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離婚する前、「ちょっと待って」という区役所
あくまでも子ども目線で――文京区長(上)
坂之上 洋子 :経営ストラテジスト
2014年07月03日
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「政治」というと、「難しそう」「私には関係ない」「偉い人がなんとかしれくれる」と敬遠してしまいがち。しかし、今まで目を向けてこなかっただけで、当 たり前だけれど、政治と私たちの生活はつながっている。経営ストラテジストで作家、そして1児の母でもある坂之上洋子さんが、「あまり知られていないけれ ど、実はいい政策」をフィーチャーし、ビジネス目線、ママ目線、NPO目線で、素朴な疑問を明らかにしていく。
第3回目は、文京区の成澤廣修区長。
離婚届けを出す人に、子どもの代わりに話をする
坂之上:文京区役所では離婚届けを取りに来た人に対して、取り組んでいることがあると聞いたのですが。
成澤:戸籍住民課で離婚届をお渡しするとき、未成年のお子さんがいる方には、「養育費の取り決めをしましょう」という、厚労省が作ったパンフレットをお渡ししていることでしょうか。
そのとき窓口でいろいろお話を聞いて、必要な方には、養育費相談支援センターというところが作っている「親からのメッセージ」というパンフレットもお渡ししています。
坂之上:親からのメッセージ?
成澤:離婚するっていうことは、夫婦にとってもエネルギーを使うことだと思います。だけど、何よりも残された子どものストレスがものすごいですよね。
坂之上:はい……。どちらの親も、子どもにとっては親ですから。
成澤:だから、離婚してもいいけど、ちゃんと養育費のこととかを決めてから離婚してくださいね、ということをまとめたパンフレットを渡すことにしたんです。
坂之上:大事なことですよね。
成澤:それで渡すときに、「養育費について、ちゃんとお決めになりましたか?」と問いかけて、これは大事なことですって丁寧にお伝えします。場合によってはそのご家庭の状況に合った機関とか部署を紹介して、寄り添うことができるようにしています。
坂之上:そういうときは、特にひとりで悩んで孤立してる可能性も高いですからね。
成澤:それに加えて、新たな取り組みも考えているんです。まだいろいろ試行している段階なんですけど、大学の先生や弁護士のみなさんに協力してもらって、子どもにかかわる相談セクションを紹介したり、養育費や面会交流などの取り決めを促すパンフレットも作りたいとも考えています。それを説明してお渡しするというような、一歩踏み込んだ対応もこれからはしていきたいんですよ。
坂之上:もう顔もみたくない、とにかく離婚と急いでいる方々に、立ち止まって考えてもらうという意味で、大きいですね。
成澤:だってね、離婚するときに、養育費とか、何カ月に1回子どもと会っていいですよとかいうことが、ちゃんと決まっていないことで、トラブルになることが多いじゃないですか。
坂之上:はい。
成澤廣修(なりさわ・ひろのぶ)
文京区長
1966年生まれ。明治大学公共政策大学院修了。区議を4期務めた後、2007年4月に区長に初当選。(現在2期目)。2010年4月、地方自治体首長初の育児休暇を2週間取得し、話題となった。その後、「男性職員の育児休業等取得促進実施要綱」を策定するなど、職員が育休のとりやすい環境づくりを進めている。 現在、内閣府少子化危機突破タスクフォース委員、東京都子供・子育て会議委員、東京都児童福祉審議会委員。
成澤:子どもが、親権を取れなかったほうの親にも「どうしても会いたい」っていう場合もある。そういう親が子どもに会えないから、無理に会おうとして、新たなトラブルになったり、子どもの身に危険が及ぶようなことになってしまっている場合も、実際にあるわけです。そんなこと、絶対にあってはならないでしょう?
坂之上:そうですね。
成澤:だから、ちゃんと子どものことを考えて、決めることを決めてから離婚してほしい。日本では、多くの場合が協議離婚です。だったら最後の離婚届を渡すときなどに、何かしらの自治体の関与やサービスが必要であると思いませんか?
坂之上:私は米国に長く住んでいたのですが、離婚前の財産分与や子どもへの養育をどうするかって、向こうは随分厳しいです。
成澤:そうなんですよ。
坂之上:でも、役所がわざわざこういう、「うるさい、ほっといてよ」「プライバシーでしょ」みたいに感情的に嫌がられる可能性が高いことを推し進めているのは、なかなか、おせっかいな感じ、ですね(笑)。
成澤:確かにね(笑)。戸籍住民課って、ほんとうはこういうことの担当じゃないですし。
だけど離婚するときの不安は、必ずしもおカネのことだけではないですよね。それで戸籍の窓口で離婚届をもらうときに、どこにどう相談すればよいのか、生活福祉課とか、子育て支援課があるよ、と教えてあげるのは大事だと思うのです。
坂之上:担当とか部署を超えて、っていうのがなかなか難しいんですよね。
成澤:ええ。そこを部署を超えて連携して、トータルな情報提供やサービスをしていきたいのです。