男性のDV被害者が加害者にされるおそろしい実態(前編)

木下検太さんは昨年11月14日に自宅で果物ナイフで刺され、傷害罪にあたるとして4月4日に静岡地方検察庁に告訴した。告訴時には弁護士は負傷直後に木下さんが撮影した動画や医者の診断書も提出している。さらに事件が起きたときには目撃者もいて、その証言の陳述書も提出している。

このとき木下さんは右腕を刺されたほか、右の口から頬にかけて殴られ、歯が折れ、顎の関節がずれてマウスピースを使うようになっている。証拠があるにもかかわらず、告訴が5カ月も遅れたのは、木下さんが警察に被害を訴えても取りあってもらえなかったからだ。

男性のDV被害、もみ消しの実態

なぜ木下さんが警察に行っても取りあわれなかったか。それは木下さんが暴行を受けたと訴えた相手が妻だったからだ。私は離婚や別居によって子どもと引き離された親たちの相談を男女関わらず受けている。木下さんも私のもとに相談に来た、子どもと会えないことに悩む親の一人だ。暴力被害を専ら聞いているわけでもないものの、意図せず妻からの暴力被害に悩んできた男性の声も少なからず聞いてきた。その中でも木下さんの被害は深刻だった。事件当日、木下さんは妻に胸近辺をナイフで狙われていたため、殺されていてもおかしくなかった。実際刺された後、木下さんは失血によって一時意識を失っている。

木下さんによれば、これ以外にもレンガ片で殴られ肋骨させられるなどの暴力被害をそれまで三度受けているという。ところが11月の事件当日には、木下さんが意識を失っている間に、2歳になる息子さんを妻が拉致し、警察署に駆け込んで、逆に夫に暴力を受けたので保護して欲しいと訴えた。木下さんの怪我について妻は、夫は息子を抱きかかえながら自分自身を刺したと主張していたようだ。

その後木下さんが警察に行くと、木下さんが犯人扱いされることになる。加害者であるにもかかわらず取り調べはされず、被害届を持参すると、「被害届を出すと児童相談所に子どもが連れていかれて二度と帰ってこない」と耳打ちをされて泣き寝入りし強いられた。

DV被害の男女格差

夫婦間のDV(家庭内暴力)の被害者が女性である場合、通報があればすぐに警察が駆けつける。裁判所に暴力被害を申し立てれば接近禁止として保護命令が申し立てられ、加害者とされた側が近づけば刑事罰に問われる。裁判所の命令には審査が必要で弁明の機会もあるため、現在では区市町村の役所にDV被害を訴え出て、首長権限で住所秘匿の支援措置を出してもらうことが多い。この支援措置は、警察に相談した履歴がありさえすれば可能で審査の必要がないからだ。

こういった支援措置には、住所をブロックされた側が本当に暴力の加害者だったのか検証する機会はない。にもかかわらずその一方的な措置が半永久的に継続してしまう。また異議申し立ての制度は法律上一応あるものの、認められたという事例を私は聞いたことがない。

こういった超法規的な措置はDV被害者の保護のために黙認されているのが現状だが、これらの措置の根拠法とされるDV防止法は、女性のDV被害しか想定していない。したがって、女性からの申出であれば、たとえそれがウソであっても、実際にDV被害であったかどうかの検証もなく夫を暫定的な「DV加害者」とすることができる。

夫婦間であれば、それがウソか否かをもし争えば名誉棄損の問題になるが、妻が子どもを同伴していた場合には別の問題が生じる。仮にウソであった場合、DV加害者の側が被害者として警察や行政機関を動かし、子を確保する手段としてしまうのだ。DVの加害者であっても親としての権利はあるのだから、子どもに接するどころか、居所を知る手段すら永遠に断たれるのは拉致と同様であり、ましてやそれがウソでなされたとすると被害者は二重の痛手を被る。

「合法的誘拐」

もちろん、こういった現状は、子どもを拉致された側の親としての権利を一方的にはく奪するので違法・違憲だが、法律家たちはそれを認めたがらない。それどころか、弁護士や女性の支援者たちは、子どもの親権がほしければ子どもを連れて家を出ろ、と「合法的な」誘拐を指導し、堂々とホームページに掲載していたりする。

木下さんが警察に被害を訴えても取りあわれなかったのには、こういった背景がある。警察は妻からの訴えがあった時点で、刑事事件として処理せず、DV案件として民事的な処理をしたため、妻はフリーパスでシェルターに保護されたことが後日明らかになっている。

一方でDVを受けた上に子どもを拉致された木下さんは、保護を受けるどころか、一方的に加害者扱いされたのだ。木下さんは検察に告訴した際、これらの実態を表に出そうと静岡県のマスコミに働きかけたが黙殺された。女性が同様の扱いを受ければかなりセンセーショナルな扱いを受けただろう。(続く)(宗像 充)