読売新聞:「まあまあ」やめます…民事調停もっと利用して

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「まあまあ」やめます…民事調停もっと利用して
読売新聞2013年12月30日(月)17:46
 訴訟に比べてなじみの薄い民事調停をもっと利用してもらおうと、裁判所が改善に取り組んでいる。

 当事者同士が話し合って妥協点を探る従来の方法をやめ、裁判所が解決案を提示するなど「調整役」を積極的に果たすもので、現在5割程度の調停成立率のアップにもつなげる考えだ。

 訴訟の約56万件に対し、調停は約5万件――。全国の裁判所に昨年申し立てられた訴訟と調停の件数には、大きな開きがある。最高裁関係者は「調停でも解決できる問題が、訴訟に流れている」と分析する。

 訴訟に比べて費用が半分程度で済み、非公開の場で短期間で解決を目指せるなど調停のメリットは多い。それなのに、紛争解決の手段として選ばれないのは、なぜなのか。あるベテラン弁護士は「裁判所が主体的に関与しないため話し合いが進まず、なかなか解決まで至らないケースがあるからだ」と指摘する。

 調停委員が「まあまあ、この辺で収めましょう」とまとめる「まあまあ調停」や、当事者の主張を単純に2で割る「折半調停」など、合理的な理由が示されないまま強引に決着してしまうことがあることも、不人気の理由の一つとされる。

 こうした運用を改めるため、東京、大阪両簡裁の裁判官がプロジェクトチーム(PT)を結成。2011年4月から、話し合いを当事者任せにせず、裁判官と調停委員が前面に出て調整する試みを始めた。

 例えば、借家の修繕費を借り主側が負担すべきかどうかが争われた大阪簡裁のケース。裁判官らが実際の建物の写真などを調べた上で、「部屋を普通に使用して傷む程度を超えている」との見解を示したところ、借り主側の負担を増やすことで、合意できたという。

 昨年3月までの約1年間にPTが解決案を提示した189件のうち、調停が成立したのは9割近い163件。この結果を受け、札幌や福岡など7簡裁でも同様の取り組みを行っている。

 最高裁の司法研修所は取り組みの成果を検証し、「積極的に解決策を提示することは、調停の紛争解決能力の向上につながる。全国の家裁でも実践すべきだ」とする研究報告書をこのほど取りまとめた。最高裁は今後の調停運営の参考にしてもらうため、報告書を各簡裁に配布している。

 最高裁民事局の担当者は「紛争の内容も複雑化している。裁判所が合理的な解決案を示すことで、調停を利用しやすい制度にしたい」と話している。

 ◆民事調停=裁判外での紛争解決手続き(ADR)の一種。1922年施行の「借地借家調停法」で導入された。金銭の貸し借りや近隣トラブルなどの問題について、簡裁の裁判官1人と、弁護士や建築士など民間から選ばれた2人以上の調停委員で作る調停委員会が、当事者の意見を聞きながら解決を促す。調停での合意は、裁判上の和解と同じ効果があり、強制執行も可能となる。

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