締約国の中央当局に送付する場合

〈賛成意見のみ〉

3.子の返還に関する援助の実施

〈賛成意見のみ〉

4.国内における子の所在の確知

〈賛否両論あり〉

  • 個人情報の提供の義務や子の所在特定のための手段については,DV被害者への配慮や個人情報の過度な流出の防止の観点から,提供すべき情報の範囲は明確にすべきとの慎重な意見があった一方,子の所在特定は中央当局に課せられた重大な任務であるとして支持する意見もあった。
  • 中央当局へ集約された子の情報については,原則として例外事由を設けず,申請者及び相手国中央当局には提供すべきでないとの意見もあった。
5.子に対する更なる害又は利害関係者に対する不利益の防止

〈賛否両論あり〉

  • 子の再連れ去りを防止する観点から,中央当局が旅券の一時保管や新規発給を制限すべきであるとの意見や,出国禁止等の立法的措置を講じるべきであるとの意見があった一方,海外渡航の自由(憲法第22条)との関係で慎重な意見もあった。
6.子の任意の返還又は問題の友好的解決

〈賛成意見のみ〉

  • 裁判外紛争解決手続機関における調停手続を創設し,積極的に運用すべきとの意見や,外務省内に専門家チームを設置して対応すべきとの意見があった一方,外務省は司法機関ではないので,役割を限定し,既存の手続の紹介に留めるべきとの意見もあった。
7.子の社会的背景に関する情報の交換

〈賛成意見のみ〉

  • 条約の趣旨を実現するために必要な権限であるとしつつ,情報の提供は,裁判所からの求めがある場合に限定すべきである,情報の範囲や情報の提供依頼先が無限定に広がらないよう限定的に運用すべきである等の意見があった。
8.子の返還を得るための司法上の手続の開始についての便宜の供与

〈意見なし〉

9.法律に関する援助及び助言の提供についての便宜の供与

〈賛成意見のみ〉

  • 中央当局は,我が国及び締約国の法制度(特に親権,児童虐待,DV等)に関する情報提供,専門的な弁護士リスト等の提供を行うべきであるとの意見があった。
10.子の安全な返還の確保

〈賛成意見のみ〉

  • 子の常居所地国の中央当局及び在外公館と連携することが重要であり,特にDV事案への十分なケアが必要との意見があった。

第3 子との接触に関する援助

1.接触援助申請

〈賛否両論あり〉

  • 返還援助申請の場合に準じた取り扱いとすべきとの意見があった一方,条約締結後の不法な移動のみを対象とすべしとの意見もあった。
2.接触援助申請を我が国以外の条約締約国の中央当局に送付する場合

〈賛成意見のみ〉

3.子との接触に関する援助の実施

〈賛否両論あり〉

  • 中央当局は,子の最善の利益の観点から,条約締結前に連れ去り又は留置があった事案についても,できる限り支援をすべきとの意見があった一方,子との接触に関する援助の範囲や具体的措置については,子の所在の確知及び友好的解決の促進にのみ留めるべき,子の社会的背景に関する情報の交換を支援の範囲に含めるべきでない等の意見があった。
  • 中央当局が国内の既存の面会交流の制度を紹介できるよう,また,充実した面会交流が可能となるよう制度を整備すべきとの意見があった一方,中央当局は司法機関ではないので,活動は限定すべきとの意見もあった。

第4 不服申立ての制限

〈一般的な意見のみ〉

  • 申請が却下された場合には,行政不服審査法上の不服審査の申立て,又はそれに準じた手続を認め,他方でTPの人権を直接制限するような手段については不服審査の申立てを認めるべきとの意見があった。

第5 その他

  • 邦人の支援体制(DV・児童虐待等への対応を含む)を強化すべき,在外公館で受けた被害者による相談や連絡内容が国内における裁判所からの照会に応えられるようにすべきとの意見があった。
  • 中央当局が返還裁判等の事例の実態調査をする制度を国内法の中で定めるべきとする意見があった。
  • 不法な子の連れ去りの罰則化,共同親権の制度化,面会交流制度の改善といった既存の国内法制度の改正の必要性につき指摘があった。
  • DV及び虐待被害を懸念し,女性の安全の確保,子の意見を尊重する仕組みが必要であるとの意見がある一方,現在の制度では,DVが容易に認定され易く,冤罪が増加傾向にあることにも留意すべきとの意見があった。
  • 我が国がハーグ条約を締結することへの賛否両論があった。
  • ハーグ条約を実施するために同条約の目的と精神を認識した法律を制定し,不法に連れ去り又は留置された子の常居所地国への速やかな返還を促進し,他の条約締結国の法律に基づく監護の権利及び接触の権利を効果的に保護するよう促すとの意見があった。

(注:なお,法務省が行った「ハーグ条約を実施するための子の返還手続等の整備に関する中間とりまとめ案についての意見募集」に寄せられた意見には,外務省に寄せられた上記内容と同様の趣旨の意見もあった。)

9年前

外務省:非常勤職員の募集(ハーグ条約関連)

http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/saiyo/hijyokin/hague.html

採用情報
非常勤職員の募集(ハーグ条約関連)

平成23年11月18日

外務省は,ハーグ条約に関して,以下の要領にて選考による非常勤職員の募集を行います。積極的なご応募をお待ちしています。

採用期間
平成23年11月25日から12月24日まで(予定)
職務内容
ハーグ条約の実施のための法律案(中央当局部分)作成業務補佐等
待遇
採用後は,非常勤の国家公務員(ハーグ条約調査員)として,外務省総合外交政策局子の親権問題担当室(東京都千代田区霞が関2-2-1,外務本省内)に勤務することとなります。基本給は,原則として外務省専門職合格者に準じる扱いで格付けの上支給されます。健康保険,厚生年金保険及び雇用保険については,一定の基準を満たした場合,加入します。
採用予定者
1名
勤務日,勤務時間
週5日,9時30分から18時15分の間で週29時間を超えない範囲(昼休憩12時30分から13時30分)とする。
応募資格
(1)大学卒業又は同等の学歴を有すること。
(2)民法(家族法),民事訴訟法,行政法分野において高度の知識を有していること(同分野における実務又は研究の経験を有していることが望ましい)
(3)ワード(Microsoft)ソフト等を用いた資料作成,高度な事務処理能力を有すること。
(4)当該採用期間にわたり継続して勤務が可能なこと。
(5)日本国籍を有し,外国籍を有しないこと。
(6)次のいずれかに該当するものは,今回の募集に応募できません。
ア 成年被後見人又は非保佐人
イ 禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
ウ 一般職の国家公務員として懲戒免職処分を受け,当該処分の日から2年を経過しない者
エ 日本国憲法施行の日以後において,日本国憲法又はその下に整理した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他団体を結成し,又はこれに加入した者
(注)民間企業からの出向を希望される方は,所属企業人事当局の内諾を得てください。
申請期限及び申請書類の送付先
(1)締切:平成23年11月24日(木曜日)(必着)
(2)郵送先: 〒100-8919 東京都千代田区霞が関2-2-1
外務省総合外交政策局子の親権問題担当室
(注)郵送の際,封筒の裏に「ハーグ条約調査員」と朱書きしてください。
申込書類
(1)履歴書1通(書式は問いませんが,写真を必ず貼付してください。また,これまでの高校卒業以降の学歴及び職歴を1か月単位で全て記入してください。)
(2)研究成果,執筆論文等がある場合は,それらの写し。
(注)提出いただいた応募書類は返却いたしません。
選考方法
(1)第一次選考:書類審査
(2)第二次選考:一次選考合格者に対してのみ連絡の上,面接試験を実施します。実施日時は,一次選考合格者に対し直接担当者よりお知らせします。

問い合わせ先
〒100-8919 東京都千代田区霞が関2-2-1
外務省総合外交政策局子の親権問題担当室(担当:菅原)
電話:03-3580-3311(代表)

9年前

外務省:「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」第3回会合

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hague/kondankai03_gy.html

平成23年10月24日

24日,外務省において開催されたハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会第3回会合の概要は以下のとおり。

1.出席者

座長:
小早川光郎・成蹊大学法科大学院教授
ヒアリング対象者:
池田崇志弁護士(大阪弁護士会)
鈴木雅子弁護士(東京弁護士会)
川島志保弁護士(横浜弁護士会)
谷英樹弁護士(大阪弁護士会)
出席者:
棚村政行・早稲田大学法科大学院教授
藤原靜雄・中央大学法科大学院教授
大谷美紀子弁護士(日弁連)
相原佳子弁護士(日弁連)
杉田明子弁護士(日弁連)
関係府省庁(法務省,内閣府,厚生労働省,
文部科学省,警察庁)等

2.議事要旨(議事録は,別途掲載予定)

(1)ヒアリング

(ア)池田崇志弁護士
  • 実際に受任した国際的な子の連れ去り案件(外国から日本に連れ去ったケース)の概要及び外国と我が国のそれぞれの裁判所の判断の要旨について説明。
  • 一般的に言われている「DVの主張」は,きちんと事実関係を把握する必要がある。この事案では,母親から父親によるDVが主張されたが,我が国裁判所の審判は,そのような事実は無かったと認定。
  • LBPは,子を常居所地国に返還することを求めたい場合であっても,子との面会交流が実効的に確保されるのであれば,TP側と合意できるケースも多数ある。中央当局として面会交流が実現できる支援をしてほしい。また,政府全体として,我が国における面会交流が実効的なものとなるよう制度構築を進めて欲しい。
(イ)鈴木雅子弁護士
  • 日本は出国を止める制度がない一方で,親権を争う仕組み及び保全措置についても時間がかかるため,国外に連れ去られ,打つ手がなくなる問題が生じやすい。連れ去られた後にハーグ事案として返還・接触申請を行うことは,物理的,精神的,経済的な負担が大きいため,出国を差し止める制度が必要。
  • ハーグ条約を連れ去られ親が使うためには,監護権の侵害が認められることが必要であると理解しているが,日本民法では,(1)離婚後は共同親権制が取られず,(2)事実婚・認知の場合にも,母親のみが単独親権を有する制度となっているために,連れ去られ親が子を事実上監護している場合でも,法律上の監護権がないためにハーグ条約を使えないという事態が相当数生じることを懸念している。
  • 海外において日本がハーグ条約を未締結のため日本への帰国が認められないことから,最後の手段として連れ去ったケースや連れ去りが犯罪化されているために常居所地国に戻りLBP側と話し合えないケースもある。仮に我が国裁判所で返還拒否が確定すれば,ハーグ条約締結によってDVに苦しむ女性を助けやすくなるという側面もある。
  • 妥当な解決を図るため,ADRや調停制度の活用が必要。外国籍の調停委員が認められていない現状は改善の余地あり。調停を行う際に外国の生活・文化のバックグラウンドが必須であり,当事者の気持ちの面でも重要。また,日本の裁判が書面を含め全て日本語という制度が変わらないのであれば,より一層ADRや調停制度の活用が求められる。連れ去られ案件では,連れ去られ国での裁判のための支援も検討すべし。
(ウ)川島志保弁護士
  • DV加害者は,一見DVをするように見えないタイプであることが多いほか,DVは再犯性が高いため,状況が改善されることは少ない。他方,DVが原因で夫の元から離れた妻は,居所を夫に知られる恐怖から,ひたすら逃げ回らざるを得ないケースが多い。このような事態は,子の福祉の観点からも問題。
  • DV被害者の個人情報の取扱いにつき保護措置があるものの,行政のミスにより被害者の個人情報が漏洩するケースもある。ハーグ条約加盟にあたっては,個人情報の保秘のための公的機関による連携が重要。DVの被害者としては,DV加害者に居所が知られることが最も恐れる事態。情報を知るべき立場の者までは,確実に知る必要はあるが,そこから先への管理をしっかり行うことが重要であり,中央当局からDV加害者側に所在情報が渡らないことが極めて重要。
  • ハーグ案件の場合には,証拠が海外にあることや,言葉の問題等から,被害者の証拠の収集が難しいことがあるため,在外公館への相談を証拠として活用できるような措置が必要。
(エ)谷英樹弁護士
  • 子の連れ去りによって生じる問題は,(1)それまでの環境(両親,家族,知人友人等)から子が引き離される,(2)それまでは両親の双方の監護に服していたり,別居中でも一定の枠組みの下での交流が認められていた状態が,一方的にルールなき状態に追いやられる,(3)連れ去る側は,種々の理由で他方が子と面会する機会を拒もうとするのが通例で,子との面会交流の可能性は連れ去り側の意志に左右されがち,(4)現行のDV保護制度は,DV保護命令の有無で,子との面会の機会の有無が決まる建て付け,が挙げられる
  • 子の所在の特定に関しては,本国で監護の権利を有するLBPにも連れ去り先の子の監護に関する情報を知るべき立場にあるとの考え方に立てば,パブコメ案では,申請者(LBP)に居所についての情報を提供する際に,一律にTP側の同意を要件としている点に強い疑問がある。また,子の社会的背景に関する情報の交換にも,同意を要件としているが,仮にTPが虐待をしている場合,その情報が児童相談所等に蓄積されていても,その情報は提供されないこととなるのは問題。
  • 子に対する更なる害の防止に関しては,居所変更の届出を義務づける必要がある他,国外への出国を防止する制度を創設すべし。接触の権利に関しては,子の居所をLBPが知ることは交流の第一歩であり,社会的背景に関する情報についてもLBPに提供すべし。

(2)質疑応答にて出された意見・質問等

(ア)出国禁止命令
  • 子の更なる害の防止の観点から,裁判所が保全命令の一環として出国停止を命じ,出入国管理での出国制限をとれる制度の構築が必要。このような措置がないために,面会交流が実現できないケースもある。
(イ)接触の権利(面会交流)
  • DV被害者をきちんと保護し,更なるDV被害から確実に守ることによって心理的な安定が確保され,それがひいては子とLBPとの面会交流につながるケースもあり得る。
  • 調停員は,日本人に限るべきではなく,調停では日本語以外も使用できる制度にすべし。ADRのような制度を利用する必要がある。
(ウ)その他
  • 実務家として,国際離婚の事案において問題と感じる点は,(1)我が国が,共同親権制でないこと,(2)面会交流が法的な権利として認められていないこと,(3)家裁調停員には高齢者が多く,母親の下での養育が良いという伝統的な固定観念を持つ人が多いこと等が挙げられる。
  • 明らかにDVが証明できるのであれば,国内担保法において,具体的にDVや暴力を返還拒否事由に要件として規定しても良いが,現実には,DVを証明することが難しいケースも多い。子にとって悪影響があるかという視点から返還拒否事由を考えるべし。

3.配布資料

  1. (1)池田崇志弁護士提出資料(PDF)PDF
  2. (2)川島志保弁護士提出資料(1(PDF)PDF2(PDF)PDF3(PDF)PDF
  3. (3)谷 英樹弁護士提出資料(PDF)PDF

 

9年前

国会図書館:【アメリカ】国際的な子の奪取に関する下院公聴会

2011 年 7 月 28 日、下院外交委 員会アフリカ・グローバル保健・人権小委員会は、「国際的な子 の奪 取の民 事 上の側面に関 するハーグ条 約 実施の改善 」と題する公聴会を 開催し、カート・キ ャンベル米国務次官補 等国務省 関係者 2 名が、「子の奪取」の問題について、日本における現 況 及び国 務 省の対 応全 般 について証 言を 行った。両 名により事前 に提出された書面証言を中心に紹介する。

公聴会の開催及びスミス小委員長等の冒 頭発言

今回の公聴会について、クリストファー・スミス(Christopher Smith)外交委員会ア フリカ・グローバル保健・人権小委員長(ニュージャージー州、共和党)は、一連の公 聴会の第 1 回が 2011 年 5 月 24 日に行われ、日本、ロシア、エジプト、トルコ、コロ ンビア、ブラジルに関する事案で子を連れ去られた 6 名の親から証言を得た(注 1)こ と、また、同月 23 日に、国務省の体制強化等を内容とする「2011 年国際的な子の奪 取防止及び返還法案(International Child Abduction Prevention and Return Act of2011、H.R.1940)」を提出した(注 2)ことについて発言した。さらに、「国際的な子の 奪取の民 事上の 側面に 関する ハーグ 条約 (Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction、以下「ハーグ条約」)」加盟への日本の動きに満足の 意を表明しつつも、173 名のアメリカ人の子供に関する現在進行中の 123 の事案が条 約の対象とならないであろうこと及びキャンベル(Kurt Campbell)次官補が書面証言 の中で子供の返還ではなく親が子を訪問する権利及び面接についてのみ強調している ことに懸念を表明し、オバマ政権に日本との覚書ないし二国間協定締結の交渉を求め る旨発言した。ドナルド・ペイン(Donald Payne)同小委員会少数党筆頭委員(ニュー ジャージー州、民主党)は、連れ去られた米国の子供への面接が拒否されている問題が 最も多いのが日本であること、「ハーグ条約」加盟の関連では、日本の国会の動きが遅 いこと、日本では(離婚後の)共同親権が認められていないこと等に関して言及した。
これら議員に加え、ラス・カーナハン(Russ Carnahan)(ミズーリ州、民主党)同小 員会委員、バーニー・フランク(Barney Frank)(マサチューセッツ州、民主党)下院金 融サース委員会少数党筆頭委員が冒頭に発言した。

ジェイコブス大使の書面証言における日本への言及

スーザン・ジェイコブス(Susan S. Jacobs)大使・子供の問題に関する国務省特別顧 問は、まず、国務省としての子の奪取の問題への取組み全般について証言し、本件は ヒラリー・クリントン(Hillary Rodham Clinton)国務長官にとっても非常に重要な問題であり、同長官の子供の問題への深い関与は、昨年、自分(ジェイコブス大使)を子供の問題に関する特別顧問に任命したことでも示されたと述べた(注 3)。日本については、昨年 10 月に、日本を含むアジア・太平洋地域の大使との会合を開催し、「ハーグ 条約」の締結を促したこと、個人的にも、日本、韓国、インド、ヨルダン、エジプト の高官に締結を働きかけたことに言及し、国務省は、韓国やインドの「ハーグ条約」 の締結を促し、また、条約履行の法的及び行政的な仕組み作りとともに条約の締結で 日本と協力することについて議会の支援を歓迎する旨述べた。

キャンベル国務次官補の書面証言

キャンベル次官補は、書面証言の冒頭で、本証言では、日本における国際的な親に よる子の奪取(以下「子の奪取」)について取り上げる旨明らかにした(注 4)。日米関係・ 日米同盟の重要性を再確認し、東日本大震災後の米軍によるトモダチ作戦や米国の官 民挙げての救援・支援の動きが、日本の対米好感情がここ 10 年で最高の 85%に達した ことに貢献した旨言及した上で、子の奪取の問題が、米国務省及び米国政府にとり懸 念である旨述べ、次の概要のとおり、この問題への国務省の取組み、日本への働きか けについて詳細に証言を行った。

(書面証言概要)

日米関係は非常に良好であるが、日本における子の奪取という長年の問題は、国務 省及び米国政府にとっての懸念であり続けている。東京への頻繁な直行便により渡航 が容易になったことは、子の奪取の日本関係事案の数を増大させることとなり、日本 国民とともに米国民に直接の影響を及ぼしている。国務省は、2005 年には日本を含む 子の奪取についてわずか 11 件を報告していたが、今日、日本だけで 173 名の子供につ いて 123 の事案が現在進行中である。

この問題を取り上げるために、クリントン国務長官、ジャニス・ジェイコブス(JaniceJacobs)国務次官補、ジョン・ルース(John Roos)駐日大使、スーザン・ジェイコブス 大使そして自分(キャンベル次官補)は、他の国務省高官とともに、増加する日本にお ける子の奪取の問題を取り上げる法的な枠組みの創設を望み、日本に対し一貫して「ハ ーグ条約」の批准を要請してきた。クリントン国務長官は、日本政府の最高責任者達 に繰り返しこの問題を提起してきた。加えて、我々は皆、定期的に、日本に子供を違 法に連れ去られた米国民との対話集会の開催に取り組んできた。これらの対話集会は、 我々の政策形成過程に重要なアイディアを提供し、親が、疑問への回答を得る手助け をする米国政府の幅広い省庁間の関係者と会うことを可能にしている。日本のハーグ 条約批准に向けた進展に関係なく、自分は個人的にこうした集会の開催を約束してき ている。

ハーグ条約は、国境を越えて違法に連れ去られ、留め置かれている子供を有害な影 響から守ることを求めている。さらに、同条約は、子供が違法に連れ去られ、留め置 かれた時に、子供を常居所地の国へ直ちに返還するための手続を確立し、両親の子供 への面接権を確保するものである。条約上、子供の返還が子供を身体的あるいは精神的な害に晒し、あるいは耐え難い状況に置く等の重大な危険があると立証される場合には、国は子供の返還を命じる義務はない。このような子供の返還の特例は、狭義に適用することが意図されているが、常居所地に返還される場合に危険に晒されるであ ろう子供たちを守るための重要な措置である。

日本は、G7 の中で唯一「ハーグ条約」を締結していない。日本へあるいは日本から 子供を奪取され取り残された親は、現在、子供の返還にほとんど希望が持てず、子供 への面接の権利を獲得し、親の権利や責任を行使する際に多大な困難に直面している。

しかしながら、我々が日本に「ハーグ条約」締結を勧奨してきた努力が実を結んだ ように思われることに喜んでいる。すなわち 5 月 20 日、菅内閣は、公に日本政府の「ハ ーグ条約」批准の意図を公表し、直後、菅直人総理自身が、G8 ドーヴィル・サミット の際、オバマ大統領にこのメッセージを伝えた。

日本政府関係者は、批准後の条約実施のための日本の法律に、日本の裁判所が返還 申請を拒否することを認める留保条項を規定することを示唆している。報道によれば、 裁判所が返還申請を拒否する理由には、 (1) 連れ去った親が取り残された親によって 虐待されていた場合、又は連れ去った親が子供と戻るならば、さらに虐待される可能 性がある場合、(2) 連れ去った親が、相手国で刑事訴追に直面する場合、あるいは(3) 連れ去った親が、相手国で生計を維持できない場合とされる。これらの特例は、第一 義的に「ハーグ条約」の第 13 条(b)に基づくものである。日本の「ハーグ条約」反対 者が、特に同条約が日本人の母親を保護していない旨を指摘していることに答えてい るようにみえる。「ハーグ条約」と同条約が求める手続きは、子供や他方の親と同様に、

日本人の母親の正当な権利と要求を十分に保護しているというのが我々の見解である。 日本政府当局者は、我々に、日本は「ハーグ条約」を適切に実施し、子供の親権は当 該子供の常居所地の裁判所で決定されるべきであるという同条約の基本的な前提を回

避するようなことは求めないと我々に対し保証している。我々は、日本が「ハーグ条 約」の完全な遵守と同条約の確実な実現に必要な措置をとるよう見守る。

我々は、日本が「ハーグ条約」を批准した場合、同条約が、これらの心痛む事案に 取り組む効果的な手段となるような方途を探し続ける。「ハーグ条約」は批准後に発生 した事案にのみ適用されるが、我々はすべての段階で、日本政府が既存の子の奪取の 事案を解決し、現在子供を連れ去られた親が子供との接触を再確立し、訪問の権利を 確保することを可能にする措置の実施を勧奨している。我々は、両親と奪取された子 供のために、面接の円滑化に必要な政治的また法的手段のすべてを用いるために備え ている。

これらの継続中の努力の一環として、我々は「ハーグ条約」の専門家を派遣し、日 本政府関係当局者に説明しており、また、国務省の領事局に日本政府関係者を迎え、 我々の中央当局がどのように国際的な子の奪取の問題を扱っているかを見る機会を与 える計画をたてている。我々は常に、この問題について、日本の相手担当者と協議し、 同条約を成功裏に履行させ、既存の事案に具体的な結果を得るさらなる機会を見出そ うとしている。

我々は、日米関係が直面している最も重要な問題の一つと国務省が考える問題への皆さん及び議会のその他の方々による支持の継続を高く評価している。結局のところ、我々はすべて米国市民を支援するためにここにいるのであり、多くの仕事が残っては いるが、既に達成されたことも多い。過去 2 年間、我々は、日本における子の奪取の 問題に関する対話がほとんどなかった段階から、「ハーグ条約」の批准が日本において 公の議論となり、批准が課題となる段階までこぎつけた。また、日本政府から、同条 約の実施に必要な法律を提案することについて、公の約束を得ている。これらは相当 な成果であり、我々が誇るべき成果である。しかし、同時に、既存の事案を解決する という残された課題を認識している。この問題は、国務省の最優先課題の 1 つであり、 今後とも、満足すべき結果を得るために皆さん及び議会のその他の方々と協力し続け ることを期待している。

主な質疑応答

証言後、既存の法律に基づく取り残された親への 6 か月ごとの現況説明の実施状況、 国務省担当官 1 人当たりの事案数、置き去りにされた親から連邦議員への連絡状況、 子の奪取の問題に関する裁判官、軍の法律顧問や(在日米軍人を含む)米軍兵士の認識 の向上、日本関係の事案で家庭内暴力及びその可能性の主張に関する証拠の必要性及 び子供を連れ出した親の刑事訴追、この問題での日本との二国間合意の必要性・可能 性等が取り上げられた。

注(インターネット情報はすべて 2011 年 9 月 20 日現在である。)

(1) 5 月 24 日の公聴会については、本誌 2011 年 8 月 号【各国議会】日本関係情報参照。
(2) 本号の【各国議会】日本関係情報 参照。
(3) ジェイコブス国務省特別顧問の書面証言
(4) キャンベル国務次官補の書面証言

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