元妻に子を”盗られ”ても金を払う男の無念

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元妻に子を”盗られ”ても金を払う男の無念

12/28(木) 9:00配信

プレジデントオンライン

恋愛、結婚、離婚、再婚、婚活、不倫……。世は変われども、男と女のいさかいが尽きることはありません。行政書士で男女問題研究家の露木幸彦氏のもとには、そんな泥沼状態を抜け出そうと、毎日多くの相談者がやってきます。その痛切なトラブルエピソードを、ぜひ他山の石としてもらえればと思います。

第4回は、何の基礎知識を持たずに離婚に踏み切り、大損してしまった男性たちの事例を紹介します。「慰謝料」「婚姻費用」に関するエピソードをお届けした前編に続き、後編は「養育費」「親権」「子供との面会」に関するエピソードです。

■守銭奴の元妻「娘が私立高校に合格、至急30万円送れ」

世の中の法律制度や仕組みは必ずしも男女平等ではありません。離婚に至った男性のなかには、ほとんど知識がない“丸腰”状態で離婚に踏み切り、大損する人が後を絶ちません。一方的に不利な条件をのまされて、離婚後は哀れな人生を歩まざるを得なくなるのです。彼らの二の舞にならないために、離婚をするなら何に気をつければよいのでしょうか。

【離婚するなら知っておくべきこと その3:養育費】

関西地方在住の山本哲也さん(仮名・42歳)は2年前に妻と離婚しました。当時14歳の娘(ひとりっ子)がおり、妻がその親権を持ち、育てています。離婚時の話し合いで「娘が20歳に達するまで、夫が妻に対して毎月8万円の養育費を支払う」という約束をしました。ところが離婚から2年半後、妻が当然「今すぐ30万円払って! 」と連絡してきたのです。

▼子供はまるで“人質” 離婚しても元妻との縁は切れない

妻に聞くと、娘が「私立」の高校に合格したので、月末までに入学金や授業料、施設使用料などを納めなければならないとのこと。突然の話に困り果てた哲也さんは私のところへやってきて、こう話すのです。

「頑張って受験勉強を続け、合格した娘の努力を無駄にするわけにはいきません。結局、(元)妻の無計画ぶりに目をつぶって30万円を渡すしかありませんでした。しかし妻がお金のめどを立てていなかったことは言語道断です」

思えば、元妻は以前から「守銭奴」のようなところがありました。夫の給料を自分が管理するのはいいにしても、夫に毎月渡す小遣いはわずか。「もっと稼いできなよ」とがめつく、金銭欲が強かったのです。そうした事情もあり、妻との離婚が成立し、やっと縁が切れた。もう金がらみで悩まされることもない。そんなふうに安心し切っていた哲也さんは冷や水をかけられたような気持ちだったといいます。

■妻の「子供の連れ去り」法律は夫を助けてくれない

世の中には、哲也さんと同じようなケースはたくさんあります。子供の養育費を払うことは親の務めですが、だからと言って、「後出しじゃんけん」でいちいち追加費用をせびられてはたまりません。

離婚をしても、相手の再婚や収入の増減、入学や留学、親の介護や相続などの「事情変更」によって、離婚時に決めた養育費を「増やせ! 」と言われるケースに、私は何度も遭遇してきました。

表現は悪いですが、かわいい子供を「人質」に取られている以上、妻に言われるがまま、お金を取られてしまうというリスクは離婚後も変わらないのです。子供がいる場合、「元」夫婦は一蓮托生だと考えてください。

【離婚するなら知っておくべきこと その4:親権】

4つ目は親権です。先日、都内在住の山上拓海さん(仮名・28歳)は私の事務所を訪ねてくるなり、こんなふうに声をあららげました。

「こんなことが許されるのでしょうか?  勝手に息子を連れ出し、実家に帰って、そのまま離婚しようっていうんですよ」

拓海さんは専業主婦の妻と5歳の長男と暮らしていましたが、ある日、仕事を終えて帰宅すると、完全にもぬけの殻。妻子の姿はなく、必要な荷物は運び出され、ダイニングテーブルの上には鍵が置かれていたそうです。

▼家事・育児をしっかりやった夫は妻から親権を取り戻せるか

その上、翌日には裁判所から呼び出しの手紙が届きました。妻が離婚の調停を家庭裁判所へ申し立てていたのです。拓海さんはかなり動揺し、現実を直視できるようになるまでかなりの時間を要したそうですが、離婚調停の当日には気持ちを入れ替えて臨むことができました。

なぜ気持ちを入れ替えられたのでしょうか?  拓海さんは当時のことをこのように振り返ってくれました。

「嫁のやり方はともかくメチャクチャですが、こんな理不尽が裁判所で通用するわけがないでしょう。僕が言うべきことを言えば、きっと息子を取り戻せるし、親権も取れるし、嫁をギャフンと言わせることができるはずです」

■「離婚=男が悪い」「女=社会的弱者」は逆差別か

拓海さんがそう信じて疑わなかったのには理由がありました。拓海さんは子煩悩で、長男が誕生してから別居の前日まで、きちんと子育てを手伝ってきたそうです。例えば、息子さんの行事には必ず参加し、保育で使う布団を用意したり、上履き入れを作ったり、育児には全面的に協力してきたという自負がありました。

だから、「小さい子供には父親より母親のほうが必要だから」「母親のほうが家にいるから」「母親に経済力がなければ、父親に養育費を払わせればいい」などと妻が身勝手なことを言い出しても思い通りにはならないだろうと考えたのです。

しかし、調停の場では残念ながら、拓海さんの意見は全くといっていいほど聞き入れられなかったそうです。妻はあろうことか拓海さんを「DV夫」にでっち上げたのです。妻は裁判官にこう訴えました。

「旦那の暴力から逃れるため、息子を連れて実家に戻ってきました。旦那のことは怖くて仕方がないので結婚生活を続けるのは無理です。これからは私が1人で息子を育てていきます」

DVに関しては拓海さん本人には身に覚えがないのですが、拓海さんがそれを主張すればするほど、「言い訳している」と見られ、うさんくさい人物と判断されてしまったのです。結果、裁判官や調停委員は“被害者”である妻のほうになびいていき、半ば強制的に「親権は妻」という条件で離婚させられてしまったのです。

拓海さんは私に訴えます。

「離婚の計画や子供の連れ去り、そして偽装DV……どれも妻は確信犯だと思います。そんなことが認められるなんて信じられません。法廷は男女平等であるべきです。しかし実際は、『離婚=男が悪い』『女=社会的弱者』と決め付けているように僕には思えます。逆差別じゃないでしょうか」

▼「子供の連れ去り」に法律は驚くほど無力

拓海さんのように子供のことを心の底から愛し、子育てを積極的に手伝い、そして将来的には子供の入学式や卒業式、そして入社式や結婚式への参加を心待ちにしていた男性にとって厳しい現実があります。

厚生労働省の「離婚に関する統計」(2009年度)によると未成年の子がいる家庭の離婚件数13万8632件(複数の子がおり、親権を夫と妻が分け合った場合を除く)のうち妻が親権者となるケースは11万8037件(85.1%)。夫が親権者となるのは2万595件(14.9%)に過ぎません。つまり、夫は離婚すると8割以上の確率で子供と離れ離れになってしまうのです。

そもそも夫婦が同居しながら離婚の話を進めることは難しいので、ほとんどの場合、離婚より前に別居します。その際、「妻が子供を連れて実家に帰る」という状況になった場合、子供を引き取っている側が離婚後も引き続いて子供を育てたほうが子供への負担は少ないという判断が下され、そのまま妻が親権を持つことになるのです。

男性は、離婚時に子供の親権を決めるにあたり、現実には夫側のほうが不利であることを知っておいたほうがいいでしょう。

■子供との面会を拒否 元妻の「養育費」使い込み疑惑

【離婚するなら知っておくべきこと その5:子供との面会】

最後は子供との面会です。北関東エリアに住む飯田太陽さん(39歳)は困り顔でこう語るのです。

「相性の合わなかった嫁とようやく離婚できたのは良かったのですが、息子と会えなくなるとは……それが大きな誤算でした」

太陽さんのほうから離婚を切り出したこともあり、息子の親権を妻に譲るのも致し方なかったようです。しかし、離婚時には家庭裁判所で離婚調停を申し立て、調停では子供との面会の約束を書面(家庭裁判所が発行する調停調書)に残しました。だから当然、息子と面会できると考えていました。

元妻とも相談し、面会当日の待ち合わせ時間や食事の場所、送迎の担当なども決めていました。にもかかわらず元妻は前日に「他の用事ができたから行けなくなったの」と面会をキャンセルしてしまったのです。

結局、太陽さんは離婚から現在までの8カ月間、息子とは一回も会えていません。最近では元妻は「○○(息子の名前)が『パパに会いたくない』と言っているから」と言って、面会を断っています。

太陽さんは「もしかしたら(元妻が)僕の悪口を息子に吹き込んでいるかもしれない」と心配ですが、もはや妻と息子との会話を知ることもできません。一方で太陽さんは離婚から現在まで、毎月養育費を支払っていますが、先日、子供に会えないうっぷんから、「本当に息子のために使っているのか?  お前の小遣いじゃないんだぞ」と言ってしまったのです。

▼「文句あるのなら息子には会わせないからね」

元妻は「自分が使い込むことはありえない」と身の潔白を強調するのですが、何度も太陽さんが確認すると「文句があるのなら、息子には会わせないからね」と言われたそうです。

「これじゃ、息子とは『生き別れた』の同然です。養育費だけ払わされるのでは納得できません」

厚労省の「全国母子世帯等調査結果報告」(2011年度)によると、父と子の「面会交流の実施状況」について、「現在も面会交流を行っている」「面会交流を行ったことがある」は合わせて全体の45.6%に対して、「面会交流を行ったことがない」は50.9%でした。つまり妻側に子供を引き取られた場合、夫側の半分以上は、離婚から現在まで子どもの顔を一度も見たことがないということです。

きちんと養育費を払っていたとしても、子供と面会できるとは限りません。いったん子供を連れ去られたら最後。夫側は不利な状況に追いやられることが多いのです。

■何も勉強しないで離婚して大損する男たち

以上、5人のケースを紹介しました。

夫婦が離婚すると、その後は、収入が多い男性(夫)がお金を払う側で、女性(妻)がお金をもらう側になるからでしょうか。妻のことを「自分より下」だと見下している夫が多いように思えます。

「離婚しても、何とかなる。何の心配もしていない」。そんなふうに離婚することを軽視し、何の準備もせずに話し合いに臨む男性が多いように思います。

もし、妻が用意周到な戦略家だとしたら……。今回取り上げた5人のように別居中の生活費を過大請求され、せっかく離婚できたのに子供の親権を失った揚げ句、わが子の顔を拝めないだけでなく、子供を“人質”に養育費を追加請求されるという末路をたどることもあるでしょう。「離婚しても大丈夫」と根拠もなく楽観視することはやめるべきです。くれぐれも油断せず、専門家に相談のうえ、しっかり準備しておくことを強く勧めます。

行政書士、ファイナンシャルプランナー、男女問題研究家 露木 幸彦 写真=iStock.com

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