「3歳児神話」につながる女性観や「産めよ増やせよ」の復古調的思想が、深く根を下ろしているということだろう。
自民党の萩生田光一幹事長代行が、宮崎市で行った講演で、乳幼児の養育を巡って持論を展開した。
「『男女共同参画』『男も育児』だとか格好いいことを言っても、子どもには迷惑な話。お母さんと一緒にいられるような環境が必要」
「統計は取れないが、どう考えてもママがいいに決まっている。0歳からパパがいいと言うのはちょっと変わっている」
子育て環境の整備を説きながら、その実、3歳までは母親が子育てに専念すべきという3歳児神話の考えがポロリと出た発言だ。
神話に合理的根拠はない。共働きが主流となる中、母親による育児が前提の子育ては時代に合わない。父子家庭への配慮も欠ける。
萩生田氏が言う「ママがいい」は、一緒にいて世話をしてくれる母親への執着のようなもので、それは子育ての負担が母親に偏っていることの裏返しでもある。
「迷惑」発言にすぐさま反応したのは、子育てに向き合うパパたちだ。抗議の意思を示そうとハッシュタグを付けて、ツイッターに子育てに奮闘する写真を次々と投稿している。
男性の育休取得率が5%程度と低迷しているのを萩生田氏はどう見ているのか。男性の働き方を見直して、パパも当たり前に育児参加できるようにしていくことが政治の仕事である。
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女性の人権を無視した失言で開き直ったのは、自民党の加藤寛治衆院議員。
加藤氏は今月10日の会合で、結婚披露宴に出席した際に「必ず新郎新婦に3人以上の子どもを産み育てていただきたい」と呼び掛けているとの発言をした。子どもがいなければ「人さまの子どもの税金で老人ホームに行く」との言い方もしている。
野党だけでなく与党からも不快だとの声が上がり、謝罪、撤回のコメントを発表したが、27日の党長崎県連定期大会で「批判もあったが、全国から賛同、激励が多数寄せられた」と語ったのだ。
それでは先の撤回は何だったのか。政治家としての適格性を疑う。
子どもを持つかどうかは個人の生き方の問題である。国がとやかく言うことではない。
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振り返れば、第1次安倍内閣で柳沢伯夫厚生労働相が女性を「産む機械」に例え、激しい批判を浴びた。菅義偉官房長官が人気俳優の結婚に絡め、「ママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれれば」と話し、波紋を広げたことは記憶に新しい。
出産や育児を巡る自民党議員の発言には失望させられるが、根っこは一緒だ。
国の少子化対策の成果が一向にあがらないことと、古い家族観・女性観は無関係ではない。
認識不足を猛省してもらいたい。