ハーグ条約:「日本も批准を」 仏上院、決議案採択へ 自国男性相次ぐ自殺

◇「妻が連れ去った子と会えぬ」

【パリ福原直樹】国際結婚が破綻した夫婦の一方が、子供を故国などに無断で連れ出すことを不当としたハーグ条約について、フランス上院の与野党は、日本の批准を求める決議案を1月にも採択する見通しとなった。日本は同条約に未加盟で、「条約が規定した親の子への面会権がない」などの国際批判が強い。仏では今年、日本人の元妻に子供を連れ去られた仏人男性2人が自殺しており、決議をテコに日本に条約批准を強く求める意向だ。

決議案は仏の野党第1党の社会党と、与党の国民運動連合がそれぞれ独自に提出。社会党案ではまず、子供の連れ去りは仏では重罪だが、日本では処罰されない▽仏法は子との面会権を認めているが、日本は認めていない--などと日仏の制度を比較。さらに、「日本では裁判所が仏人の親と子供の面会を認めても、日本人の親が拒否すれば強制力はない」「仏では子と週末一緒に過ごせるが、日本は月に数時間しか会えない例が多い」と言及。片方の親が子を「洗脳」し、離婚相手の悪印象を植え付けるケースも指摘した。

この上で決議案は、日本に離婚男女双方の平等な親権や、面会権の確立などを求めた。与党案も同様の内容で、議会では多数が賛同。双方とも1月中に採択される予定だ。

子供連れ去り問題は、日本と欧米などとの間で約200件が浮上し、外交問題にも発展している。約30件を抱える仏は09年、日本と問題を協議する政府間委員会を設けたが、仏政府によると、6、11月、子に会えない仏人男性2人が自殺し、社会問題になっていた。

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■ことば

◇ハーグ条約

国際結婚が破綻した夫婦間の子供の扱いについてルールを定めた「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」の通称。国際結婚夫婦の一方の配偶者が親権や面会権を確定しないまま、16歳未満の子供を無断で居住国から外国に連れ出す行為を不当と位置づけ、居住国への帰還を求めている。80年に制定、83年に発効。欧米を中心に世界で82カ国が加盟しているが、国内法との整合性などを理由に日本を含めたアジアや、アフリカ、中東には加盟していない国が多い。

毎日新聞 2010年12月15日 東京夕刊

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