審判前の保全処分(子の監護者の指定、子の引渡)事例

離婚弁護士の訟廷日誌

家庭裁判月報平成21年第61巻第7号(No7)で紹介された決定です(東京高裁平成20年12月18日決定)。
事案は以下のとおりです。
一方の共同親権者の監護下にある未成年者を他方が違法に連れ去った場合における子の引渡を求める審判前の保全処分事案です。
甲府家裁は、申立人と相手方のどちらが子の監護者にふさわしいか即断することはできないことなどから、
保全の必要性や本案認容の蓋然性がないとして、申立が却下しています。
ところが、東京高裁は、原審の判断について、以下のとおり、厳しく批判しています。
原審のような枠組みで審理判断をすることは、「実力による子の奪い合いを助長し、
家庭裁判所の紛争解決機能を低下させるばかりか、元来趣旨としたはずの未成年者の福祉にも反する事態へと立ち至ることが明らか」であると述べています。

そして、東京高裁の裁判要旨は、以下のとおりです。
共同親権者である夫婦の別居中に、その一方で監護されていた未成年者を他方が一方的に連れ去った場合において、
従前未成年者を監護していた親権者が速やかに未成年者の仮の引渡を認める審判前の保全処分を申し立てたときは、
従前監護していた親権者の監護下に戻すと未成年者の健康が著しく損なわれたり、必要な養育監護が施されなかったりするなど、未成年者の福祉に反し、親権行使の態様として容認することができない状態となることが見込まれる特段の事情がない限り、
申立を認め、
その後の監護者の指定等の本案審判において、いずれの親が監護することが未成年者の福祉にかなうかを判断するのが相当である。
東京高裁の枠組みだと、仮に、別居の際に、子どもを置いて出たのが、母親だとしても、当該母親が父親の監護下にいる子どもを連れ出した場合には、父親であっても、(一時的に)子どもを取り返すことができそうです。
子どもの奪い合いも非常に多い相談の中の1つです。

15年前