「共同親権持てないのは違憲」親権裁判で新たな動き、憲法訴訟手がける作花弁護士が支援

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8/24(金) 10:16配信

弁護士ドットコム

政府が共同親権の導入を検討していると報じられている。日本では、子どものいる夫婦が離婚した場合、夫か妻、どちらかが親権を持つ「単独親権」となることが、民法819条によって定められている。しかし、この親権をめぐって、離婚訴訟では「子どもの奪い合い」の修羅場に発展するケースも少なくない。離婚後に親権を持てなければ、子育てに関わる機会が多く失われるとの恐れからだ。

多くの親権をめぐる裁判がある中で、最近、注目すべき動きが出てきた。ある裁判で、単独親権が憲法違反だとして、離婚訴訟中の夫が共同親権を主張しているのだ。助言しているのは、2015年12月に最高裁で女性の再婚禁止期間の違憲判決を勝ち取った岡山市の作花知志弁護士。今年1月にはソフトウェア企業「サイボウズ」の社長、青野慶久氏らを原告に、東京地裁で夫婦別姓を求める訴訟を起こすなど、憲法に問う訴訟の数々を手がけていることで知られる。

作花弁護士は裁判を通じて、親権のあり方についても、新たな問題提起をしようとしている。 (弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

●「離婚はあくまで夫婦間の問題なのに、いきなり子どもの親権も失う」

この裁判では、妻と離婚訴訟中の男性が、子ども2人の親権を主張して提訴するも、一審の東京家裁で敗訴。現在、東京高裁に控訴している。

男性が東京高裁に提出した控訴理由書では、「裁判離婚において、親の一方のみを親権者とし、もう一方の親の子に対する親権を失わせる民法819条2項は、法の下の平等を定めた憲法14条1項や憲法24条2項に違反し、無効である」と訴える。「親の子に対する親権は人権である」とした上で、「そもそも、裁判離婚で当事者の一方の親権を失わせる必要性は存在しない」としている。

かつて、明治憲法下では戸主である夫が親権者だったが、現行の家族法に改正された際に、男女平等の観点から「夫または妻が親権者となる」ことが定められた。しかし、親権を持てなかった側は、「離婚はあくまで夫婦間の問題であるのに、いきなり子どもについての親としての権利を全面的に失うことになる」と指摘した。

作花弁護士によると、参考になるのが、自身が手がけた女性の再婚禁止期間違憲判決だという。2015年に最高裁で下された判決では、再婚禁止期間を「子の福祉や保護のためのものであり、家族の迷惑を考慮して長くすることは許されない」とした。親権についても同様で、現在の単独親権は、離婚後の親の都合(離婚した元配偶者と関わることの不都合)を予防するための制度であるとして、親権を持たない親に会えなくなるなど、子どもに生じる不都合を考慮していないと主張している。

作花弁護士は、「東京都目黒区でも継父によって5歳児が虐待死する事件がありましたが、シングル家庭や継父、継母による児童虐待防止という面からも、共同親権は有効だと思います」と話す。実際に目黒区の事件を防げたかどうかはわからないが、少なくとも共同親権となることで、親による子どもへの関与が強化されることが想定され、子どもの孤立を防げるかもしれないという指摘がされている。

また、離婚裁判が親権争いによって長期化する傾向があり、共同親権が導入されれば、両親の離婚による子どもへの影響も減り、「子の福祉や保護にも資する」という。

「日本民法の母法たるドイツでも、かつて日本と同じように裁判離婚後は単独親権制度が採用されていましたが、1982年にこれを違憲とする判決が連邦憲法裁判所で出され、その後、1998年には共同親権が法制度化されました。また、欧米やアジアでも共同親権が導入され、先進国では日本だけが単独親権です」

●単独親権争い、「相手がいかに親として不適格か」不毛なバトルに展開

現在、離婚した夫婦のうち、単独親権を持つのは妻側が8割といわれている。共同親権導入に根強い反対があるのは、夫からのDVや児童虐待などがあるケースについての懸念が少なくないからだ。こうした意見に対し、作花弁護士はこう説明する。

「確かに共同親権による弊害は生じることがありますが、親権を持つ親がトラブルを起こした場合、現在では民法によって親権を一時的に停止する制度がありますし、再発する場合は、親権を喪失することになります。共同親権をケアする制度はあります」

また、親権の中には、大きく分けて、「財産管理権」(民法824条)と「子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と定めた「身上監護権」(民法820条)がある。これらを元夫と元妻で分けて持ちたいというケースもあるが、「現在の裁判所は、基本的に別々に持つことを認めておらず、現実的には監護権が機能していない」と作花弁護士は指摘する。

「実際に共同親権が導入されれば、両者の合意の上で、どちらの家に住むかを決定し、子どもと居住する方を監護者とする。監護者に問題が生じた場合は、一方の親権者がすぐに居住変更などの対応を取れるようにするなど、外国での事例を参考にしながら、運用していくことになると思います」

訴えを起こした男性も親権争いを「不毛なバトル」という。「これまで、妻と裁判で争ってきましたが、共同親権だったらここまでする必要はなかったはずです。単独親権の場合、裁判は相手がいかに親として不適格かの言い争いになり、子供は負けた親とは全く、あるいはわずかしか会えなくなるので、裁判の争いは激しくならざるを得ません。親権は子どもをもののように奪い合う権利ではなく、子どもが幸せになるように親が分かち合う共同責任にしなければならないと思います」

この訴訟は、9月27日に判決が出る予定だ。もしも、上告審に至るようなことがあれば、単独親権の違憲性をめぐって初の最高裁判断が下される可能性もある。

弁護士ドットコムニュース編集部

6年前