39歳「離婚」の親権争いに敗れた男が見た真実

単純計算すると3組に1組の夫婦が離婚している日本。そこにいたるまでの理由は多種多様だ。そもそも1組の男女が、どこでどうすれ違い、離婚という選択肢を選んだのか。それを選択した一人ひとりの人生をピックアップする本連載の第2回。現代社会が抱える家族観や結婚観の揺らぎを追う。

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■「お父さんに挨拶してほしい」がすべての始まり

「離婚してから、8年間、子どもに会わせてもらえなかったんです。本当に会えたのはつい最近なんですよ」

 大地さんは、関東地方の某ファミレスで、おもむろにそう切り出した。

鈴木大地さん(39歳、仮名)は、8年前に2歳下の妻と離婚。短髪の黒髪でがっちり体形だが、元保育士という職業柄なのか、つねに穏やかでおっとりした話し方で、優しいオーラを醸し出している男性だ。誰からも好かれそうな好感が持てる雰囲気がある。

なぜ、大地さんが、妻である里美さん(当時24歳、仮名)と離婚することになったのか、その壮絶な軌跡を追った。

 小さい頃から、子どもが大好きだった大地さんは、大学を卒業後、公営施設の保育士という職に就いた。当時、男性保育士は、まだまだ珍しいという時代。働き始めて、2年後に友人の紹介で出会ったのが、同業者の里美さんだった。

里美さんは、かわいかったが、とにかく押しが強い女性だった。勢いに押されて付き合い、1年が経ったころ、里美さんから「お父さんに挨拶してほしい」と切り出された。いつの間にか、あれよあれという間に、結婚まで話が進んでいた。

 「結婚まで何回か、ちょっと急ぎすぎじゃないかと感じたんですけど、指輪がどうとか、式がどうとか、その流れを自分で止められないんですよ。妻は別れるか、結婚するかと、2択を突きつけてくれるんですよね。自分から主体的に結婚したいというよりは、向こうに乗っかっちゃったという感じですね。『勢いで結婚』ってこういうことなのかと思ってました」

大々的に結婚式を行った後、あまり間を置かずに、第1子の息子が生まれた。その1年間は、いちばん幸せな時間だったと大地さんは振り返る。当時は、イクメンという言葉が世の中に出始めた走りでもあった。保育士という職業は、ある意味、子育てのプロである。大地さんは、平日でも帰宅すると息子を寝かしつけ、休日も家事に育児にと奔走した。

6年前