古賀克重法律事務所:ハーグ条約加盟に向けた弁護士会の対応は?

2013.10.09

ハーグ条約加盟に向けた弁護士会の対応は?

 ハーグ条約にどのように対応するか、今、全国の弁護士会で対応に追われています。

ハーグ条約の正式名称は、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。

条約の名称からもうかがい知れるように、その背景は、国際結婚の増加に伴って国際離婚も増加し、一方の親による国境を超えた子の不法な連れ去りが頻繁に生じていることをうけ、国際的ルール作りの必要性が出て来たものです。

ちなみに日本人の国際離婚は年に2万件。外国政府から指摘されている子の連れ去り件数(平成24年8月時点)は、アメリカ81件、カナダ39件、フランス33件です。

1983年12月に発効し、締結国は、世界90ケ国。G8諸国のうち日本のみが締結していませんでした。  ようやく2013年5月22日の参議院本会議で全会一致で可決され、国会で承認されるとともに、ハーグ条約実施法案が2013年6月22日、参議院で可決されました。

日本政府も年内にはハーグ条約に加盟する方針です。  そのため現在、日弁連および各弁護士会もハーグ条約に対応するための準備を重ねています。

具体的には、各弁護士会が規則を制定してハーグ条約に対応できる弁護士名簿を作成。各弁護士会は日弁連に対してその名簿を提出します。  そして外務省等から弁護士紹介依頼に応じて、日弁連がリストから3名を紹介する予定です。

名簿登録要件としては、弁護士登録期間が通算して3年以上、子の監護又は引渡しに関連する事案を複数件取り扱ったことがあること、英語を母国語とする者と意思疎通できる程度の語学力を備えていることなどが求められています。

LBP(Left Behind Parent。残された親)は、通常海外に居住しています。したがって紹介された弁護士は、LBPとの間で、メール・スカイプなどによって意思疎通を行います。そのため、通訳を介さずに、LBPとコミュニケーションが取れる必要があるわけです。

一方、TP(Taking Parent。子を連れて行った親)は、通常日本人であることが多いと予想されます。したがってTPとのコミュニケーションは日本語です。しかし、抗弁事由(例えば、外国人の父がDVを行っていた等)を主張・立証するために、現地の関係機関に問い合わせたり、入手した文書を読むための語学力が必要とされるわけです。

なおここでいう「子」は16歳未満が対象です。

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先日、札幌にて開催された「福岡県弁護士会」「第2東京弁護士会」「札幌弁護士会」との3会交流会においても、このハーグ条約問題が議題に挙げられ、かなり積極的な意見交換を実施しました。

東京でも名簿登録できる弁護士は25名程度ではないかということ。

「英語を母国語とする者と意思疎通できる程度の語学力」に重きをおくか、それとも、「子の監護又は引き渡しに関連する事案の経験」に重きを置くか。  後者の弁護士を中心に名簿をそろえて、英語については周りのフォローで対応すべきという意見も出ていました。

いずれにしろ弁護士会としても至急対応していく必要がありそうです。

(福岡県弁護士会 副会長 古賀克重)

11年前