毎日新聞
国境を越えた子の連れ去りを防止する「ハーグ条約」に基づく裁判所の返還命令に従わないのは違法として、米国在住の父親が帰国した母親に息子(13)の引き渡しを求めた人身保護請求の裁判で、父親の訴えを認めた差し戻し後の名古屋高裁判決(17日)について母親側は20日、上告しないと明らかにした。
息子は判決言い渡し後、母親と立ち去っている。判決は確定するものの、母親の弁護士は「これ以上、裁判所による(強制的な)執行はない」としており、息子を巡る父母の対立は続きそうだ。
争ったのは、米国で暮らしていた日本人夫婦。判決は息子が「日本に残りたい」と話しているとしつつ「母親に依存して生活せざるを得ない状況で、母親の不当な心理的影響もあった」と判断した。
母親の弁護士は上告期限の20日、取材に「判決は息子の意見を考慮せず、最高裁の判決をなぞっただけ」と批判した。ただ、最高裁が返還拒否は違法として、父親側敗訴の1審判決を破棄し審理を差し戻したことを踏まえ「上告に意味はない」と説明した。
一方、父親の弁護士によると、17日の判決後、息子は今後の手続きなどを話し合おうと名古屋高裁の外に出て父親の弁護士らと一緒にいたが、突然逃げ出して高裁に隣接する病院のトイレにこもり、その後、母親とタクシーで立ち去った。
母親の弁護士は「判決言い渡し後、判決に従って息子を父親側に引き渡した。現状に対してこれ以上、裁判所による(強制的な)執行はない」と話している。【野村阿悠子】
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