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親の「子供連れ去り」 ハーグ条約も効力なし 14/08/05 (11:46)
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伯国の裁判の遅さも原因
外国で暮らす夫婦が国際離婚し、両親の片方が子供を国外に連れ出した上でもう一方が住む国へ子供を返さない「子供の連れ去り」が増えている。ブラジルも例外ではなく、今年前半の6カ月間でこういったケースは26%増加した。昨年は193件だったのに対し、今年は243件の捜査願が国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)で受理されたという。3日付フォーリャ紙(ウェブ版)が報じた。
アルゼンチン人の夫のアレハンドロ・エステベさんとブラジル人の妻のイラナ・ラネスさんは、アルゼンチンで2人の子供を育てていた。しかしこの夫婦は現在、子供たちの親権を巡って争っている。
エステベさんは「妻がブラジルで休暇を過ごすと言って子供たちを連れて行ったきりアルゼンチンに戻って来なかった」と主張している。しかしイラナさんは「夫も一緒にブラジルへ来たが、リオで子供たちを置き去りにして1人で帰国してしまった」と双方の主張は食い違いを見せている。
エステベさんは子供たちと思い出すたびに涙を流すと話し、一方でイラナさんはこの件について取材を受けることに対してさえもいら立ちを露にする。
その背景には、既に11年前からブラジルの法廷で扱われている同案件について、いまだに判定が出る見通しすらないという事実がある。国際人権法廷は判決の遅延を理由にブラジルを起訴するに至った。
訴訟が行われた当時まだ4歳だった長男と、生後5カ月だった次男は共に思春期に入った。この2人が03年以降で父親に会ったのは数回だけだという。昨年12月には、最高裁判所が父親に引き合わせる決定を下したため9年ぶりの再会が実現した。ブラジルの法廷の効率の悪さと同時に、外国への子供の連れ去りに関する国際法「ハーグ条約」加盟国であるにもかかわらず、規定を守らない無責任さを象徴するかのような事例となった。
大統領府人権局で片親により連れ去られた子供たちの居場所の捜索を担当しているジョルジ・リマ氏は「毎年この種の訴訟件数は倍増している。特にヨーロッパでの不況が大きな要因となっている」と説明した。実際にブラジル側に提出された届け出の内訳はポルトガルが35件、イタリアが21件と上位2国を占め、さらに米国の19件、スペインの14件と続いている。
ハーグ条約は、連れ去られる以前に子供が住んでいた場所で裁判を行うことを明確に定めている。一方、ブラジルの法廷では子供たちが以前生活していた国へ帰ることが必ずしも望ましいとは考えない立場を取っているため、多くの裁判がブラジルで行われている。しかしその裏には、裁判システムの効率の悪さによってもう一方の親と会えないまま幼少期を過ごす子供たちが大勢いる。
2014年8月5日付