神戸新聞:初の面会交流で娘犠牲 母苦悩の日々「答え出ない」

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初の面会交流で娘犠牲 母苦悩の日々「答え出ない」

神戸新聞NEXT 5/30(火) 14:50配信

初の面会交流で娘犠牲 母苦悩の日々「答え出ない」

遺影を前に、侑莉ちゃんが作ったハチの作品を見つめる母親=伊丹市内

 兵庫県伊丹市内のマンションで4月23日、父親(40)と長女の松本侑莉(ゆうり)ちゃん(4)が首をつって亡くなっているのが発見された。侑莉ちゃんの両親は昨年11月に離婚。母親(38)の実家で暮らし、父と初めて「面会交流」した日だった。娘を面会に行かせたことは正しい選択だったのか。母親は神戸新聞社の取材に「どうすれば良かったのか、これからも答えは出ない」と胸の内を明かした。伊丹署は、父親が侑莉ちゃんの首を絞めて殺害し、無理心中したとして殺人の疑いで近く書類送検する方針。(竜門和諒)

 両親は2010年に結婚し、13年に侑莉ちゃんを出産した。父親は結婚後1年くらいから母親の言動に腹を立て暴言を吐くようになり、物を投げるなどの暴力を振るうようになった。侑莉ちゃんが生まれた後も、母親を寝かせずに説教することもあったといい、昨年11月、父親から離婚を切り出した。

 その後、神戸家裁伊丹支部に養育費請求調停を申し立て、4月14日に審判。父親と侑莉ちゃんが面会する「面会交流」の頻度なども決めた。

 母親に対しては暴力的な態度を取っていたが、侑莉ちゃんへは違った。「子どもが大好きで、怒ったりもしない。侑莉もパパ、パパとよく懐いていた」という。母親は「2人を会わせることに抵抗はなかった」といい、調停が始まるまで3度会わせていたという。

 事件のあった面会交流当日も笑顔で家を出た侑莉ちゃん。午後3時40分ごろ、現場マンションの防犯カメラには、喜んで歩く娘の姿が残されていた。「過去に侑莉を傷つけたことはなく、あのときどういう感情になったのかはまったくわからない」とうつむく。

 母親は事件後、父親の心に不調があったことや、会社に行ってなかったことなどを知った。「調停の段階でそのことをもっと調べられていれば、会わせる方法を考えた」と悔やむ。家裁から面会施設の利用も提案されたが、数が少なく高額だったため諦めたという。

 月命日の今月23日、母親は侑莉ちゃんが通っていた幼稚園で退園手続きをとった。その際、受け取った荷物の中から、事件直前に侑莉ちゃんが工作で描いたハチの作品が出てきた。「持って帰って来たよ」「上手に描けてるね」。自宅の遺影に語り掛けた。

 ◇面会交流◇ 離婚後や夫婦が別居中に、子どもを養育していない方の親が子どもと面会すること。具体的な面会方法や頻度が両親の間でまとまらない場合、家庭裁判所に調停を申し立て、内容を取り決める。

【安全性確認家裁の責任 ドメスティックバイオレンスに詳しい長谷川京子弁護士の話】 元夫は婚姻中から、家庭での暴言や暴行といった衝動的な攻撃性を管理できなかった。この衝動が子どもに向けられるリスクへの家庭裁判所の注意、検討が甘かったのではないか。

 子どもの福祉と幸せのための面会交流で、傷つけられることがあってはならない。今回のように母親が元夫を信用していると、危険に気付けない場合もある。

 長崎県では1月、面会交流中に母親が殺害された。安全性の確認は家裁の責任である。調停をまとめた過程を検証し、子どもと関係者の安全を最優先に運営する制度を構築すべきだ。

7年前