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恋愛、結婚、離婚、再婚、婚活、不倫……。世は変われども、男と女のいさかいが尽きることはありません。行政書士で男女問題研究家の露木幸彦氏のもとには、そんな泥沼状態を抜け出そうと、毎日多くの相談者がやってきます。その痛切なトラブルエピソードを、ぜひ他山の石としてもらえればと思います。
第5回は、妻(34歳)の暴言や暴行におびえる夫(36歳)と2人の子供たちのエピソードです。ある「事件」によって、離婚を決意した夫。後編では、夫が離婚協議に向けてたてた戦略について解説します――。
■36歳会社員が「母親として問題がある」妻と離婚するまで
結婚し、子供が生まれると、夫・妻の両方が親権をもちます(共同親権)。しかし離婚すると、どちらかが親権を失います。
10年間連れ添った会社員の妻(34歳)は「母として問題がある」。そう考え、離婚を決めた会社員の亮一さん(仮名・36歳)は2人の息子(9歳、6歳)の親権も得たいと考えています。亮一さんが親権を得るには、前もって妻から離婚の同意を取り付ける必要があり、「離婚の同意」と「親権の放棄」を同時に実現しなければなりません。
私は、男女問題研究家として多くの離婚相談に応じてきました。その経験を生かし、今回、「夫が子どもを引き取り、育てたほうが良い理由」「これ以上、妻とは結婚生活を続けることができない理由」を亮一さんとともに考え、離婚協議の場に臨む戦略を立てました。
具体的な戦略立案を行う前に、亮一さんが10年間の結婚生活で感じた「妻の“母親”としての問題点」を次の4つに整理しました。妻は4つのことを「しない」主義者なのだというのです。
1)夫や子供への「配慮」が一切ない
程度の差はあれ、夫婦げんかはどの家庭にもあるでしょう。たまたま腹の虫の居所が悪かったとか、仕事で上司に嫌なことを言われて気持ちが荒れていたとか。ささいなことで配偶者と言い争うことは珍しくありません。
しかし、亮一さんの妻は「配慮」というものがありません。いつでもどこでも夫婦げんかを吹っかけてくるのです。息子たちへの影響などお構いなし。夫婦げんかは子供がいない時間か、子供がいない場所で、といった配慮がないのです。
亮一さんは妻に口論で勝てるとは思っていません。妻が怒りの発火点に達したら「うなずいて」「黙る」のがもっともいい対応策だという経験則を結婚生活の中で身に付けたのです。ただ、子供にとってその光景は、「母親が父親をおとしめている場面」に他ならず、それが子供にいい影響を与えるはずがありません。
子供たちは「父親が一方的におとしめられている」という場面を、ときに不安そうな目で見ているそうです。そんな息子たちに対して妻は「そこで何やっているんだよ! 」と暴言を吐くこともあったといいます。
■妻は夫のシーツや枕カバーを洗おうとしない
2)家事をする気が、ほぼない
平社員の亮一さんに対し、妻は「課長」の肩書をもち、帰宅時間も遅くなりがちです。このため家事の多くを亮一さんが務めています。妻が行う家事は主に洗濯。ところが「清潔さの基準が驚くほど低い」と、亮一さんは語ります。
妻は夫のシーツや枕カバーを洗おうとしません。また、夫のYシャツもそのまま洗濯機にいれてしまいます。事前にエリやソデを手もみ洗いしなければ汚れがとれないのですが、文句をいえば「それなら自分でやれ! 」とキレられます。そのため今は無言を貫いています。角が立つので、自分でやることも遠慮しているそうです。
息子たちの衣服の洗濯も雑です。外で遊べば、泥汚れがつくこともあります。その場合、やはり洗濯機に放り込む前に、手もみ洗いが必要だと亮一さんは考えますが、妻は首をタテに振りません。「子供の分だけでも……」といくらお願いしても、態度は一向に変わらないそうです。
食事も、今ではすっかり亮一さんの担当ですが、子供がまだ小さかった頃は妻も作っていました。ただ、かなり「質素」なメニューだったそうです。
妻は2人の子どもを抱え手一杯だったのか、夕飯でもおかずを作らず、食卓には食パンだけが並んでいたそうです。亮一さんは「翔太や隼太のために栄養のあるものを用意してほしい」とお願いしたのですが、妻は「何が悪いの? 」と開き直り、「やればいいんでしょ、やれば! 」と翌日、コンビニで購入したお総菜をずらりと並べました。
妻は夫の言いなりになりたくないのか、それとも「栄養を摂取できれば何でもいい」と思っているのか、その心中は分かりません。結局、亮一さんは妻に食事の用意を頼むのをあきらめ、朝食、子どもたちの弁当、そして夕食を、出勤前に作っておくことにしました。
子供に栄養のある食事を用意するのは親の務め。妻の行動は、母親としての責務を半ば放棄している、と亮一さんは感じていたといいます。
3)「しつけ」の指導が一方的
亮一さんは以前「靴を脱いだらそろえること」を教え、息子たちはそれをすぐに実践しました。ところが、妻は脱いだら脱ぎっぱなし。そろえようとせず、そのまま放置です。息子はその様子を目にすると、たちまち脱ぎっぱなし状態に逆戻りしてしまったのです。
父と母の言っていること、やっていることが180度異なる。子供たちからすればどちらを信用して良いのかわからず混乱します。
「箸の持ち方」に関しても同じことがありました。亮一さんが持ち方を教え、ようやく補助付きの子ども用の箸を使えるようになった折も折、妻は子供に「そんなことをしないでいい。スプーンを使ったらいい! 」「箸で突き刺したらいい! 」などと言い放ったそうです。
■清潔さの基準が「驚くほど低い」一方、神経質な面も
その一方で、息子がハンガーにタオルをうまくかけられないときには、「そんなこともできないの。なにしてんの! 」と怒鳴りつけ、さらにおびえて硬直している息子に向かって「そこで何やっているんだよ! 」と追い打ちをかけます。
こんなことが続いた結果、子供たちは母親の顔色を常にうかがい、ビクビクして、モノを言えなくなりつつあります。この状況を放置すれば、取り返しのつかないことになる。亮一さんはそう危惧し、今後、妻の影響がある環境で子育てをすることは避けるべきだと考えるようになりました。
4)子供と一緒に遊ばない
亮一さんも妻も、職種はサービス業。夫婦の休みは同じ曜日ではありません。
亮一さんが休みの日は、なるべく息子たちを公園や海岸、運動場などアウトドアへ連れ出して遊んであげるそうです。一方、妻は自宅でテレビを見ているばかり。子供にはゲームをやらせるだけで、一緒に時間を共有しようという気がありません。
「ママが一緒に遊んでくれない。テレビやパソコンばかりしている! 」
ある日、次男は涙ながらに訴えかけてきたそうですから、よほど寂しかったのでしょう。亮一さんは妻に相談したのですが、妻は「あんたが休みをとって遊んであげたらいい」と意に介しません。
▼妻のいい面は消え失せ、「本性」が露呈
亮一さんは妻との離婚協議の場で、こうした「母親としての問題点」を訴えようと考えていました。
もちろん、妻にも「いい面」はあります。正確に言えば、ありました。だから、亮一さんも恋愛し結婚したのです。しかし、長年、生活していくとその人の「本性」が出てきます。しかも、妻は自分の感情を律することができません。そんな母親の存在が子供に悪影響をおよぼすことがあれば大問題です。引き離すしかありません。
■親権争いで妻に白旗を上げさせた「夫の言葉」
過去10年間の結婚生活を振り返りながら、亮一さんは時々、涙ぐみました。
生活や育児の仕方について、自分からなにを言っても、無視・逆ギレ・難癖をつける……。亮一さんによれば、妻のほうが職業上の肩書が上(夫は平社員)ということもあって、とにかくプライドが高く、批判を素直に受け止められない。だから、すぐかんしゃくを起こす傾向があるのだといいます。
でも、第三者の私からすれば、それはプライドうんぬんの問題ではなく、単に母親としての責任感の欠如を露呈させただけのように見えます。そして今後、こうした妻の態度が変わるとは考えられません。
昨年末、意を決して、亮一さんは妻に離婚を申し出ました。そして親権を持つにふさわしいのは自分である、と前述のような事例や根拠を淡々と説明したそうです。
例によって逆上した妻でしたが、しばらくすると、急に「もう一度、チャンスを与えてほしい」と泣きついてきたといいます。しかし、亮一さんは「悪いけれど、信用できないよ。これからも翔太、隼太を傷つけ、悩ませ、困らせることは目に見えているよ」と応じなかったそうです。
▼「今までの自分の行いを振り返ってみてよ」
今回のケースでは、家事・育児のほとんどを亮一さんが担っていました。夫婦の離婚が避けられない場合、夫と妻のどちらが親として適しているかを、家庭裁判所などが判断することになります。
亮一さん夫婦の場合、妻がやっていた家事・育児の量は微々たるもので、亮一さんがそれを引き受けられれば、離婚による子供の生活環境の変化も最小限にとどめることができます。妻は親権争いに挑んでも「敗色濃厚」と感じているようでした。そんな妻に亮一さんは静かに語りかけました。
「今までの自分の行いを振り返ってみてよ。翔太、隼太に十分な愛情を注いできたって自信をもって言える? 」
すると妻はようやく観念したのでしょう。離婚に同意し、親権を断念し、離婚後は亮一さんが長男、次男を引き取ることが正式に決まったのです。
行政書士、ファイナンシャルプランナー、男女問題研究家 露木 幸彦 写真=iStock.com