毎日新聞:<ハーグ条約>これって誘拐?相談急増 日本加盟の見通しで

<ハーグ条約>これって誘拐?相談急増 日本加盟の見通しで

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130824-00000050-mai-soci

毎日新聞 8月24日(土)15時35分配信

 

<ハーグ条約>これって誘拐?相談急増 日本加盟の見通しで

「子供を思う気持ちに国境はない」と話す米国人男性=大阪市内で今年5月、岡奈津希撮影

 国際結婚が破綻した夫婦間の子の扱いを定めた「ハーグ条約」に日本が今年度中にも加盟する見通しの中、日本人妻からNPOや外務省に寄せられる相談が急増している。「夫から逃げ子供と帰国したら誘拐になるのか」など深刻な悩みも多い。一方で、子供を連れて行かれた外国人の夫からは「子を捜す悪夢を見る」との訴えも。専門家の中には「勝手に子供を連れ去るのは日本人の『甘え』」という意見も出ている。

【DV被害女性「私が悪者…ぞっとした」】ハーグ条約:米でも困惑 子供の「拉致」か 虐待から避難か

米国・ロサンゼルスにあるNPO「太平洋アジア家族センター」(CPAF)によると、日本人からの電話相談は今年1月から7月までで91件。昨年同期は39件で、2.3倍に増えた。政府が条約加盟への準備を進める中、徐々に関心が高まったとみられる。「夫の暴力から逃げたいのだが、『日本に連れて帰れば誘拐になるぞ』と脅されている」など、日本人妻からはドメスティックバイオレンス(DV)被害の相談が多いという。

CPAFで5年間、相談員として勤める日本人女性は「1本の電話の背景には、100人の電話さえもできない人がいると考えている。日本の法曹関係者らは本当にDVがないかを調べる態勢をきちんと作って、簡単に子供を日本から米国に返さないようにしてほしい」と話す。また、外務省によると、日本に子供を連れて帰国した日本人妻らを対象にした電話相談は昨年5月~今年3月が47件に対し、今年5月からの約3カ月で既に20件を超えているという。

日本人妻側が条約加盟に不安を訴える一方、外国人の夫からは期待の声が強い。日本人妻に幼い長男を連れ去られたと訴える米・カリフォルニア州在住の30代米国人男性が取材に応じ、妻への暴力を強く否定した上で「毎晩、息子を捜す悪夢を見る。連れ去りはただの誘拐。子を思う父親の気持ちに国境はない」と胸中を明かした。

米国に留学中だった妻と出会い、2004年に結婚。夫婦で石川県に移り住み、高校の外国語指導助手(ALT)として3年間勤めた。その後米国に戻り、長男が誕生した。しかし、いつしかすれ違いが重なり、昨年7月に男性から離婚を切り出す中、11月下旬、仕事を終えて帰宅すると、妻と長男の姿がなかったという。

男性は長男を捜しに今年5月、来日。「心に穴が開き、毎日大きくなるよう。息子に会いたい」と話したが、再会できず帰国した。【岡奈津希】

ハーグ条約に詳しい池田崇志弁護士(大阪弁護士会)の話 海外で生活するなら、準備や覚悟が必要。それなしに暮らしてトラブルになり、DVは問題だが、勝手に子供を連れ去ったりするのは「甘え」だ。条約加盟をきっかけに日本人も法廷などで、言うべきことを堂々と主張するという意識改革が求められる。

◇ハーグ条約

正式名称は「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」。一方の親が了解なしに子供を国外に連れ出した場合、もう一方の親の返還要求に基づき子供を元の国に戻す義務を規定している。2013年5月現在、90カ国が加盟。主要8カ国では日本だけが非加盟。日本は今年5月に加盟を承認、6月に手続き法が成立し今年度内にも正式加盟する。手続き法では、外国にいる親が子の返還を求めて日本で裁判を起こせることや、子や親が外国の親から暴力を振るわれる恐れがある場合は、裁判所が返還を拒否できる規定を盛り込んだ。

<ハーグ条約>これって誘拐?相談急増 日本加盟の見通しで

毎日新聞 8月24日(土)15時35分配信

11年前