毎日新聞:<夫婦間殺人>子が困窮 犯罪被害給付金は対象外 

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<夫婦間殺人>子が困窮 犯罪被害給付金は対象外 

7/2(日) 8:00配信

毎日新聞

 夫婦間の殺人事件で後に残された子が、「加害者家族」として扱われたままでいいのか--。被害者を経済的に支援する現行制度の裏で「被害者家族」として扱われず、生活に困窮する子たちがいる。夫婦など親族間で起きた事件の遺族に給付金を支払えば、「加害者に還流する恐れがある」との見解を国が示しているためだ。こうした子たちを救済する手立てはないのか。犯罪被害給付制度の見直しを進めている警察庁の有識者会議は今月、提言をまとめる方針。

 「お母さんがお父さんに殺されたことを伝えると、あの子は泣き崩れました」

 九州南部で暮らす40代の女性は、事件の記憶が頭から離れない。2004年10月、姉(当時31歳)は夫に登山ナイフで刺殺された。日常的に振るわれる暴力から逃れるために別居し、離婚調停中だったが、居場所を見つけ出した夫が凶行に及んだ。

 女性の姉には当時9歳だった一人娘がいた。ランドセルを背負って帰宅しためいに母親の死を告げた。母親は殺害され、父親は殺人罪=懲役15年=で刑務所に。めいは小学3年で寄る辺をなくした。

 だが、被害者を支援する国の給付金について、県警は「夫婦間で起きた事件なので一切出せません」と女性に説明した。父親が母親に暴行する場面を目の当たりにし、事件後に「お父さんなんて死んでほしい」とつぶやいためいだったが、現行制度では「加害者家族」の一員--という位置付けだった。

 当時、新婚生活を送っていた女性はめいを引き取った。突然の子育て。広い家に引っ越し、夫との共働きで我が子のように育てた。生活を切り詰めて教材を購入し、中学校に入学すると制服を買いそろえた。大学進学に備えた教育ローンの支払いも楽ではなかった。

 めいは大学生になり、就職活動に忙しい。女性は育て上げた幸せを感じているが、「もし自分がいなかったら、この子はどうなっていただろう」と考えると恐ろしい思いがするという。

 制度の線引きを理不尽と感じるのは、この女性だけではない。九州で05年、男=懲役11年=が妻(同34歳)を絞殺した事件では、小学6年の長女が残された。少女は親族の家に身を寄せたものの経済的に困窮し、生活は荒れた。少女の関係者は「幼いころに事件に遭遇しただけでも精神的につらいのに、『加害者の娘』だからと扱われたのは余計につらい。子供に罪はないのに」と語った。【川名壮志】

 ◇制度の谷間 見直しへ議論

 警察庁は犯罪被害給付制度について、今年4月から有識者会議を開き、給付条件の見直しを進めている。論点の一つになっているのが親族間犯罪の扱いだ。

 現行制度は、被害者が死亡した場合、遺族に最高約3000万円を給付するが、DV(ドメスティックバイオレンス)など特定のケースを除き、夫婦や親子間で事件が起きた場合は給付を認めていない。警察庁によると、2016年に摘発した殺人事件(未遂を含む)770件のうち、親族間は425件で55%を占めた。

 殺人事件で残された遺族が幼い子どもだった場合には給付金を増額することや、遺族の負担を少なくするために給付時期を早めることなども議論の対象になっている。【川上晃弘】