夫婦別姓と女性の再婚禁止期間の規定が最高裁大法廷へ

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夫婦別姓と女性の再婚禁止期間の規定が最高裁大法廷へ
坂東太郎 | 早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事
2015年2月24日 13時23分配信

●夫婦別姓で判例が出る見通し

2015年2月、民法の夫婦同姓規定で男女平等を定めた憲法に違反するとの訴えを上告されていた最高裁第三小法廷が審理を大法廷に回付すると決めました。また、法律では、離婚成立(婚姻の解消もしくは取消し)の日から300日以内に生まれた子は、前夫の子と推定され、再婚成立の日から200日を経過した後に生まれた子は、再婚した夫の子と推定されます。

女性が、離婚後すぐに再婚し、子が生まれた場合、生まれてきた子が前夫の子、再婚した夫の子、どちらの子であるにしても推定されてしまいますが、再婚禁止期間を設けることによって、前婚と後婚の推定期間が重ならないため、子の父親が分からないという事態を避けることができます。

今まで離婚後に妊娠したが、早産により離婚後300日以内に生まれた子は、前夫の子とみなされてきましたが、現夫の子であることが、医師の証明(診断書等)により明らかな場合、実父である現夫の子として出生届が受理されるようになりました。また女性のみ6か月と定められている再婚禁止期間規定もまた大法廷で審理されると決まりました。大法廷は憲法判断をしたり、判例を見直したりする場合に回付される傾向が強いので、長らく続いたこの問題に大きな変更が加えられる可能性が出てきたのです。

この2つの問題および結婚年齢と非嫡出子(婚外子)への財産分与の4点について日本は、1985年に批准(国内手続きの完了)した女性差別禁止条約に基づく委員会から何度も勧告を受けてきました。うち婚外子の問題は2013年、最高裁が「憲法違反」と結論し、ボールが回ってきた国会は民法を改正して財産分与の権利は嫡出子と同じになりました。

まず夫婦同姓規定から。根拠法は民法750条で

夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する

出典:民法750条

という条文にあります。女性の社会進出が進んで現在、平均初婚年齢は約30歳。大卒で計算すると約8年、生まれながらの姓で仕事をし続けてきたとなります。それが結婚を機に夫の姓に改めると、不利益を被るなどの主張がなされてきました。750条は決して「夫の姓を称しなさい」とは決めていないものの現実問題としてそうする女性が圧倒的に多いなか、それが嫌という声を反映したのが法制審議会(法務大臣の諮問機関)で96年に出された民法改正案要綱に示された「選択的夫婦別姓」の導入です。結婚時に夫婦が望めば各々の姓を結婚後に名乗れるという内容でした。もちろん同姓を選択しても構いません。

これに関して「親の姓が異なると子の方もバラバラになる」という批判を受けて、子の姓は統一するという案や、職業上の理由などがある場合に家庭裁判所の許可を得れば別姓を可能とする案などが浮かんでは消えていきました。「古くから社会に受け入れられている」制度(東京高等裁判所)とこれまでの裁判では違憲とされてきませんでした。
●多くの職場で認める実態も

同姓を支持する側は、そもそもそれで構わないという人が多いのと、「親子別姓」になれば日本の伝統的家族制度が崩壊しかねないという心配があります。また職場で旧姓を通称として使用できる環境が整ってきて公務員から民間まで広がっており実害は少ないという意見もあります。特に研究職は過去の研究や論文にクレジットされている旧姓との連動性が重要で、多くの職場がそれを認めているという実態も存在します。

それに対して夫婦同姓しか認めない国は日本ぐらいだという意見もあります。例えばお隣の韓国や中国は別姓です。いやそれは戦後日本が否定した「家」制度の残存に過ぎず、見習えというのは歴史の歯車を逆回転させると反論があり、ならば反対派がいう伝統的家族制度とやらの墨守こそ時代遅れだと再反論が……と延々と議論が続いている状態です。

少子化問題から別姓を取り入れるべきだとの意見もあります。日本の場合、婚姻→出産の流れが大多数で、同姓強制が前提の婚姻を疎外する要素であれば除くべきとの立場もあれば、婚姻の動機に同姓は大した壁ではないという考え方もあります。婚姻とは人生において大きな契約の1つで、本来それに見合った冷静な判断が必要なはずなのに、恋愛結婚はその性質上、むしろ人生で最も舞い上がった状態でなされるでしょうから。

女性の再婚禁止期間6か月は民法733条の

女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない

出典:民法733条

で、同法772条の

1  妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する

2  婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する

出典:民法772条

という条文に密接に関連しています。問題は離婚した後に懐胎した子の親権で、300日以内だと前夫の子とみなされ、6ヶ月つまり約200日後に再婚すれば現夫の子とも前夫の子とも判断できます。日本では婚姻中は共同親権ですが離婚すると単独親権に変わります。離婚するにはするだけの事情があるわけで、200日経っても再婚せず、300日以内に生まれた子を元夫の戸籍に記されるのを恐れて無国籍になってしまうケースも報告されています。
●DNA鑑定の影響も

裁判所はこれまで「規定が合理性を欠いた過剰な制約とは言えない」(広島高等裁判所岡山支部)と合憲の判断をしてきました。ただDNA型の親子鑑定が急速に進み、民法のみなし規定は時代遅れだという改正を望む側の意見にあります。これに対してDNA型とて完璧でない上に一方が拒めば法的拘束力はないという反論や、それでもみなし規定よりよほど科学的だという再反論ありでやはり決着をみていません。
坂東太郎 早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。

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