産経新聞: 「刺し殺したい」ほどの元夫だが…夫婦顔を合わせず子を面会させる「支援方法」

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「刺し殺したい」ほどの元夫だが…夫婦顔を合わせず子を面会させる「支援方法」

産経新聞 5月23日(金)12時0分配信
「刺し殺したい」ほどの元夫だが…夫婦顔を合わせず子を面会させる「支援方法」

離婚後、離れて暮らす親と子供がひとときを過ごす面会交流用の部屋=大阪市中央区の大阪ファミリー相談室(写真:産経新聞)

 関西に住む倉田美紀さん(47)=仮名=は昨年、離婚した。倉田さんにとっては2度目の結婚だったが、最初の結婚で生まれた子供への夫のDV(ドメスティックバイオレンス)が原因だった。

 倉田さんにとっては「刺し殺したい」ほどの相手。だが、月に1度、公園やファストフード店などで会っている。目的は、その夫との間に生まれた8歳の子供を会わせるためだ。子供は「お父さん子」だったため、離婚後、父に会えないと知って情緒不安定になり、学校にも行かなくなった。

精神的に安定

 面会交流の場では、倉田さんは夫と子供の会話に細心の注意を払う。「転居先の住所や学校などの情報が何かの拍子に漏れてしまわないか心配で」。会話を止めることもある。

 それでも、面会交流を定期的に行うようになって子供は精神的に安定した。「お父さんとは暮らせないけど会える。私のお父さんには変わりない」と話すようになった。

 平成24年4月、離婚の際、「養育費の分担」と共に親子の「面会交流」を協議するよう明記した改正民法が施行された。ただ、離婚の状況によっては、自力で面会交流は難しい場合もある。そのようなケースでは支援団体の協力を得る方法もある。

 家庭裁判所の調査官や調停員の経験者らでつくる公益社団法人「家庭問題情報センター(エフピック)」は全国10カ所に相談所を持つ。大阪市中央区の大阪ファミリー相談室では、おもちゃや絵本などをそろえたプレールームがあり、普段は別々に暮らす親子が絵本を読んだり、ゲームをしたりしながら過ごす。夫婦が顔を合わせなくて済むように同センターの援助者が親から子供を預かって、もう一方の親に引き合わせたり、面会交流の場に付き添ったりする場合もある。

 同相談室の齊藤素子事務長は「初めは行儀よく過ごしていた子が、別居する親に慣れるにつれ、寝そべったり、ぞんざいな口を利いたりするようになります」。回数を重ねるほど、ほとんどの子供が生き生きとした表情になるという。一方で、面会交流でははしゃいだにもかかわらず、同居する親に「ちっとも面白くなかった」と気を使う子供もいる。

子供を第一に

 年間500回ほどの面会交流を行っており、週末には5つあるプレールームは満室状態になる。齊藤事務長は「離婚を考えたとき、片方の親と離れ、環境が劇的に変化する子供のことを第一に考え、親とどう交流を持つのか考えてほしい」と話す。

 最近では離婚する前に面会交流について相談する人も少なくない。同相談室には「夫と会わずに子供を面会させられますか」「どんな部屋ですか」といった問い合わせがあり、見学に来る人もいるという。

 倉田さんの場合、面会交流を行っている知人の親子がおり、その様子を聞いていてよく知っていた。

 「面会交流のやり方や大切さを事前に知っていたから、葛藤のある相手と面会交流が持てていると思います。子供の傷は癒えてはいないけど、面会交流の度に親の離婚を受け入れられるようになっています」

 平成23年度の全国母子世帯調査によると、離婚した母子世帯のうち、面会交流についての取り決めをしていたのは23・4%で、実際に交流しているのは27・7%という低水準だった。面会交流を求めて家庭裁判所に調停を申し立てる件数は年々増えており、24年度に新規で受理した調停は9945件で、10年前の約3倍に増加している。(横山由紀子が担当しました)

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