「片親疎外は心理的虐待」参議院法務委員会真山勇一議員2021年3月31日質問

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第204回国会 法務委員会 第4号
令和三年三月三十日(火曜日)

○真山勇一君 ありがとうございます。
 今皆さんお聞きになったと思うんですけれども、とても大変な数じゃないかというふうに思います。いろんな状況がありますので、これが全てその大変な状況に置かれているかどうかということは別にして、推計ですけれども、二百十五万人の子供たちが一人親というような状態に置かれているということです。この中には、とても厳しい、例えば子供の貧困などと言われていることもありますし、一人親家庭で収入がやはりなかなか十分でないという、そういう家庭もあるんじゃないかというふうに思います。
 そういう意味で、この一人親の子供がどれくらいいるか、それから、どんな状態かということなんですけど、この二百十五万人の中の子供の状態というところまではお分かりになるでしょうか。
○政府参考人(岸本武史君) お答えいたします。
 先ほど申し上げました一人親調査におきまして、監護親の下での収入ですとか生活状況についても一定調査をしてございます。
○真山勇一君 是非、そういう調査、一人親の子供の問題を考えるということで、これだけの数がいるわけですから、大変重要な基礎資料になると思います。是非、今後はこういう資料を充実させていただきたいということをお願いしたいと思います。
 お配りしている資料の一枚目見ていただきたいんですが、新聞のコピーです。連れ去った者勝ちというような大きな見出しが付いています。配偶者に子を奪われた親、面会かなわない、そういうような内容の記事ですが、これは、ある日突然子供を連れていかれて引き離されてしまった二人の女性の話、紹介しております。二人は、子供の連れ去りを防ぐための立法を怠ったとして国を相手に裁判を起こしたときのこの記事、これ去年のものなんです。
 これまで母親が子供を連れて家を出るケースというのは多かったんですけれども、この記事でお分かりのように、最近は父親の方が子供を連れていってしまい、妻が取り残されてしまうということが増えているんですけれども、上川大臣は、こうした現状の認識、持っておられるでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 離婚やまた別居後に子供と会うことができないことでつらいお気持ちを抱かれる親御さんがいることや、また、一方の親に会えないことで大変悲しい思いをしている子供もいるということについては認識をしております。
 今委員から御質問でございますが、父親のみならず子供に会えない母親の声があるということにつきまして承知をしておりますけれども、どのようなボリューム感でそうなのか、あるいは増えているかというような状況までのところの具体的な事実については承知をしておりません。
○真山勇一君 やはり今後、当然、統計では、離婚も増えているという統計がこれは数字として出ておりますし、そういう意味で、どちらの親が引き離されてしまって一人になっているのかということも分かると思いますので、是非、やはりこの別居とか離婚の問題考える上でのこうした統計もこれから充実させていただきたいというふうに思うんですけれども。
 子供がその一方の親から引き離される問題というのを扱っている市民団体の調査によりますと、十年ほど前は母親というのが取り残されてしまうというのは一割程度だったんですけれども、最新、最近の数字ではやっぱり増えていることが証明されておりまして、今現在、新しい数字だと三割ぐらいになっているということが言われております。やはり、母親が取り残されてしまうということがやっぱり増えているという現状があるんじゃないかと思います。
 私がちょっと心配しているのは、結局、母親の方が取り残されてしまうということは、やはり今の状況でいうと父親の方が経済力があるので、例えば養育費なんかは要らないってその父親の方から言われちゃうようなケースが非常に多くて、それによって余計子供との距離が開いてしまうということも心配されているということが指摘されております。
 この新聞記事読みますと、審判、調停に当たっている家庭裁判所、私はちょっと信じられないような対応がこの新聞記事に書かれているんですね。弱い者に追い打ちを掛けるような、言葉の暴力とも受け取れるんじゃないかというようなその裁判所の言葉が載っているんです。
 この記事の中に、ユカリさんという、これ仮名なんですけど、出てくる一人の方のお話をまずしたいというふうに思うんですね。この女性が裁判や記者会見のために作ったメモというのをいただいております。これ、本人の了承を得て、こちら今の二枚目です、御覧ください、見ていただきたいというふうに思うんです。
 この女性、実は三人のお子さんがいらっしゃいます。まだ十歳前後の三人のお子さんがいらっしゃるんですが、引き離されてから三年間会えていないということなんです。この女性の夫は、不貞行為、いわゆる不倫ですね、これを続けていて、子供たちも巻き込んでしまったために子供と一緒に家を出ようとしたんですが、逆に夫の実家に泊められてしまって子供たちが戻らなくなってしまったという。
 一番上の下線の部分を見ていただきたいんですけど、あっ、一番上じゃない、二番目ですね、不貞を繰り返し、子供たちを巻き込む夫を信頼することは無理だと思って子供たちと家を出る決意をしたけれども、逆に実家の方に泊めてしまったということなんですが、真ん中辺に、見てください、子供たちともう会えなくなってから一か月たつと、子供たちはママ大嫌いと言うようになったというようなことを書いてあります。それから、その真ん中辺のところですけれども、裁判所では、夫の不貞や子供を義理の母に預け不貞相手と同棲していると証拠を出しても、現在問題なく生活しているということで子供たちを返してもらえないということだったんですけれども。
 伺いたいのは、問題なく生活しているというんですけれども、自分はその不倫相手と同棲していて、子供は実家に預けている、一緒に住んでいないんですね。そういうことというのは問題ないんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 個別の事案の判断等につきまして、最高裁としてお答えをすることはできない、できかねるところでございますが、その上で、一般論として申し上げますと、家庭裁判所は、監護者の指定や変更の判断に際しまして、子の利益を最も優先する観点から、父母の側の事情や子の側の事情を総合的に考慮して判断しているものと承知しております。
 委員御指摘の監護の状況や監護の姿勢、それが子に与える影響等につきましても、子の利益を最も優先する観点から適切に考慮して判断しているものと承知しております。
○真山勇一君 一般的に適切に判断しているということで重ねてお伺いしたいんですけれども、その後に書いてあるように、不貞は子供の福祉には影響がない、不貞というものは子供の福祉に影響がないというのが一般的な考え方というふうに受け止めてよろしいですか。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 繰り返しになる部分がありまして恐縮でございますけれども、家庭裁判所としましては、その父母の側の事情や子の側の事情を総合的に判断という際に、その監護の状況や監護の姿勢、それが子に与える影響等についても適切に考慮しているというふうに承知しているところでございます。
○真山勇一君 今の説明は分かるんですけれども、一般的に言っても、例えば、子供を連れていって一緒に生活しているというなら分かるけれども、子供は実家に置いておいて自分はその不倫の相手と同棲しているということなんですよね。それが裁判所は、不貞は子供の福祉に、不貞はと言っているんですよね、限定して言っているんですよね、福祉には影響ないと言っているんです。しかも、そういうことで当然監護者として指定されているわけですけれども。
 一般的に、いろんな状況を考えるのでしょうけれども、その中で、特に不貞は子供の福祉には影響ないという、こういう断定しているわけですけれども、これはだから一般論ということで受け止めてよろしいんですか。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 繰り返しになるところがございますが、子の利益を最優先に考慮するというところでございまして、様々な事情が子にどういう影響を与えるかという観点から、様々な事情を考慮して判断しているというところかと存じます。
○真山勇一君 そうすると、もちろん子供のその利益を最優先にしているのは分かるんですけれども、普通の状態でないですよね、連れていっている父親の状態がね。それが子供の利益に別に影響がないというふうにしか、この言い方ですとやっぱり受け取れないと思うんですね。
 それどころか、このケースは面会交流も認めてもらえなくて、月に一度子供の写真を送る、いわゆる間接交流というんでしょうかね、この間接交流しか認められていないということなんです。
 資料の三枚目の写真を見ていただきたいと思います。個人情報がありますので、こちらの写真はちょっと処理をしてありますけれども、これ写真見ていただくと、どうですか。やはりちょっと驚くようなことがこの子供の、上の写真ですけど、持っているメモに書かれているんですね。
 上の写真、右側と左側の女の子と男の子が持っている。女の子が持っている方は読めると思うんですが、ばばあ、しね、くそ。それから、左側の男の子が持っている紙には、やっぱり、くそ、あほ、それから一部隠れていますが、これはバーカという何か伸ばした言葉で書いてある。しかも、この男の子は中指を上げるポーズをしているという、こういう写真。
 そして、下を見ていただくと分かるように、母親から送られた手紙をはさみでこれ切り刻んでいるということなんですね。
 これ誰が撮った写真だと思われますか。この写真を裁判官とか調停委員は当然御覧になっていると思うんですけど、この写真を見てどういうふうな判断を下されるんでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) 個別の事案の資料等につきまして最高裁としてお答えすることはできかねるところではございますが、一般に、資料として提出されたものにつきましては、その撮影された状況、撮影した者を含めて、よく聞き取りをした上で考慮しているものというふうには承知しております。
○真山勇一君 当然ですよね。やっぱり考慮してそれはやっていると思いますよね、一般的に言えばね。
 でも、現実的にこうやって、これ誰が撮ったかといったら、そんな第三者が撮る、まああるかもしれませんけど、でも、やっぱり父親かなとか、逆に言えば、そういうことは裁判所って多分調べているんでしょうから、誰が撮ったのとかね、そんなの当然ですよね、調べるのはね。
 そういうことから判断していくにしても、母親に対してこういうことを書いた写真を送る、まず子供が書くかどうか、子供が書くかどうか、一般論で結構です。こういう写真があります、これ事実です。だから、こういうことを子供が、本当に子供の意思でまず書くんだろうかということが私、考え方を一つ。それからもう一つは、そういう手紙をこれ出すのは多分監護者ですよね。子供が出すことはほとんど考えられないと思いますけれども、そういうことも当然調査した上で、これは、踏まえて、その子供の、例えばどちらが監護するかということは一般論として決めるわけですね。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 お尋ねの点につきましては、具体的な個別の事案についての審理、判断というところにわたることかと存じますので、お答えしかねるところでございます。
○真山勇一君 余り難しいことは聞いていないと思うんですよね。
 裁判員、家裁の裁判員とか調停委員の方が、こういうケースってあるわけですよね。もう一般的にあるわけですね。その場合にどういう対応をするのかということを私は聞いているんです。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 一般的には、先ほど申し上げさせていただきましたとおり、提出された資料、それからお話しになること、総合的に考慮をして、子の利益の観点から判断をしているというところでございます。
○真山勇一君 裁判官の方とか調停委員の方がどういうふうに考えているか分かりませんけれども、一般論から言えば、こういう別居とか離婚に当たっては双方から話を聞くということが原則でしょうから、こういうことがあるわけですから、どういうふうに聞いているのかなというのは非常に問題だと思うんですが。
 この方は、こういうことをどうしてもやっぱり家裁の方でしっかりと聞いてくれないということで、学校に相談へ行く、市役所の相談センターも行った、でも、やっぱり相談乗ってくれない。つまり、これは私の方でやる問題じゃないということらしいんですけれども。で、挙げ句の果ては児童相談所まで、具体的でないので、身体的でないので虐待ではないというふうなことを言われたんですけれども。
 これ、こういうことって、もし子供に、子供が自主的にやるとは思えない、子供がこういう言葉を書くということは、一般的に言って児童に対する虐待ということにならないんでしょうか。
○政府参考人(岸本武史君) お答えいたします。
 児童虐待防止法におきまして、児童虐待として、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待の四類型が規定をされております。
 こういった片親疎外的な行為によりまして、これは個別の判断でございますが、子供に身体的又は心理的外傷が生じる場合など、子供の最善の利益の観点から見て問題がある場合には上記の虐待に該当することも考えられると思います。
 例えば、子供に別居親を罵倒させるなどにより子供がトラウマを受けたというような場合には心理的虐待に当たることも考えられるというふうに思いますが、いずれにしましても最終的には個別判断によるものでございます。
○真山勇一君 やっぱり客観的に見たら、子供がこういう、例えば、例えばの例で出てくる話じゃないかと思うんですよ。例えばこういうことがあったら子供に対する虐待ですよ、片親疎外ですよという話になるんじゃないかと思うんですが、こういうことが行われていて、しかも、とんでもない決定が出されているんですね。
 この写真の件を母親の方はもう困って、どうにかならないのかということを裁判所に訴えたら、こういう結論を出した。夫の撮る写真は子供の福祉に反するという理由で、いいんですよ、これ、やっぱり正常な判断です。子供の福祉に反する、そういう理由で、じゃ、その決めたこと、写真を送るのを二か月に一度に減らすというんです。
 これ解決策ですか。全然おかしいじゃないですか。これ、こういう解決策について納得いきますか。
○最高裁判所長官代理者(手嶋あさみ君) お答え申し上げます。
 個別の事案における判断について最高裁としてお答えすることはできないところでございますが、一般論として申し上げますと、面会交流の内容や回数を含めまして、その在り方を定める際にも、民法の趣旨を踏まえまして、子の利益を最も優先して考慮する必要があるところでございます。具体的には、子の意思や心情、親子の関係に関する事情等、様々な考慮要素を総合考慮して、子の利益を最も優先した面会交流の在り方を検討しているものと承知しております。
 御指摘の、一方の親の他方の親に対する行動や態度、同居親の面会交流に対する姿勢やその言動等が子の心身の状況に与える影響といった事情は、一般に、面会交流の在り方を定めるに当たり、子の利益を最も優先する観点から適切に考慮しているものと承知しております。
○委員長(山本香苗君) お時間過ぎております。おまとめください。
○真山勇一君 はい。
 時間になりましたので、これ、すごく、ここはすごく大事な点というか、常識じゃ考えられない。つまり、やっぱり裁判官とか調査員というのは、具体的な事例に基づいていろんなことを対応していくと思うんですよね。まさにこういう対応。だって、写真、普通だったら、そういう写真撮るのはやめてくださいというのが普通でしょう。それが、写真撮ってもいいけど、二か月に一度にしましょうって、これ、とんでもない。解決策じゃないですよ。
 時間になりました。済みません。これ大事なところなので、また改めて伺いたいと思います。
 ありがとうございました。

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