参議院議員浜田和幸質問主意書 

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/185/meisai/m185018.htm

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質問第一八号

 子どもの連れ去り・引き離し問題に関する質問主意書

 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成二十五年十月二十一日

浜 田 和 幸   

       参議院議長 山 崎 正 昭 殿

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   子どもの連れ去り・引き離し問題に関する質問主意書

 離婚後の子の監護に関する事項の定め等について規定する民法第七百六十六条が一昨年改正され、昨年施行された。この改正法案審議中、法務大臣から「不当な子の連れ去りや面会交流の正当な理由のない拒否は、監護者指定時の重要な要素になる」、「継続性の原則があるから連れ去った方が得だということがあってはならない」、「寛容性の原則は、子の利益を考える上での一つの判断基準」、「父母の間に高いストレスがある場合でも面会交流を子の利益のために実現の努力をしようというのが家裁における努力の方向、そのことをこの法案は示している」などの国会答弁が行われたところである。
 そして、平成二十三年八月三日には、最高裁判所事務総局家庭局第一課長から高等裁判所事務局長及び家庭裁判所事務局長宛てに当該法改正に関する国会審議の会議録を裁判官、裁判所書記官、家庭裁判所調査官等の関係職員に回覧するなどして、その趣旨等を周知するよう通知が出されている。
 しかし、実際の裁判所での「子供の連れ去り、引き離し問題」の審判・判決では、立法趣旨と著しく異なる判断がなされてきた。例えば、裁判官である若林辰繁氏は、審判書において「(今回の法改正は)従前から(裁判実務で)認められていることに明文が一部追い着いたもの」、「今回の法改正を大きくとりあげて「これまでとは違う」と強調することは相当とはいえない」と主張をし、「継続性の原則」を利用して子の連れ去り・引き離しを容認した上に、子を連れ去られた父親を何ら客観的証拠もなくDVがあったと事実認定したため、数多くの批判的報道がなされる事態となった。
 この事態は、国会でも取り上げられ、平成二十四年六月十九日の参議院法務委員会で最高裁長官代理者からは、「ご指摘のような報道等がなされているということは承知している。法改正等行われた場合、(裁判官が)新たな定められた法律の趣旨にのっとった法の解釈、適用あるいは実務の運用というのがなされるべきことはご指摘のとおり」と答弁する事態に至った。
 しかしながら、本年十月十日、若林氏の異動後に赴任した吉田健司氏は、審判書において、「継続性の原則」を再び利用する一方、「寛容性の原則」は「理由がない」とし、子を連れ去り現在も子の引き離しを行っている母親を監護者とすることが相当であるとした。このような経緯を踏まえ、以下質問する。

一 改正された民法第七百六十六条の施行後一年半以上経過した現在も、吉田氏に限らず多くの裁判官が、民法改正の立法趣旨に従おうとせず、「継続性の原則」を利用し、子を連れ去ったり、一方の親を家から追い出し「子の身柄を確保した親」を監護者・親権者とする決定をしている。
 改正された民法第七百六十六条が施行された後の監護権・親権に係る全審判及び裁判のうち、子の身柄を確保している親(先に子を連れ去った親から取り戻した親を除く)に監護権・親権を与える決定をした件数につき、政府が把握している件数を明らかにされたい。また、その中で継続性の原則を根拠としていないものはあるか。

二 前記一に関連し、裁判官らがかかる運用を改めないため、一方の親に奪われた子を取り戻そうと自力救済を図り逮捕される親や親権・監護権を奪われる審判・判決を受け自殺に追い込まれる親が数多くいると言われるが、過去十年間で、子を取り戻そうとした親が逮捕された事件、また、親権・監護権をめぐる裁判・調停に関連し親が自殺に追い込まれた事件につき、政府が把握している件数を明らかにされたい。

三 裁判官らが利用する「継続性の原則」は、法律のどこに根拠があるのか具体的に明示されたい。また、「継続性の原則」の適用は、子の連れ去り・引き離しを招くことから民法第七百六十六条の「子の利益」を害すると解釈するがこれは誤りか、政府の見解を示されたい。誤りである場合には、その理由を具体的に示されたい。

四 「寛容性の原則」は、子が両方の親に定期的に会うことを担保するものであり、子どもの権利条約第九条に規定する「父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利」を保障するものであって、民法第七百六十六条に規定する「子の利益」に資すると解釈するがこれは誤りか、政府の見解を示されたい。
 また、改正された民法第七百六十六条の立法趣旨に従い、「子の利益」を最優先に考慮して監護者を決定する場合、特段の事情がない限り、「寛容性の原則」が「継続性の原則」に優先して利用されるべきと解釈するがこのような法解釈は誤りか、政府の見解を示されたい。

五 本年三月五日の衆議院本会議において安倍首相は「民法第七百六十六条の改正趣旨を広く一般に周知徹底していく」旨答弁しているが、裁判官らには具体的にどのように周知徹底したのか、政府の取組を示されたい。

六 裁判官らは、法の立法趣旨に反する適用をするのみならず、不当な事実認定を行っているとの批判がある。すなわち、継続性の原則を利用し、子を先に連れ去った親を監護権者・親権者とする自らの結論を正当化するため、審判書等において、子を連れ去られた側の親に問題があるかのような記述をし、甚だしい場合には何ら根拠もなくDVなどを認定する一方で、子を連れ去った親に問題がある場合でさえも、一切記述しない審判・判決が広く行われていると報道されている。
 裁判官のかかる運用を擁護する理由として、しばしば「裁判官の独立」が主張される。しかし、この「裁判官の独立」については、裁判官が、裁判を通じて国民の権利を保障することを職責としているので、政治的権力の干渉を排除する必要性があることから憲法で保障されているのであり、裁判官が、法律の立法趣旨を正当な理由なく無視し、何ら法律に根拠のない「慣例」に基づいて導いた結論との整合性がとれるよう恣意的に事実認定を行った結果、国民の権利を侵害する場合には、もはや憲法第七十六条の保護法益を超えているのであって、当該運用は決して許されるものではないと解するがこのような法解釈は誤りか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。

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