http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201406/20140619_75021.html
別居・離婚 引き離された親子(中) 動きだす自治体 養育支援きめ細かく
弁護士資格を持つ能登課長は市民相談室に配属され、養育相談にも応じる=明石市役所
親の離婚や別居によって傷つく子どもをなくし、健全な成長を促そうと、独自の養育支援に乗り出す自治体が出てきた。
<両親に働き掛け>
兵庫県明石市。市民課窓口で離婚届用紙をもらうと、A4判のシート「養育に関する合意書」が一緒に付いてくる。養育費の額や支払い方法のほか、別居する親との面会頻度や場所、連絡方法など、養育費と面会交流について両親が話し合って合意した内容を細かく書き込む。
作成した市民相談室の能登啓元・課長は「当事者は離婚届にサインするだけで精いっぱいで、後になって子どものことに気付くことが多い。離婚前に養育について考えるきっかけを提供する狙いがあった」と話す。
シート配布をはじめ、子ども重視の施策を展開する泉房穂市長は、弁護士の資格を持つ。離婚裁判で子どもが大変な思いをするケースをよく見てきたといい、「子どもが泣いているのを放っておけない。子どもに最も近い自治体として、両親に働き掛けたかった」と強調する。
市は、月1回養育専門相談を開いたり、市民相談室の一角に法テラス窓口を開設したりして、今春から相談態勢の充実を図った。神戸家庭裁判所をオブザーバーに、県臨床心理士会や県弁護士会など関係機関で構成する「養育支援ネットワーク会議」も設置し、情報を共有している。
今秋には離婚後も継続して子どもの成長過程を共有できる養育手帳を配るとともに、子どもの心理や養育について両親に情報提供する「養育ガイダンス」を始める予定だ。
泉市長は言う。「泣いている子どもは明石だけでなく、全国にいる。取り組みが全国に広がらないと子どもを救うことはできない」。養育合意書は、市ホームページで公開し、自由にダウンロードできるようにした。
<権利条例を施行>
栃木県那須塩原市は4月、子どもの権利条例を施行した。条文の一つに「父母が離婚する際には面会その他の交流、子どもの監護に要する費用の分担について協議しなければならない」と明記したのが特徴だ。
担当者によると、同市は2012年度の栃木県人口動態統計で人口1000人当たりの離婚率が2.32と県内一高く、離婚によって子どもが不利益にならないような取り組みが必要と条例化した。本年度中に行動計画を作り、施策を具体化する。
<メモ/自尊心傷つく子ども>
両親の別居や離婚は、子どもの心理面に大きな影響を及ぼす。専門家によると、別居親との交流が絶たれると「自分は見捨てられた」「いてもいなくてもいい存在なんだ」と思い、自尊心が傷付き自己肯定感が揺らぐ子どもが多いという。
同居する親が別居親を非難したりすると、別居親に対してゆがんだイメージを持ち拒絶してしまう「片親疎外症候群」という症状が起きる場合もある。
子どもの情緒不安定を防ぐために、会いたいときにいつでも会える環境を双方の親がつくり、子どもと気持ちをつないでおくことが重要とされる。