HUFF POST:宇多田ヒカルさんがイタリア人男性と再婚へ 「国際結婚」で注意すべきことは?

http://www.huffingtonpost.jp/2014/03/19/utada-hikaru-marriage-hague-convention_n_4991217.html

宇多田ヒカルさんがイタリア人男性と再婚へ 「国際結婚」で注意すべきことは?

歌手の宇多田ヒカルさん(31)が2月、イタリア人男性(23)との再婚を発表した。宇多田さんのホームページによると、男性は英ロンドンのホテルでバーテンダーとして働いており、「根が誠実で多くの友人に愛される好青年」だという。

同時に、昨年亡くなった母、藤圭子さんのエピソードにも触れている。「母との最後の会話の中で彼の話をした際、『こんなに嬉しそうな母の声を聴くのは何年ぶりだろう』と思うほど喜んでくれていた」「きっと母も応援してくれてると信じて予定通りに結婚を進めることにしました」と、胸中を綴っている。

今回の宇多田さんの発表をうけて、「国際結婚したい」と願う女性も増えるかもしれない。このような国際結婚の場合、新郎と新婦、どちらの国に「婚姻届」を提出するのだろうか。また、国際結婚をする場合に注意すべきことはあるのだろうか。島野由夏里弁護士に聞いた。

●夫婦関係が悪くなったら、国際結婚は大変

まず、結婚といえば婚姻届だ。国際結婚の場合、届出をどちらの国ですればいいのか?

「婚姻届は、いずれの国に提出することもできます。外国で婚姻の届けをした場合、その婚姻に関する証書を日本の役所に提出することになります。この場合、戸籍には、「【婚姻の方式】○○国の方式」と記載されます

以前、浜崎あゆみさんが日本では未婚となっているというニュースがありましたが、これは、アメリカ合衆国の方式で婚姻した後、日本での届け出をしていなかったためと思われます」

という。2012年に話題となった浜崎あゆみさんの「未婚騒動」には、このような法律的な背景もあったのだ。

それで夫婦仲がうまく行けば、何も問題はないが、

「国際結婚において注意しなくてはならないのは、夫婦の関係が悪化してからのことです」

と島野弁護士は指摘する。

「最終的に離婚ということになった場合、配偶者の国の制度によっては、簡単に離婚ができない場合があります。欧米では、協議離婚を認めず、離婚に際して裁判所の関与を必要とする国がほとんどです」

●離婚成立前に子どもを日本に連れ帰ると・・・

そして、子どもがいるときは、さらに法律上やっかいな問題が起きる。

「一番怖いのは、お子さんを連れて日本の実家に帰る場面です。

たとえば、日本人の女性Aさんがイギリス人の男性Bさんと結婚して、ロンドンに住んでいた場合を考えてみましょう。そこでお子さんができたけれども、Bさんは女癖が悪く、しだいに夫婦仲が悪化して、Aさんは、離婚して日本に帰りたいと希望しています」

妻が、子どもを連れて実家に帰る。これは日本人同士の場合は、普通に見られる行動だ。

「日本では、そのまま離婚の手続に入ると、その時点でお子さんを『監護』している、つまり、実際に育児をしている親である妻が、その実績を買われて継続して『監護』する権利を得る場合が多いです」

だが、これが国際結婚では大問題になることもある。イギリスの場合だと、片親が子を他国に連れ去ることは、それ自体が違法行為となる。

「子どもを連れてロンドンから日本に帰ってきた妻のAさんは、夫のBさんが警察に通報すると、指名手配されてしまう可能性があります。

その後、Bさんがイングランドの裁判所に、離婚訴訟の提起をしたとしましょう。Aさんは、訴訟に出頭するためロンドンに行く。イギリス国内では、Aさんは違法行為を行っていることになっていますから、逮捕されてしまいます。

ですから、Aさんは訴訟には出頭できません。すると、イングランド裁判所で、とても不利な判断がされてしまう可能性が高いのです」

これではおちおち、実家にも帰れないことになりそうだ。

「夫の浮気が原因で、妻が怒って子どもを連れて実家に帰り、その後、離婚となる。その流れのどこに妻の違法行為があるのかと、疑問に思う日本人も多いと思いますが、この辺りの感覚の違いが、国際結婚の際の注意点です」

これまでも、国際離婚の場面においては、この事例のように紛争化したケースがたくさんあったという。

「子どもの『監護』に関する決定は、子どもがいま住んでいる国の裁判所が手続を行うことになっています。子どもを連れてきた日本人妻は、それまでの居住地では犯罪者扱いなので、その国には立ち入れませんが、日本にとどまって子どもと暮らすことはできました」

しかしこれからは、それも難しくなるという。

●ハーグ条約の発効で、さらに厳しい事態に

「日本もとうとうハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)を批准し、4月1日から効力を発することとなりました。

この条約によると、Aさん(日本人妻)のケースで、Bさん(イギリス人夫)がハーグ条約に基づく子の返還手続を申し立てた場合、子の連れ去りが違法であるとして、お子さんをロンドンのBさんのところに戻せという決定が出る可能性があります。

また、この決定がなされるまで(または合理的な期間経過まで)、日本の裁判所で、Aさんを正式な監護権者とする決定はできなくなります」

というから、さらに厳しい事態になる。

「ハーグ条約の効力と、今までの日本の家庭裁判所の考え方の整合性については、今後の様子を見ていかなくてはならないところですが、いずれにしても、日本人の女性が外国人男性と結婚して、外国に住む場合は、注意です。国際結婚をする場合は、できる限り、日本で婚姻生活を送ることをお勧めします」

と島野弁護士は言う。一見華やかにみえる国際結婚だが、もしも破綻してしまうと、法制度の違いから、深刻な事態に陥ることも多いようだ。その点は、覚悟したほうがいいのだろう。

(弁護士ドットコム トピックス)

10年前