東洋経済:親の離婚を子が「消化する」ための絶対条件 面会交流の現場で置き去りにされがちな視点

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07月08日 09:00東洋経済オンライン

親の離婚を子が「消化する」ための絶対条件 面会交流の現場で置き去りにされがちな視点

親の離婚を子が「消化する」ための絶対条件

(東洋経済オンライン)

離婚や別居によって、離れて暮らすことになった親と子が、直接対面してふれあう「面会交流」。前回記事では、このところ面会交流を取り巻く環境が様変わりしていることと、その背景について紹介しました。

親にとっても子にとっても重要な機会である面会交流ですが、よいことばかりでないのも現実です。面会交流の仲介や支援を行うNPO法人「ウィーズ」で起った事例をもとに、これからの課題について考えてみたいと思います。

前回記事:離婚後の「子の幸せ」を”第三者”に頼る親たち

前回も書いたとおり、離婚する夫婦の増加や少子化、核家族化の影響で「面会交流を仲介、支援してほしい」という第三者機関への依頼は急増しています。「ウィーズ」は今、人手が足りないほど大忙しです。

実際に受ける依頼の傾向は以下のようなものだそうです。
第三者が入っても、こじれ続けるケースがある

■依頼者:子どもと同居する親、別居する親が、ほぼ1:1。前者は母親からの依頼が多く、「調停が成立して、面会交流をさせなければならないが、元夫と直接やり取りしたくないから仲介してほしい」など。後者は父親からの依頼が多く、「子どもに会いたいが、DVで元妻から訴えられ離婚し、面会交流は第三者機関を通すよう裁判所の指示を受けた」など。

■面会交流の頻度や時間、過ごし方:2カ月に1回というペースが多く、1回につき1時間ほど。幼い子は、公園で遊んだり、一緒に動物園に行ったりする。小・中学生くらいになると、ファミレスでごはんを食べたり、カラオケをしたり。子どもが2、3人いる場合は一気に会うことも多い。

■料金:「ウィーズ」が受け取る「支援金」は、1時間あたり1万円といったところ。父母折半のケースが多い。

離婚後の夫婦のいざこざを回避できる手段として、いいことずくめに思える「第三者を介した面会交流」。ただ、すべてがスムーズに、問題なく行われているかというと、そうではありません。実際に「ウィーズ」が担当した事例を見ていきたいと思います。

ケース① 父(35)、母(37)、娘(5)

娘が2歳の時に離婚。娘は母に引き取られた。父が面会交流を求めて調停を起こした結果、裁判所の指示で、いわゆる「お試し」の「試行面会」を行うことになった。

父と顔を合わせたくない母に代わり、母の母、つまり娘の祖母が娘を連れてファミレスに現れた。しかしせっかくの面会も、1時間のうち55分間、祖母が父を罵倒して終了。次の面会も似たような調子で、娘は「新しいパパがいい」と発言(後日、これは母と祖母から言わされたセリフだったと判明)。試行面会は行き詰まり、裁判所の指示で、第三者機関を頼ることになった。

母親からの依頼で「ウィーズ」が仲介して面会交流を行うことに。ところが今度はウィーズの担当者が母と祖母の攻撃対象に。担当者は娘の意向を確認したうえで父に引きあわせたにも関わらず「子どもが会いたいと言っていないのに面会交流をさせるということは、あなた、向こう(父)の肩を持ってますよね? 中立なんじゃないんですか?」と、怒りをぶつけて来た。

このやりとりを聞いていた娘は、母と祖母に同調してしまい「ウィーズのお姉さんが怖い」と言い出してしまう。

ここから分かるのは、たとえ「ウィーズ」のような第三者機関が仲介したところで、関わる親や祖父母側に意義を正しく理解し協力する姿勢がなければ、本来の面会交流は実現しないということです。大人たちの感情がむき出しになり「そもそも嫌いで別れた相手に、なぜ子どもを会わせなきゃいけないの」という怒りが渦巻いてしまいます。
担当者を恫喝した父親が、2回目の面会交流で一変

一方で、以下のように、当初は当事者である親が理解してくれず、説得、説明を試みて何とか本来の面会交流にこぎつけたケースもあります。

ケース② 父(48)、 母(46)、小学生の娘と息子は母と同居

夫のモラハラで離婚。面会交流をするように裁判所の指示を受けたが、元夫と顔を合わせると、妻はじんましんが出てしまうので、「ウィーズ」に仲介の依頼が来た。

父は当初「ウィーズ」を、「元妻が選んだ機関だから、元妻の味方に違いない」として、敵意をむき出しにしてきた。子どもたちも、同居していた頃、母親に暴言を吐く父親の記憶があり「父は怖い人」という意識を持っている。

初めての面会交流はミニ遊園地で1時間。しかし現れた父親は開口いちばん、「面会交流中だから、後ろに下がっていろ!」と担当者を恫喝。しかし面会交流中は職員が付き添うのが原則。子どもたちも緊張してしまい、気まずいまま1時間が終わった。

それでも終了後、子どもたちは「疲れたけれど、お父さんとはまた会う」と言ってきた。そこで担当者は支援を続けることにし、その上で父親に「子どもは会いたくないとは言っていないが、私が付き添いできないなら、団体としてはもう面会交流の支援はできない」と申し入れると、父親は謝って来た。

「自分も初めてなので、感情をぶつけてしまって申し訳なかった。何とか続けていきたいから、お願いします」。2回目の面会交流には、父は笑顔で登場した。子どもたちも楽しそうだった。

ウィーズの光本さんは、面会交流を「親と子、一対一の関係をつくりあげていく作業」だと言います。「誰かのフィルターを通すのではなく、直接コミュニケーションとることで、子どもたちは『離れて暮らすお父さんやお母さんがどのような人なのか』を知ります。大人の都合や感情でイメージを壊したり、植え付けてしまったりしてはダメなんです」
「ウィーズ」副理事長の光本歩(みつもと・あゆみ)さん

実は、光本さん自身も離婚家庭に育ち「フィルターを通さずに親を見る」ことの大切さを、身を持って経験し、大人になったと打ち明けます。

母親が父親の名前で家族に内緒で借金をしたため、父と妹と3人で父の姉のもとへ夜逃げ。父に育てられた光本さんは、学校に行くのも大変な経済状態の中、アルバイトをしておカネを貯め、母親に会いに行きました。

借金をつくった母親だけれど、今も自分を思いながら、どこかで苦労しながら生きているはずだ……。しかし夜行バスでようやく会いに行くと、母は、彼氏同伴で楽しそう。光本さんはハッとしました。母に抱いていた幻想は消え、自分の中で折り合いがついたと言います。

「あのまま会っていなければ、母は美化されていた。実際に会うことで母の良いところも悪いところも受け入れられるようになりました。この体験を通じて、自分と母を切り離せたんです」(光本さん)
親の離婚を「消化できない」子どもに待っている苦難

面会交流をある程度順調に続けていると、子どもの内面にも変化が生まれるそうです。子どもが自分自身の目で「親はこういう人だ」と理解する過程で、親の離婚を受け入れて「消化する」のです。

一方で、面会交流が実現しなかったり、途中で途絶えてしまったりすると、子どもは同居する親のフィルターでしか別居する親を認識しないので、親の離婚を消化しきれないことがあります。こうなると、共依存を抱えたり、健康的な結婚観を持てなかったり、自分自身の離婚につながったりと、子どもの成長過程に影響を及ぼすことが少なくありません。

そして、子どもが親の離婚を消化するためには、当事者である親同士が、自分たちの離婚を消化していることが前提になります。

「戸籍上の離婚をしているだけではなく、情緒的に離婚しているかどうか。未練や怒り、悲しみを捨て『すべて終わったことだ』と消化している両親のもとでは、元夫婦間の関係と親子の関係を切り離して考えることができているため、面会交流もうまくいきます。しかし現実には、相手に執着してしまっているケースが多い。面会交流を仲介するだけでは解決できない問題も多いんです」(光本さん)

「ウィーズ」の活動を続けていると、別居する親からは「これが自分の子育てだとわかった」と感謝されたり、同居する親からも「ふつうの家族がどうであれ、自分たちにとってはこれが家族のあり方だと気付いた」と言われることもあるそうです。

ただし「ウィーズ」では、これだけで「よし」とはしていません。面会交流は子どもが「主役」。離婚をするのは両親なので、面会交流もつい「大人の視点」「大人の都合」になってしまいがちですが、本来最も大切にされるべきなのは「子どもがどう思うか」「どうすれば子どもが幸せか」という「子どもの視点」です。

たとえば、離婚そのものを巡っても、光本さんは以下のように言います。

「離婚が子どもに悪影響だという考え方はもっともです。『子どものために別れない』という夫婦もいていい。でも子どもの立場に立ってみると『自分を理由にして無理に夫婦関係を続けられるほうが苦痛』という感じ方もある。子どもにとっては、両親それぞれが幸せでいることがいちばん。それなのに両親は『この子にとっては、母が必要』『父が必要』と思い込んでいる。ときには、それが子どもにとってありがた迷惑であることにも思い至るべきです」
「両親が自分を見ていてくれている」という安心感

子どもの立場から考えたら、どうあるべきなのか

実際「離婚してくれてよかった」と漏らす子どもは多いといいます。そして同時に、離れて暮らしていても、親子はどこまで行っても親子であり、変えようのない事実でもあるのです。

面会交流は楽しいだけではありません。子どもと同居する親から見れば、わが子を、葛藤の末に別れた相手に会わせるのがイヤなのは当然です。別居する親がたった数時間、子どものいいところだけを見る面会交流は、子育てでないばかりか、コミュニケーションでさえないかもしれません。

それでも「子どもの立場から考えたら、どうあるべきなのか」という視点に立てば「形がどうであれ、両親が自分を見ていてくれ、近くからでも遠くからでも、守ってくれていること」が、安心と成長につながる、いちばん重要なことではないでしょうか。

私が主宰する営業部女子課メンバーの中にも、多様な家族を持つ人が多くいます。多様化する「家族のかたち」に翻弄されることなく、子どもが幸せになれる環境作りに、少しでも貢献できればと思います。

前回記事:離婚後の「子の幸せ」を”第三者”に頼る親たち

営業部女子課とは、主宰の太田彩子が2009年に立ち上げた、営業女子を応援するためのコミュニティです。女性営業職の活躍を拡げることで、結果男女ともに輝きながら働ける社会創造を目指しています。詳しくはウェブサイトをご覧ください。

7月23日(東京)、8月6日(大阪)にはイベントも開催予定です。

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