親の虐待か、不慮の事故か? 検証・揺さぶられっ子症候群

 

虐待の「おそれ」で親子分離が肯定されることについて問題提起されています。
「おそれ」なら、本来権利(親子関係)は維持されたうえで「おそれ」が
刑罰にあたるかどうかを検証する手続きが保障されるべきですが、
問題は、「おそれ」だけで「保護」の名のもとに
親の権利をはく奪し、回復する手立てがまったくないことが争点になるべきで、
「子どもをとる」から引き離していい、なんて理屈は、
権利義務なんて何にもわかっていない素人の発言です。
そういう医者が児童虐待の中心的な存在を果たしているだけですが。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180201-19542111-kantelev-soci

2/1(木) 19:54配信

関西テレビ

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関西テレビ

揺さぶられっ子症候群。通称SBS。そう医師から診断され、親などが逮捕・起訴される事件がここ数年目立っています。一方で、こうした捜査に異論をとなえる動きもあります。

【秋田真志弁護士】
「誤った訴追(起訴)がなされていて、誤った親子分離がなされている。これはもう否定しがたい」

秋田真志弁護士。これまで数多くの刑事裁判で無罪判決を勝ち取ってきた、刑事弁護のスペシャリストです。

【秋田真志弁護士】
「虐待をデフォルト(標準)にしてはいけない。こういう頭部外傷が起こったら、まず虐待を疑うんじゃなくて、本当は何があったといえるのかを冷静に判断すべきなのに、まず虐待ありきで判断しちゃっている。それが大きな深刻な問題を生んでいる」

秋田弁護士は、いま弁護している一つの裁判を通じて、SBS事件の逮捕・起訴のあり方に見直しを迫ろうとしています。夫と長男の3人で暮らす、雪谷 みどりさん(仮名・36歳)。2014年12月、みどりさんは、当時生後1ヵ月の長女を虐待したと疑われ、今は刑事裁判の被告という立場に置かれています。

【みどりさん】
「長女をコルクマットの上に置いて、ままごとでちらかっているのを片付けていた。横目に長男が長女のお尻を拭いている動作をしているのを見て、ちょっと嬉しくて…。おむつ交換の時の真似をしているんやなと。そのまま片づけをしていたんですけど、そしたら放り投げてて…」

みどりさんによると、夫が仕事で不在だった夕方、リビングの床で寝ていたはずの長女が、目を離したすきに泣いていました。
前には長男が、物を投げ終わったときの体勢で立っていたといいます。

数分後、長女の顔が青白くなり、パニックの中119番通報。長女は心肺停止の状態で病院に搬送されました。硬膜下血腫(急性・慢性)、脳浮腫、白質裂傷、頭がい骨骨折、左頬部皮下出血と診断され、植物状態となり、いまも回復していません。

事故の翌日、みどりさん夫婦は、児童相談所に呼び出されます。そこで告げられたのは…
「虐待の疑いがあるので長男を一時保護します」

長女を虐待した疑いがあると判断され、この日から9ヵ月間、長男は親元から離して保護されることになったのです。

【みどりさんの夫】
「すごいショックでしたね。 3人で行った時も、はじめ話を聞く間、長男預かっておくということだったんですけど、そのまま、そこが別れになってしまったんで。そういうやり方するんやなって。すごい腹もたちました」

警察も虐待があったという見方を強めます。2015年9月、大阪府警は殺人未遂容疑でみどりさんを逮捕しました。

根拠となったのは「揺さぶられっ子症候群」の疑いという医師の診断でした。「揺さぶられっ子症候群」は、乳幼児が激しく揺さぶられたときに起こる重症の頭部損傷で、1秒間に3~4回往復するほどの揺さぶり行為が必要だとされています。

【上田大輔記者(大阪地裁前)】
「その後、検察は傷害罪で起訴しました。裁判では、検察側の医師の証言をめぐって激しく争われることになりました」

【検察側で証言した医師】
「神経のびまん性軸索損傷があったと推認します。単純なインパクト(衝撃)というよりは、揺さぶり行為というものが背景にある」

検察は、医師の証言を根拠にして、「短時間に広い範囲で脳が損傷している。低い位置からの落下で重症化することはなく、揺さぶり行為でしか説明できない」と主張しました。

一方、秋田弁護士は、2つの点で「不慮の事故」だったと説明できると話します。

【秋田真志弁護士】
「治りきらない段階で、2回目の脳震盪程度のインパクト受けることで重篤化してしまう」

セカンド・インパクト症候群は、軽症の頭部外傷が完全に回復しないうちに2度目の外傷を受けると重症化しうる症状として知られています。実は、事故の21日前にも、長男が長女を高さおよそ80センチのベビーベッドから落下させる事故が起きていました。事故当日は2度目の落下で、軽い衝撃を受けただけでも重症化する可能性が高かったというのです。さらに…

【秋田真志弁護士】
「救急隊が駆け付けた時点で心肺停止状態だった。心肺停止おこる確率が高いのが窒息。赤ちゃんは気道自体が非常に細い」

肺のCT画像などをみると、長女は食道から逆流したミルクが気道に入り、窒息で低酸素となり、心肺停止で脳に大きなダメージが残ってしまった可能性が、十分にあるというのです。

【秋田真志弁護士】
「今回の事件が虐待かどうか冷静に考えればわかるはずなんです。なぜ虐待だ、虐待だと決めつけるのか。『3徴候あれば虐待あり』なんだと。そういうことでいいんだと」

多くのSBS事件で診断根拠となっている「3徴候」とは、一体何を指すのでしょうか。これは、虐待が疑われるケースに医師が対応する際の「診断ガイド」です。「硬膜下血腫、網膜出血そして、脳浮腫。この3つが揃っていれば、3メートル以上の高い位置からの落下事故などがない限り、SBSである可能性が極めて高い」と書かれています。

秋田弁護士の依頼で海外のSBS事件を調査した刑事訴訟法の研究者・笹倉香奈教授は、「こうした診断の基準が刑事事件にも影響している」と話します。

【甲南大学・笹倉香奈教授】
「私が裁判例を調べた中でも、3徴候に基づく逮捕・起訴・有罪判決がかなりの数あると思います。アメリカを見てみますと、たくさんの事件で(3徴候で診断する)『SBS理論』が医学的根拠があまりないということに基づいて、新たに有罪判決を見直した結果、無罪判決が言い渡される例が増えています」

さらにスウェーデンでは、2014年に最高裁判所が「揺さぶりの診断についての科学的な根拠は不確実」と判断するなど、
海外ではSBS事件での訴追のあり方について、見直しが進んでいるといいます。

【甲南大学・笹倉香奈教授】
「揺さぶられっ子症候群というのは一つの仮説にすぎないことが分かったわけです。仮説があたかも真実である、ほかの理論がないと思われて受け入れられていってしまうと。それは非常に危険な面があると思いました」

一方、診断ガイドを作成した医師はどう考えているのか。診断ガイドの作成に協力した小児科の溝口史剛医師は、「診断ガイドの記載は間違っていない」と話します。

【前橋赤十字病院・溝口史剛医師】
「三徴候がそろっていてSBSじゃない可能性は、きわめて低いってことは事実なわけで。臨床医の現場でスクリーニング(選別)として、可能性のある事例をピックアップする上で、この書き方は間違ってない。90センチ以下の高さから落ちて子供が重篤な脳実質損傷を負うってことはない。目撃者がいる状態での報告は一切ないので」

溝口医師は、虐待で苦しむ子どもをゼロにしようと、これまでにアメリカの文献を数多く翻訳。日本の子ども虐待医学の中心的な存在で、多くのSBS事件の裁判で検察側の医師として証言台にも立っています。

【前橋赤十字病院・溝口史剛医師】
「思ったより全然起訴されない、SBSって。ようやくたどりついた起訴の中で、冤罪の可能性が混じっていると言われて、ほとんどが冤罪と言われると、子どもたちには申し訳ないと思う。むざむざ殺されている子がいっぱいいるから。極論で言ったとしたら、えん罪をゼロにするために多少児童虐待の事例が混じってもかまわないと考えるのか、それとも、児童虐待見逃さないために、ものすごい低い確率で冤罪が入ったとしても仕方ないと考えるのか。僕はあくまで小児科医だから、最終的に何を取るかと言ったら子供を取ります」

この日、みどりさんの最後の審理が行われ、検察側は懲役6年を求刑、秋田弁護士は無罪を主張しました。

【みどりさん】
「形としては冤罪被害を訴えているということで、すごい被害こうむっているという形をとってしまっているように思うんですけど、決してそうではなくて、一番責任感じているのは自分自身ですし、非難されるべきだと思っています。でも、罪名が違う。罪名が違うなって思うんです。過失の部分はすごく責めてほしい。本当だったら不注意だったのに、『落下事故でこんなことにならない、大丈夫ですよ』と言われると、一番責められるべきところを肯定されてしまって。本当に罪名が間違っているなということを言いたいです」

SBSの診断に医学的根拠がどこまであるのか。
このことが日本で初めて本格的に争われた裁判の判決は、3月13日に言い渡されます。

関西テレビ

6年前