NICHIGO PRESS:ハーグ条約のイロハと法律相談(2)

http://nichigopress.jp/interview/column_spe/59265/

ハーグ条約のイロハと法律相談(2)
2014年5月2日

オーストラリア在住日本人が多く抱く法律関連の疑問について、法律の専門家3人に話を伺った。

ハーグ条約とは?  |  法律相談Q&A
Q オーストラリアで離婚する場合、必ず共同親権になるのでしょうか?

A 2006年7月1日、家族法改正で初めて豪州に共同親権の制度が導入され、ほとんどのケースが共同親権(Equal Shared Parental Responsibility)となっています。

岡本大地
QLD工科大学法学部大学院卒、GCで家族法を中心に8年間活動後、2011年に独立。豪州での国際離婚ケースや複雑な家族法・相続法に関する案件に積極的に対応。昨年、リトルズ法律事務所と共同でハーグ条約セミナーを開催。

 離婚に伴う子どもの養育に関する取り決め(Parenting Plan)や裁判所命令(Parenting Order)が法的に決まるのは、別居が基本的な条件となり(離婚の必要はない)、また離婚する際には適当な子どもの養育パターンが決まっている限り“単独親権者”を決める必要もないとされています。
 共同親権では、子どもの時間を半分ずつに分配するように強制するのではなく、子どもに関する長期的で重要な判断(例:教育、健康、宗教、居住地の選択など)において、父母2人が相談して決めることになります。
 共同親権に関しての規定は家族法(Family Law Act 1975)第61DA条で定められており、法律上の推定として、子の親権は父母双方が共同で保有することにより子どもの最善の利益となるとしています。
 ただ、①子の親、または親と同居している者が子に対して、または家族として養育されている子に対して虐待やが発生している場合、②家庭内暴力が発生してる場合には、対象外となり、単独親権になります。単独親権の場合は、親権者が長期的で重要な判断を先方に相談せず、一方的に決めることができます。
 共同親権の場合、子どもとの面会時間は半々になるとも限りません。家族法第65DAA条によると、①子どもと過ごす時間が半々(Equal Time)であることが子の最善の利益となり、合理的に実行可能である場合は、両者平等の時間を設けることとなり、②そのような条件を満たしていない場合でも充実した重要な時間(Substantial and Significant Time)が子の最善の利益となり、合理的に実行可能な場合は、平日・週末・休日や、子どもの日常の日課、重要な出来事やイベントへの参加といったパターンとなります。しかし、子どもとの時間が半々となるケースは比較的少ないのが現実です。

岡本法律事務所 Okamoto Lawyers
■住所:Suite 23, Ashmore Commercial Centre, 207 Currumburra Rd., Ashmore QLD ■Tel:(07)5539-2245 ■Fax: (07)5539-2242 ■Web: www.okamotolawyers.com.au ■営業日時:月~金8:30AM~5PM(週末は完全予約制)■主な法律業務の分野:家族法、相続法、訴訟・紛争解決

Q 子どもの出国を差し止める方法があると聞きました。どのようなものですか。

A 連れ去られる危険性のある子と、連れ去ろうとしている親の両パスポートの没収を当該裁判所が命令、また、子の名を豪連邦警察の監視リストに登録する方法があります。

占部英高
スペシャル・カウンセル、オーストラリア法弁護士。モナッシュ大学法学部卒、法務博士(Juris Doctor)課程修了。「丁寧で親身な対応」をモットーに、企業、事業主、個人向けに民商事各種法務を遂行しいる。

 子の養育命令に関する裁判中もしくは判決後に、一方の親が他方の親の合意や裁判所の許可なく子を国外に連れ去ることは禁止されています。実際、合意や許可なく連れ去る場合や、合意した期間内に子が連れ去りの直前まで生活していた国に返されない場合、連れ去った親は最長で3年の禁固刑に処されます。さらに、管轄裁判所は、子が連れ去られていなくてもその危険性があれば、子のパスポートと連れ去ろうとしている親のパスポートの没収を命ずることができます。残された親は、中央当局に子の返還を申し立てることができ、子の名を豪連邦警察の監視リスト(Family Law Watchlist)に登録し出国を阻止できます。この場合、管轄裁判所から裁判所命令を取得し、豪連邦警察に提出します。
 命令を下すに当たり当該裁判所は、渡航期間や渡航理由、子の最善の利益、連れ去られる可能性などあらゆる状況を考慮します。日本がハーグ条約を批准したことで渡航許可が比較的取得しやすくなるとの見解がありますが、当該裁判所は渡航の許可にあたり渡航を希望する親に保証金の支払いを命じることがあり、こうした条件が渡航の足枷となり得ます。保証金は子が帰国すると返金されます。
 パスポート発給当局「Australian Passport Agency」はパスポートを発給しない子の名簿を管理しており、子のパスポートが発給される前であれば名簿登録も可能です。一方、子の一時的な海外渡航を希望し、他方の親が合理的な理由なしにそれを反対する場合、他方の親の合意なしによる渡航許可を管轄裁判所に申し立てることができます。渡航許可は渡航の7営業日前までに豪連邦警察に提出し、監視リストから子の名の取り外しを求めることが推奨されています。

リンカーンズ総合法律事務所 Lincolns Lawyers & Consultants
■住所:Sydney Office, Level 13, Citi Group Bldg., 2 Park St., Sydney NSW ■Tel: (02)9004-7996 ■Email: urabe@lincolnslawyers.com.au ■Web: www.lincolnslawyers.com.au ■主な法律業務の分野:会社法、雇用法、不動産法、建設法、契約法、商取引法、消費者法、知的財産権法、家族法、訴訟・紛争解決

7年前