1 家族法研究会 第1回会議議事要旨

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1 家族法研究会
第1回会議議事要旨
日時 令和元年11月15日(金)
午後5時~午後8時
【座長挨拶】
近年の家族法分野の改正は,比較的広い範囲での検討が行われた相続法を別
にすると,親権法にしても特別養子法にしても,問題の幾つかを先送りにする
ものであった。私自身も,現代における家族の変貌に対応するために改正作業
を継続していく必要があることを述べてきた。
今回の研究会は,このように積み残しになっている立法課題を洗い出そうと
いうものである。
どこまで論点整理ができるか,また,それが立法の実現に結び付くかは,現
段階ではまだ不確定であるが,進行中の家族法改正を順次進めていく上で,そ
の基礎としての役割を果たすことが,この研究会に期待されているのではない
かと考えている。
【議事―研究会で取り上げるべき検討事項】
(「親権の概念の整理等」・「父母の離婚後の子の養育の在り方」関係)
(総論)
○ 離婚後共同親権を認める余地を作ることには賛成である。世界的な流れは
さておき,離婚後も父母が責任を持って子に接するという考え方を示す理念
的な部分が大きいと思う。
○ 国際的には「離婚後共同親権制度」が標準であるといっても,そこでいう
「親権」の内容は,各国で共通しているわけではないため,その点について
詰めておく必要がある。
○ 離婚後共同親権制度は面会交流との関係で取り上げられることが多いが,
共同親権の問題と面会交流の問題は別であることを認識した上で議論を進め
る必要がある。
○ 「親権の概念の整理等」は重要な問題であるが,そこで一定の見解を共有
することができない限り,次の段階に進めないというのは避けた方がよい。
○ 心理学等の行動科学の知見を参照することは重要である。
もっとも,研究動向には時代による変化があるし,また,同じ時代にも異
なる意見の人がいることを踏まえ,一つの結果だけにとらわれない議論をし
ていくことが必要である。
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(検討すべき論点)
○ 離婚後共同親権制度を導入する場合には,父母が共同で決定しなければな
らないこと,一方が単独で決定することができることの対象をはっきりさせ
る必要があり,その点の明文化を含めて検討する必要がある。
その検討のためには,親権者が子のためにすべきことを列挙した上で,重
要度や,監護者でなければ決めることができないか否かといった観点から分
類してみることが有益だと思う。
○ 離婚後の養育費の合意及び支払をどのように確保していくのかという点を
検討する必要がある。
○ 共同親権の場合において,父母の意見が一致しないときの取扱いについて
検討すべきである。父母が同居している段階や,別居後離婚前の段階で意見
が一致しない場合に,現行法ではどのような規律があるのかを検討すること
も必要だと考えられる。
○ 子の連れ去りや,別居後に相手に連絡なく転居するといった問題との関係
で,居所指定権について検討すべきである。
○ 協議離婚の要件の見直しの点や,面会交流の促進の点は,立法することが
できれば大変に良いことだと思う。
特に,協議離婚の要件の見直しについて,当事者の協議に任せると面会交
流や養育費の確保がうまくいかないことは,データで裏付けられており,ま
た,研究者からも再三指摘されている。
もっとも,この点について,面会交流の促進のためということを強調しす
ぎると,DV事案であっても,一方が面会交流を拒む限りは協議離婚が成立
しないということになりかねないので,慎重に検討すべきである。
○ 親権という名称について,子どもに対する責任が明確になるような語に改
めるべきであると考える。
○ 離婚後の親子関係については個別性が強いので,離婚後共同親権制度につ
いて検討する場合には,厚い支援が必要な親子については確実に支援につな
がるような仕組みを考えるべきである。
○ 財産管理権との関係も重要になる。例えば,子にスマホを持たせることに
ついて,親権者と監護権者との意見が分れた場合等について検討する必要が
ある。
○ 子の年齢に応じて親権の在り方が異ならないか,一定の年齢に達したとき
に特別な配慮が必要になるのではないかという点について検討する必要があ
る。
○ 親子関係における「子の利益」という判断基準は,ややブラックボックス
化しているため,海外の立法例も参考にしつつ,具体的な考慮要素を考えて
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いく作業も必要ではないか。
○ 親権については,権利か義務かだけではなく,包括的な塊として捉えるか,
様々な権利のまとまりとしてとらえるかという部分でも対立があると思う。
(未成年者を養子とする場合を中心とした養子制度の在り方関係)
○ 父母の離婚後の子の養育の在り方の問題と組み合わせることを意識しすぎ
ることなく,ある程度,別個の問題として議論した方が良いと思う。
○ 代諾養子縁組についてと,未成年者を養子とする場合における家庭裁判所
の許可の基準について,検討する必要がある。
○ 特別養子制度の見直しがされたことを踏まえ,改正後の特別養子制度と普
通養子制度との関係については議論が必要である。
○ 被虐待児等について普通養子縁組がされた事例において,実親が養親子関
係に介入してくる場合について検討する必要がある。
○ 連れ子養子の問題を検討することは,離婚した夫婦において,父母と子と
の関係をどのように捉えるかという問題に通じると思う。
(財産分与制度の在り方関係)
○ 財産分与に関する特有財産の判断基準をある程度整理することができれば
よいと思う。
○ 財産分与の2分の1ルールを明確化するかどうかについては,財産分与の
扶養的性質の観点も踏まえて検討すべきである。
以 上

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