児童相談所の収容と引き離しの実態を知らない主張です。ひとり親が孤立するのは戸籍と単独親権のせい。だったら、早々に法改正するのが本来。根本解決から逃げてどうする。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180613-00010011-abema-soci&p=2
児童虐待によって亡くなった船戸結愛ちゃん(当時5歳)がノートに書き記していた言葉が、日本社会に大きな衝撃を与えている。相次ぐ児童虐待事件に、ジャーナリストの堀潤氏は「189番」の啓発を訴える。
堀氏:26年で連続で児童虐待の認知件数は増加しています。これはある意味、児童虐待というものが当たり前にあることなんだという意識が高まり、通報されるケースも増え、結果として次々に明るみに出ているからとも言えます。だからメディアは、もう一つ先の話をしないと行けないと思います。
それは、虐待かなと思ったら、いち早く「189番」(児童相談所の全国共通ダイアル)に電話する、ということです。 でも、どこに通報すれば良いのか。未だに「189番」の存在自体があまり知られていないし、知っていても通報をためらってしまう現状がありますから。
でも、児童福祉法第25条には、「要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない」とあります。つまり、児童虐待を知ったら通報するというのは、“国民の義務“なんですね。
僕の知人が、このような経験をしました。自分の子どもと同じ小学校に通っている子がいる家から、泣き叫ぶ声が聞こえてくる。近所の人にそれとなく事情を聞いたら、やはり虐待されているらしい。でも189番に通報しようと思ったとき、誰が通報したかがバレてしまったら、逆恨みされて自分の子が危害を加えられるのではないかという考えが頭をよぎり、身体がすくんでしまった。最終的に知人が通報に踏み切れたのは、匿名でも通報ができるということがわかったからです。児童相談所は秘密を守ってくれます。
日本の制度上、行政が子どもと親を引き離そうにも、今は「親権」が強くて引き離せないし、引き離してもすぐ親元に戻さなければいけない。児童相談所が親に気を使いながら対応せざるを得ない中で、その見守りの合間に子供が死んでしまうことだってあります。もうすこし柔軟に対応して、共同親権も認められるよう規定を変えたほうが良いけれど、法律を変えるまでには時間がかかるし、その間も虐待はどこかで起きている。しかも犠牲者が出なければ報道はされない。
そして189番には、子どもの虐待の通報だけではなく、自分で“ちょっと虐待気味かもしれない“と思ってる親御さんが悩み相談をしても良いんです。当然、近所の人が「あそこのお父さん、お母さんが悩んでるっぽいんだけど…」と連絡してもいいわけです。虐待されている子どもを守ると同時に、親の問題をサポートしてあげることも解決には欠かせません。
だからこそ、メディアは「ひどい」「許せません」と報じるだけでなく、「通報するのは怖いですよね、虐待じゃなかったらどうしようと思いますよね、でも大丈夫ですよ」と、もう一つ先の話をした方がいいと思います。同時に、虐待している親側のケアも訴える必要があります。「お父さん、お母さん、その心境わかるよ、子育てしんどいよね、自分でも虐待は良くないってわかってるもんね。だから189番に相談してみようよ」と。そういう声掛けが今こそ必要ではないでしょうか。怪我をしたら119番、泥棒を見つけたら110番みたいに、虐待は189番。それがメディアで見かけるようになればいいと思います。
相談件数が増えれば、児童相談所の人員が不足しているということで、世論を背景に予算、人員配置について要望していくこともできるはずです。
堀氏:児童虐待は、貧困の問題とも絡んでいると思います。貧困対策も、将来の児童虐待を未然に防ぐ上では欠かせません。
僕は大学の授業で学生たちに毎年“子どもの貧困“をテーマに動画でリポートを作ってもらっているんですが、最初に「貧困の子どもが置かれている状況や虐待について知っていますか?」と聞いても、みんなポカンとしている。
でも実態を話し始めると「それ、私のことなんですけど」とか「それ、貧困っていうんですか」という感想が出てくるんです。
例えばこういうケースがありました。「定期券内の駅にみんなで遊びに行こうとしたら、一人だけ“定期を持っていないから自転車で行くね“と言った」と。「私は自転車が好きだとばかり思っていましたが、ひょっとして…と思い、“やっぱり定期って高いよね“って聞いたら、“そうなんだよね。だからいつも行けるところまでは自転車で行って、しょうがない分は電車で行くようにしてるんだ“と答えたんです。あれも、子どもの貧困だったんだんですね」と。あるいは「奨学金を返さないといけないのでアルバイトをたくさんしていて、実家に帰っていると時間が足りないので、週の何回かは友達の家に泊めてもらっています」という学生の話も聞きました。
もとを正せば、子どもの貧困は、親の貧困でもあるわけです。親の社会環境をどうすれば改善できるのかも考えていかないといけません。とりわけシングルマザーはとてもしんどい状況にあります。親権のお話をしましたが、日本では離婚した場合、8割は女性側が親権を持つことになります。しかし、母子世帯の平均年収は、正規雇用で270万円、非正規雇用で125万円と、父子世帯(正規雇用=360万円)と比べて非常に低い。しかもOECD諸国の中で日本が特徴なのは1年を通して働いていたとしても貧しい“ワーキングプア“が多いという傾向があることです。そんなこともあって、ひとり親世帯の貧困率は50%に達しています。
今回の事件では、5歳の女の子があのような文章を書いていたことから、“しっかりした子だ“と話題になっていますが、それは子どもの貧困の特徴でもあります。つまり、お母さんが働きに出ている間、“私も頑張るから、あれやっといてね“と、カバーしきれない家事を頼む。すると子どもは健気に頑張って疲れて寝てしまう。そして宿題ができなくて、学校で叱られて。そういう状況は外部から観るとわかりにくいので、“明るく元気で、責任感のある、しっかりしたいい子だった“という証言が出てきがちですが、それはそうでないと家が回らないからだとも言えるんです。
加えて、離婚して引っ越しした直後に気をつけないといけないとも言われています。つまり、それまで支えてくれた知人や地域との縁が切れ、慣れない土地で相談できる相手を失って孤立していく。虐待の要因の上位には、“孤立“、“育児疲れ“が入っています。ですから行政側も、離婚後の親子の生活環境を追跡して、手厚い支援を行うことも重要でしょう。(7日、談)
■プロフィール
1977年生まれ。ジャーナリスト・キャスター。NPO法人「8bitNews」代表。立教大学卒業後の2001年、アナウンサーとしてNHK入局。岡山放送局、東京アナウンス室を経て2013 年4月、フリーに。現在、AbemaTV『AbemaPrime』(水曜レギュラー)などに出演中。