「離婚後も子供に会いたい」…全国ネットワーク設立 「共同親権」新設求める
離婚後に子供と離れ、児童虐待など特別な事情がないにもかかわらず、
面会もままならない親らが子供との再会を求め、運動を続けている。
日本では離婚後に親権が認められるのは両親のどちらか一方で、
親権を持つ親が拒否すれば会うことは難しい。
こうした実情を変えようと、共同親権の新設などを目指し、
有志による全国組織「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(親子ネット、東京都国立市)が昨夏、設立。
超党派の国会議員による議員連盟結成の動きもある。(森本昌彦)
「親権がないので、私はどこに行っても親として扱われません。
子供が生きているか、死んでいるかも分からない状況なんです」
離婚や別居のため、子供と離れて暮らし、
面会することも困難な状況にある親が集まり設立した親子ネットが2月17日に開いた勉強会。
都内の会社役員、望月蓮さん(42)=仮名=は訴えた。
平成9年に結婚した望月さんは2人の男児に恵まれたが、
次第に妻と不仲になり、17年4月に妻が子供を連れて自宅を出ていった。
翌月、妻から離婚調停を申し立てられ、18年9月に離婚が成立。
調停では、子供とは月2回面会するとの条件が付けられたという。
ところが、その後、元妻に別の男性との再婚話が持ち上がると、面会が困難になった。
元妻からは「子供が習い事などで忙しくて会わせられない」などと理由を告げられたといい、
20年の夏休みを最後に子供との面会はかなっていない。
離婚後に子供に面会した際、長男が自分のつめをはがす自傷行為に走ったりするのを知るなど、
子供の健康状態に不安を感じた望月さん。
子供が通う学校に様子を尋ねたが、「親権がないから」との理由で回答を拒否されたという。
日本の民法では、離婚後に親権を持つことができるのは、父か母のどちらか一方だけ。
家庭裁判所の調停で、子供と定期的に面会することが決められても、強制力はない。
このため、子供と一緒に暮らす親が拒否すれば、
離れて暮らすもう一方の親は子供と会うことが難しくなる。
望月さんのような事情を抱える親が集まって、20年7月に立ち上げたのが親子ネットだ。
会員は約180人に上り、国などへの働きかけや勉強会を開くなどして啓発活動を進めている。
代表を務める宗像(むなかた)充さん(33)は「(元妻、元夫に対して)よほどひどいことをしたから、
子供に会えないのだろうと思う人は多いかもしれないが、
(私たちにとっては)会えない原因は制度にあることを知ってもらいたい」と話し、共同親権の創設などを求めている。
当事者だけでなく、国会議員の中には、超党派による議員連盟を作ろうとする動きもある。
運動の趣旨に賛同する下村博文衆院議員(自民党)は
「できるだけ早く議連を作って、まず親子面会が実現するための社会的整備を進め、
その後、共同親権について考えていきたい」と話す。
臨床心理士として離婚後の家族を見続けている
神戸親和女子大学教授の棚瀬一代さん(65)=臨床心理学=は
「親権のない親とも面会交流を頻繁にしている子供のほうが明らかに新生活への適応能力が高い」と指摘。
米国では1970年代に離婚後の子供の心理状態について研究が進み、
離婚後も両親と頻繁に継続して交流するほうが子供に好影響を与えるとの結果が出ているという。
先進国の多くでは、共同親権や共同監護を認めている。
親の中には離婚後に子供に関心を失う人もおり、
子供が「見捨てられた」という気持ちになるケースもあるという。
棚瀬さんは「両親としての責任感を持たせるため、
面会交流を法で規定することが必要ではないか」としている。