毎日新聞:<離婚届>知らぬ間に外国人被害 支援団体がリーフレット

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毎日新聞 4/27(木) 15:00配信

<離婚届>知らぬ間に外国人被害 支援団体がリーフレット

協議離婚問題研究会が作成した離婚届や制度を紹介する多言語のチラシ。サイトにはそれぞれの言語の啓発動画もある=大阪府豊中市で2017年3月31日午前11時59分、反橋撮影

 外国人の相談支援に取り組む民間団体に「日本人配偶者に無断で離婚された」という相談が相次いでいる。離婚届に書き込むだけで子どもの親権者を決められ、夫婦双方の意思を直接確認しなくても届を受ける日本の協議離婚制度は世界的に珍しく、外国人に知られていないとみられる。支援団体は多言語で制度の仕組みについて注意を促すリーフレットを作成し、今週から配布を始めた。

 リーフレットを作成したのは、公益財団法人とよなか国際交流協会(大阪府豊中市)など、関西の7団体や弁護士、大学教授らでつくるグループ「リコン・アラート」。相次ぐ相談を受け、2年前から事例の研究や防止策の検討を続けてきた。

 離婚全体の約9割を占める協議離婚は、夫婦が署名した届を役所に出せば成立する。署名の真偽は確認されない。

 相談は圧倒的に女性が多く、夫が自分の署名をまねて書いた離婚届を出した▽保険など他の書類とだまされて署名させられた▽離婚届だけで親権者も決まるとは知らずにサインした--などの例がある。勝手に出された離婚届を無効にするには裁判手続きが必要で、日本語に不自由な外国人には負担が重い。

 被害に遭った外国人女性には、子どもの親権者を夫に指定されて子どもと会えなくなった人や、「日本人の配偶者」としての在留資格を失い、帰国せざるを得なかった人もいるという。昨年度、無断離婚に関する相談を延べ109件受けた交流協会の吉嶋かおり相談員は「一方的に離婚された方が負担を強いられるのは理不尽で、子どもの権利も守られていない」と憤る。

 リーフレットでは勝手な届け出を防ぐ「不受理申出制度」や離婚届の内容も紹介。▽日本▽英▽中国▽韓国▽フィリピノ(フィリピン)▽タイ▽ベトナム▽インドネシア▽ロシア▽スペイン▽ポルトガル--の計11カ国語約3万枚を作成した。同じ内容と支援者向けの情報を網羅したウェブサイト(https://atoms9.wixsite.com/rikon-alert)も開設している。

 ◇他国にない制度

 二宮周平・立命館大教授(家族法)は「日本の協議離婚制度は一方的な届け出が可能という、他国にない特殊な制度。子どもが不利益を被らないよう、国が責任を持って多言語での情報提供や相談対応を進めるべきだ」と話す。【反橋希美】

 ◇紙一枚、親権も奪われ

 「たった一枚の紙が人生を変えてしまった」。西日本在住の30代の外国人女性は嘆く。

 2005年に日本人男性と結婚し、2児を出産。だが徐々に男性は働かなくなり、暴言を吐くように。女性は10年に離婚調停を申し立てたが、決められた日に男性は現れず、調停員から「離婚は成立している」と言われた。慌てて取り寄せた戸籍謄本で、男性が親権者を自分にして離婚届を出していたことが分かった。

 帰宅後、言い争いから男性は女性に激しい暴力を振るい、警察ざたに。女性はシェルターで保護されたが「勝手に離婚届を出された」との訴えは聞き入れられず、子どもたちは児童相談所で保護された後、親権者の男性側へ引き渡された。

 女性は離婚無効を確認する調停を起こしたが、夫に「調停を取り下げれば子どもに会わせる」と言われ、子どもを心配するあまり取り下げることに。だがその面会交流も1カ月前から途絶えた。

 女性は「私は絶対に離婚届にサインしていない。子どもたちが心配」と声を詰まらせる。

 【ことば】協議離婚制度

 夫婦が離婚に合意している場合、それぞれが署名、押印した離婚届を自治体に提出すると離婚が成立する制度で、離婚全体の約9割を占める。本人が提出する必要はなく、署名の真偽などは確認されない。提出に同席しなかった当事者には通知が郵送されるが日本語のみだ。一方的な届け出を防ぐには、事前に離婚届の「不受理申出書」を提出する必要がある。

7年前