外務省:「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」第2回会合

人権・人道

「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」第2回会合

平成23年9月14日
外務省 子の親権問題担当室

13日,外務省において開催されたハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会第2回会合の概要は以下のとおり。

1.出席者

座長:
小早川光郎・成蹊大学法科大学院教授
出席者:
棚村政行・早稲田大学法科大学院教授
藤原靜雄・中央大学法科大学院教授
大谷美紀子弁護士(日弁連)
相原佳子弁護士(日弁連)
杉田明子弁護士(日弁連)
関係府省庁(法務省,内閣府,厚生労働省,総務省,文部科学省,警察庁)等

2.議事要旨(議事録は,別途掲載予定)

(1)総論,援助を求める申請

  • 中央当局に対する他の機関による協力の重要性は,締約国会議でも確認されているところであり,法律案においても種々の国内機関による中央当局への協力を明示すべし。
  • 援助の申請ができる者の範囲は,自らの監護権が侵害されたことを主張する者,団体,機関に限られるのか,それとも,監護権の侵害があったと主張する者一般にも援助の申請が認められるよう制度設計すべきか,条約の規定の解釈の再確認が必要である。
  • 援助の申請に必要な要件を明記すべし。

(2)子の所在特定,個人情報の保護,更なる害の防止等,任意の返還等

  • 子の所在特定のために他の行政機関等から提供を受けるとの点を法律上明記するとの方向性は妥当である。
  • 関係機関が中央当局に情報提供する際に,当該情報の中央当局への提供につき本人(子及び子を監護する者)の同意が必要との構成にすることは,条約の趣旨にも鑑み適当とは言えない。また,TPが子の所在を隠す手段となりかねない。
  • 中央当局による要請を受けた関係機関が保有する情報を中央当局に提供することにつき義務とすべきかについては,そうしないと中央当局が必要な情報を収集できないおそれがある一方で,個人情報の慎重な取扱いの要請という側面も考慮する必要がある。個人情報を中央当局に提供する側(地方公共団体等)からすれば,提供することについての根拠規定があることが重要である。行政機関同士の関係では相互に協力すべき関係にある。
  • 中央当局による子の所在情報の収集にあたっては,初めから全ての関係機関に情報提供を求めるのではなく,段階的に情報収集に当たることが適当である。
  • 中央当局が収集し,関係機関が提供すべき情報の種類や範囲を明確にする必要がある。
  • 中央当局が収集した子の所在情報は,原則として他国の中央当局や申請者に共有しないことは,DV保護等の観点から極めて重要である。さらに踏み込んで,中央当局から他国中央当局・申請者には全く共有しないとの制度設計もあり得る。
  • 子に対する更なる害の防止の観点から,現行法にはない再連れ去りの防止のために出国停止や旅券の一時保管といった強制力のある措置の創設を検討することが必要である。

(3)子の社会的背景に関する情報の交換,子の安全な返還の確保

  • 相手国中央当局がどういう目的で,社会的背景に関する情報の提供を要請するのか,例えば先方中央当局の裁量に基づくものなのか,相手国裁判所に当該情報の提供が求められているのか等の場合を分けた上で,対応ぶりを検討すべし。
  • 社会的背景に関する情報として最も必要とされる情報は,学校,健康状況,経済状況等であることが多いが,子の所在情報と同様,どの範囲・項目の情報を相手国中央当局に提供するのかを明らかにする必要がある。
  • 本人が知らない情報を我が国の行政機関が保有する場合もあるが,その場合への対応には,例えば中央当局への提供時に本人の了知・不知につき明記してもらう等の工夫が必要である。また第三者に関する情報が含まれる場合の取扱いに注意が必要である。
  • 相互主義的な観点から,嘱託事案についても相手国中央当局に内容の伴う必要十分な情報の提供を要請すべし。
  • LBPの代理人を務める立場からすると,相手国中央当局から社会的背景に関する情報の提供がなされないとなると,実質的に弁護活動に支障が出る。
  • 子の返還に際し,在外公館を通じた支援を行う等の検討はできないか。
  • 子の安全な返還の観点に関し,逮捕状の発布の有無等の捜査関連情報は,どの国でも途中段階で他の機関と共有しないのが通常であり留意が必要である。

(4)接触の権利

  • 関係省庁・裁判所等と協力しつつ面会交流を支援する機関及び人材の養成が重要で,受け皿の仕組みの構築の推進が必要である。
  • 接触の権利の享受又は行使の支援を受けられる者についての要件,特に不法な連れ去り又は留置の要否や子の国境を越えた移動がない場合への対応の可否といった条約の解釈につき再確認が必要である。

(5)不服申立て等

  • 中央当局が外国にいる者からの申請を応諾した場合に,その応諾自体についてのTPによる不服申立ての可能性についても検討が必要である。他方で,迅速な返還の実現という条約の基本理念との関係で,途中段階での不服申立てが有益かという点も考慮が必要である。

(6)その他

  • 子の監護権,連れ去り,DV,児童虐待等に関する外国の法令,判例及び統計等に関する情報の収集について支援すべし。
  • 国際結婚する人へのハーグ条約に関する周知・広報をなるべく早い段階で始めるべし。

3.配布資料

  1. (1)主要論点
  2. (2)参考資料
13年前