「離婚後の共同養育」 (リンダ・ニールセン氏の総説)
2014/2/14(金) 午後 8:48
リンダ・ニールセン氏の総説「離婚後の共同養育」を読みました。
http://blogs.yahoo.co.jp/horio_blog/54488843.html
「離婚後の共同養育:それぞれの家で行う養育についての研究の総説 Shared parenting After Divorce: A Review of Shared Residential Parenting Research」リンダ・ニールセン Linda Nielsen、Journal of Divorce & Remarriage、52:8, 586-609、18 Nov 2011
著者は、北カロライナ州のWake Forest大学の教育学部教授です。これは、共同養育についての実証的な論文の総説です。この論文は、全文が無料で公開されています。
この論文では、共同養育は「子どもが時間の35%以上をそれぞれの親と過ごすこと」と定義されています。<親が離れて暮らしていると、子どもが35%以上を一緒に過ごすことは、なかなか困難です。以下、カッコ内の緑字は、私の意見です>。
「比較的最近まで、子どもの時間の3分の1以上をそれぞれの親と過ごすのは、親が離婚した子どものわずか5~7%に過ぎなかった。しかし最近ではウィスコンシン州、アリゾナ州、ワシントン州などで、全体の30~50%を占めるようになっている。同じように、オーストラリア、オランダ、デンマーク、スウェーデンでは、共同養育の子どもは、全体の18~20%を占めるようになっている」。
「(離婚後の子どもの養育について)調査を受けた人々の多くは、子どもはそれぞれの親と平等の時間を過ごすべきだと答えている。2004年のマサチューセッツ州の53万人の投票では、85%の人が離婚後に子どもはそれぞれの親と平等に過ごすべきだと答えた」。
著者は、共同養育と単独養育を比較した21編の論文を詳しく検討しました。21編の論文のうち、「共同養育が単独養育よりも良い結果をもたらす」と結論した論文は18編、「一長一短」と結論した論文が2編、「差が無い」と結論した論文が1編でした。
「父親が子どもの日常生活の広い範囲に積極的に関与して、放任ではなく、専制でもなく、親としての威厳を保って子どもに多くを教える場合に、親が離婚した子どもは、最も多くの利益を受ける。子どもは日々の習慣や儀式を、父親と一緒に行う必要がある。例えば、一緒に料理をする、使い走りをする、学校の準備をする、宿題をする、買い物をする、雑用をする、一緒にぼんやり過ごすなどである」。<子どもが、発達して、一人前の大人となるには、多くの情報を必要としています。教科書に書いてないことは、親を見て身に付けるのです>。
「共同養育をする親の特徴は、子どもの生活に父親が関与することを受け入れていることと、父親の仕事が時間的にフレキシブルであって、共同養育の遂行が可能であることである」。<当然の必要条件です>。
「共同養育を行う親は、そうでない親と比較して、収入がより多く、より長い教育を受けているが、元夫婦の人間関係の質や、争いのレベルは、全体として、離婚したその他のカップルと比較して、特に良いというわけではない」。
「息子の方が、娘より、共同養育となる割合が高い」。<親は、同性の子どもを、理解しやすいのでしょう>。
「元夫婦の間に暴力を伴わない争いがあったとしても、そのことを、離婚後に子どもがそれぞれの親と過ごす時間を減らす理由として使ってはならない。そしてこのことは、専門家の間の一般的な合意になっている」と著者は述べています。そしてその根拠として、そのように主張する論文を11編挙げています。
「共同養育を行う親は、近年増加している。それは、父親が以前よりも子どもに関心を持つようになったからではなく、また、離婚後の両親の関係が以前よりも改善されたからではない。親自身と家庭裁判所関係者が、共同養育の利点を理解するようになったからである」。
著者は、共同養育と単独養育について、実際のデータで細部を比較した計13編の論文を検討しました。計13編の論文のうち、子どもの学業成績を比較した論文は3編あり、共同養育が優れるとした論文が2編、変わらないとした論文が1編でした。子どもの精神的な側面を比較した論文は11編あり、共同養育が優れるとした論文が9編、同じとした論文が2編でした。子どもの行動を比較した論文は、11編あり、共同養育が優れるとした論文が9編、同じとした論文が1編、共同養育ではストレスが多いとした論文が1編ありました。
「共同養育の子どもは、両方の親と、精神的に近い関係にある」。<母親とも親しくなれるのです。脅かされていないから。大切な父親との関係を尊重してくれるから>。
「共同養育の子どもは、週に1回以上父親に面会する子どもと比較して、経済的に恵まれている」。<その夫婦は、子どもの最も重要な事について、科学の知識を応用できるのです。他の社会活動についても、それができるのでしょう>。
「最も不幸な子どもは、共同養育の子どもではなく、母親と暮らしてまれに父親と会う子どもである」。<子どもは、最愛の親と引き離されて、脅かされて、服従させられるのです。そして、子どもは現在を生き延びようとするのです>。
「子どもが父親と過ごす日の数は、子どもと父親との親子関係の質に、高度に相関する」。<この場合、質の改善には、とりあえず量が必要です>。
「ストレスがあり不幸な父親は、子どもとの有意義な関係を促進させるような形で、子どもと交流することは少ない」。<幸福心理学を実践するという手があります>。