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面会交流:親子面会、4割実現せず 離婚・別居、調停成立でも−−日弁連調査
毎日新聞 2014年11月03日 東京朝刊
離婚や別居が原因で子どもと離れて暮らす親が、同居している親を相手に子との面会を家裁に申し立てる「面会交流」の調停で合意が成立したにもかかわらず、全く面会ができていないケースが4割超に上ることが、日本弁護士連合会の調査で分かった。合意後も面会実現は容易ではないと指摘されていたが、今回の調査で初めて裏付けられた。【伊藤一郎】
◇関係機関支援10%のみ
調査は全国の弁護士を通じ、家裁の調停を利用した当事者に今年2〜4月に実施。調停の内容に対する満足度や、合意した面会交流や養育費の支払いの実現状況などについて尋ね、296人から回答を得た。
調査結果によると、調停で合意できた人の44%が「全く面会ができていない」と回答。「合意通りの面会ができている」は24%、「合意通りではないが、ほぼ面会できている」が32%だった。
面会ができない理由は「子どもが拒否する。または子どもと同居している親から本人が拒否していると聞いている」が37%と最多。「同居する親が子どもと会わせてくれない」が31%を占めた。
面会交流できている人の方法は「当事者(夫婦や元夫婦)のみで実施」が51%、「親族の協力を得ている」が24%。「第三者機関に関与してもらっている」は10%にとどまり、関係機関の支援が進んでいない実態も分かった。
子どもと別居し、面会交流が進まない親からは「(同居親に)メールしても、返事は1週間後でさらにはぐらかされる」などの声が寄せられた。同居する親からは、「別居親が親としての責任を果たしていない」との指摘もあった。一方で面会交流が進んでいる人からは「弁護士に支援してもらっている」「子どもが小学校高学年になり、本人がやり取りしている」という例が報告された。
アンケートに携わった藤原道子弁護士(第二東京弁護士会)は「調停が終われば家裁は見守ることができない。当事者間で面会実現が困難な場合は自治体や専門家のいる団体が支援・調整できる仕組みが必要だ」と話した。
◇部屋設け「試して」東京家裁、「子の幸せ第一に」担当裁判官
離婚や面会交流の調停を担当する東京家裁の矢尾和子裁判官(53)と椎野肇次席調査官(50)が毎日新聞のインタビューに応じた。矢尾裁判官は「親同士が別れていても、面会交流で子どもは両親から自分が愛されていると感じることができる」と指摘、調停の当事者となる両親に「子の幸せを第一に考えてほしい」と話した。
2013年に全国の家裁に申し立てられた面会交流の件数は1万762件。初めて1万件を超え、この10年で倍増した。矢尾裁判官は「社会全体の関心が高まっている。イクメンと言われるように、父親が子育てに参加するようになっている点も大きい」と分析。離婚調停などの場でも面会交流について話し合いがされることがあり、面会希望者は統計よりさらに多いという。
ただ、別居や離婚した両親は感情的に対立していることも多く、面会交流の合意が難しいケースも少なくない。矢尾裁判官は「親同士が紛争になっても子の気持ちになって考えてほしい」と話し、椎野調査官も「子の健全な成長が父母のためにもなる」と語った。
東京家裁では、十数人の裁判官が調査官らと協力して面会交流調停に携わる。裁判官1人の年間の受け持ち件数は約70件。調査官は裁判官の命令で、両親の意向や子どもの心情などを調査する。
面会交流の意義を理解してもらうため、子の心情を描いた絵本を両親に読んでもらうなどの工夫も取り入れる。おもちゃやぬいぐるみを備えた裁判所内の「児童室」を使い、和やかな雰囲気で試行的に面会する取り組みも実施。椎野調査官は「具体的なイメージを持ってもらうことが、実効性と継続性のある面会交流のルール作りにつながる」と話す。【山本将克、伊藤一郎】