読売新聞:防げなかった9歳の死

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防げなかった9歳の死

 殺人事件の裁判を取材していると、胸が痛くなることがある。亡くなった被害者が、周りの人に愛されながら懸命に生きていたことが伝わってくるからだ。秋田地裁で先月開かれた裁判員裁判もその一つだった。

 「ショックのあまり言葉も涙も出ず、体が震えるだけだった」。秋田市立高清水小4年、千葉愛実さん(当時9歳)を殺害したとして、殺人罪に問われた母親(41)の裁判で、法廷に立った父親は絞り出すように話した。

 スーツ姿で現れた父親はまっすぐ前を見て意見陳述した。2009年に調停離婚が成立して以降、愛実さんとの月1回の面会に、母親が応じさせなかったため一度も会えなかった。長年待ち望んでいた7年ぶりの再会は、穏やかな表情からはほど遠い、変わり果てた姿だった。

 裁判では、昨年6月17日夕、愛実さんが最後に児童養護施設を後にした時の様子も明らかになった。迎えに来た母親のもとに駆け寄り、手をつないで施設を出たという。2人を乗せたタクシードライバーは、目を合わせて楽しそうに会話する様子を見ていた。久しぶりに会えた実母に殺害されたとしたら、恐怖は想像を絶する。

 同地裁は5月31日、母親が心神耗弱状態だったと結論付け、懲役4年を言い渡した。

 愛実さんは施設で生活しており、事件は一時帰宅中に起きた。母親の家庭には、児童相談所や、市のケースワーカーなども関わっていた。児相、施設、市、学校など関係機関の連携は十分だっただろうか。未来ある幼い命が奪われたことを重く受け止め、二度と同じ被害が出ないようにしてほしい。

(山田佳代)

2017年06月11日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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