「別れたDV夫に子どもを会わせたくない…」親権を持つママの苦しみ

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「別れたDV夫に子どもを会わせたくない…」親権を持つママの苦しみ

女子SPA! 2月9日(火)9時21分配信

「別れたDV夫に子どもを会わせたくない…」親権を持つママの苦しみ

写真はイメージです

「3組に1組が離婚する時代」とも言われ、ひとり親家庭は100万世帯を超えています。ところが、子どもが離れて暮らす親(別居親)と会えるように面会交流(※1)を行っているのは、そのうち3分の1ほど。

 前回は、我が子と会えない“別居親”のつらい現状を取材しました。

 ですが、子どもと一緒に暮らしていれば安心とも言えません。「子どものために面会交流は必要」と頭では理解できても、手放しで歓迎できない同居親も少なくないのです。

 木村百合さん(仮名・40歳)もその一人。百合さんの二人の子ども(8歳の長女、6歳の長男)は月1~2回の頻度で元夫と会っています。

◆面会交流が大切なのはわかっているけれど…

 百合さんの結婚生活は、「俺が稼いでいるんだ!」「おまえが男ならボコボコにしてる!」「子どもはおれが見る。おまえは精神病院に一生入っていろ!」などと暴言を吐く、元夫の精神的DVに耐える日々でした。

 やがて百合さんは、元夫と同じ空間にいるだけで動悸や頭痛、めまいや震えなどに襲われ、過呼吸発作も起こすようになりました。

 しかし元夫から「おまえはダメ人間」と刷り込まれていた百合さんは、「夫と離れたら生きていけない」と思い込み、子どものためにも家族を立て直そうと必死でした。夫にDVを止めてもらうよう第三者を交えて話合うため、円満調停を申し立てようと考え、DV相談を受けた弁護士のアドバイスで子どもを連れてしばらく近所の親戚宅に身を寄せました。

 ところが、百合さんが家を出ると元夫はすぐに離婚調停を申し立てました。

 離婚に関わる調停がすべて成立したのは1年半前の冬。面会交流は「第三者機関(※2)を利用する方法で月2回程度行う」ことになりました。

「元夫は、離婚成立後にむき出しの包丁や割れた食器、切り刻まれた家族写真などが入った荷物を送りつけてきたような人です。調停で私が出すことに決まった離婚届を勝手に届けてしまうなど、身勝手なところも結婚していた頃のまま。とても夫と直接、話したり、顔を合わせるなんてできませんでした」(百合さん)

 その後も元夫の理不尽な言動は続きました。面会交流が終わる時間ぎりぎりになってから子どもが切り上げにくいゲームを始めて「(百合さんのところに)帰りたくない」と言わせたり、「本当の名前は○○(夫の姓)というんだよ」と子どもに吹き込んだり。

◆新しいパートナーを「ママ」と呼ばせる夫

 なかでも百合さんが受け入れ難かったのは、元夫がパートナーの女性と、その間にできた子どもがいる自宅で面会交流を行っていることです。「お家にはママと赤ちゃんがいてね…」という子どもたちの話しから、元夫に離婚成立前からパートナーと子どもがいたことがわかったのです。子どもたちにパートナーのことを「ママ」と呼ばせたり、子どもの行事を元夫がパートナーと一緒に見に来たりする行為に、百合さんは自分の生活が脅かされる恐怖を感じたと言います。

「『元夫は子どもを取ろうとしているのではないか』との不安が募りました。日本は単独親権制度(※3)ですから、離婚した場合、どうしても子どもを『取る』『取られる』という発想になりがちです」(百合さん)。

 元夫と面会交流の内容に不信感を持ち、第三者機関や元夫と百合さんを担当するカウンセラーに訴えましたが、『子どもの面会交流が何より大切』との考えからか、百合さんの気持ちは後回しにされてしまいます。逆に「『子どもふたりを見るにはパートナーの援助が必要』という元夫の事情も理解すべき」と諭されました。

◆かたちを変えたDVの継続のよう

「私にとって面会交流は、かたちを変えたDVの継続のようです。相変わらず元夫に振り回され、『子どもとの生活を奪われないか』といつも怯えています。

 面会交流の大切さは分かっています。でも、第三者機関などで支援する人たちには、子どもと会えない親の側だけでなく、同居親の気持ちも、もう少し理解して欲しいのです。同居親が安心して子どもを送り出せるようにすることこそ、面会交流実現の近道ではないでしょうか」(百合さん)

※1 面会交流:離婚後や別居中に子どもを養育・監護していない方の親が子どもとの面会等を行うこと。会うだけでなく、写真やプレゼントなどのやりとりを行う間接交流もあります。

※2 家庭紛争の調整や非行少年の調査等に関わってきた元家庭裁判所調査官らが中心になってつくった公益社団法人家庭問題情報センター(FPIC、エフピック)ほか、離婚・別居にともなう面会交流を支援する民間の支援団体がある。

※3 離婚した夫婦に子どもがいた場合、夫婦どちらかが子どもの親権を持つという制度。先進諸国では離婚後も元夫婦双方が親権を持つ共同親権が一般的。

<TEXT/木附千晶>

【木附千晶プロフィール】

臨床心理士。IFF CIAP相談室セラピスト。子どもの権利のための国連NGO・DCI日本『子どもの権利モニター』編集長。共著書に『子どもの権利条約絵辞典』、著書『迷子のミーちゃん 地域猫と商店街再生のものがたり』

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