産経:野球の絆、子煩悩な父の凶行 校庭で次男道連れ自殺の「なぜ」

野球の絆、子煩悩な父の凶行 校庭で次男道連れ自殺の「なぜ」

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親子をめぐる経過
 野球を教えてくれた子煩悩な父親はなぜ、わが子を巻き添えにしたのか-。

 東京都文京区の区立汐見小学校で23日、父親(49)が同校3年の次男(9)を道連れに灯油をかぶり、火を付けた事件は、父母の離婚が成立する直前の悲劇だった。3年前から別居していたが、父親は次男を取り戻すことに執着しており、復縁がかなわないことを悲観したのが直接の引き金になったとみられる。

 父親は23日午前10時半ごろ、少年野球の試合が行われていた同校校庭に入り、次男の手を引っ張って連れ出した。間もなく校舎脇で次男に灯油をかけ、自分でも灯油をかぶった後、火を付けた。父親は同日夜に死亡、次男は意識不明の重体の状態が続いている。

 野球こそが、父親と次男を結びつけていたものだった。父親はかつて次男のチームの監督を務めたことがあり、最近もたびたび練習に顔を出していたという。今年初めごろにも、父親のマンション近くの駐車場で、父親と次男がキャッチボールをしているのが住民に目撃されていた。

 一家は平成18年ごろ、同校近くのマンションに入居したが、22年9月には父親だけを残し、母親、長男、次男の3人は台東区内の母親の実家に引っ越した。父母は離婚調停中で、次男は越境通学で同校に通い続けていたという。

 父親は昨年5月に実家に姿を見せ、次男を連れて行こうとした。母親が止めに入ったところ、母親を蹴り飛ばしたという。母親は上野署を訪れ、「父親からのドメスティックバイオレンス(DV)が原因で別居している」と相談した。

 上野署は次男の通学時のパトロールなどを強化したが、目立ったトラブルはなく、母親側の申し出で昨年12月に対応を打ち切った。今年7月に学校側が母親と面談した際も「離婚調停中で近く別れる」という話は出たが、DVなどの相談はなかったという。

 一方で、復縁が絶望的になった父親には異変が見られた。約2週間前の12月中旬、次男は学校の友人にこう打ち明けていた。「いつも優しいお父さんの様子が最近、おかしい。『俺が死んだらお母さんを守ってくれ』なんて言われた」

 現場には灯油入りの缶のほか、ライター、手錠などが落ちていた。マンションには「次男に会いに行く」と書かれた遺書も残されており、駒込署は父親が明確な意思を持って無理心中を図ったとみて、殺人未遂容疑で容疑者死亡のまま書類送検する方針。

 悲劇は防げなかったのか。DV問題に詳しい宮崎晃弁護士は「DVが認められる家庭では、子供にも危害が及ぶという最悪の事態を想定し、保護施設を利用するなどして距離を置くことも必要」と指摘する。

 今回の事件では次男が別居後も同じ小学校に通い、父親と接触する機会があったことから、「父親に危険性があるかないか、早い段階で専門家に意見を求めるべきだった」と訴える。

11年前