千葉日報:子どもの権利を最優先に ハーグ条約加盟へ

子どもの権利を最優先に ハーグ条約加盟へ

http://www.chibanippo.co.jp/c/serial/139092

2013年05月27日 12:55


国際結婚の破綻に伴う子ども(16歳未満)の連れ去りに関するルールを定めた「ハーグ条約」案件が22日に参議院で可決され、加盟関連法案も今国 会で成立する見通しだ。条約に加盟することで、日本から海外へ連れ出された子どもを取り戻すことが容易になる。一方で家庭内暴力(DV)で海外から逃れて きた子どもが、暴力を振るった親の元に戻され再び被害に遭う可能性も指摘されており、こうした不備にどう対処するかなど加盟後も課題は多い。

日本が条例に加盟することで、海外にいるもう一方の親からの返還を拒否でき、これまでは困難だった日本から海外へ連れ去られた子どもの返還手続き が容易になる。また、離婚したまま海外で暮らしている日本人が子どもと一緒に帰国しようとした際に、条約未加盟を理由に裁判所が出国を許可しないケースが あったが、加盟後は認められる可能性が高まる。

国境の壁により、国も思うよな対処ができなかった連れ去り問題が、解決へ向けて大きく前進することは、親の都合によって生活環境の激変など、さまざまな不利益を被る子どもには何よりの朗報だろう。

一方で、DV被害立証のハードルが高いため、DVから逃れて子どもと一緒に帰国した日本人女性が被害を立証できず、連れ戻された子どもが再び被害 に遭ったという事例も起きている。親の養育能力の事前審査もないので、返還後に里親に出された子どももいるなど、現行の条約には幾つもの不備がある。

条約加盟にあたっては、主要国(G8)の中で日本だけが未加盟ということで、欧米諸国から強い圧力を受け対米公約化もしたため、加盟を「外交上の手土産だ」と非難する声も一部で上がっている。

国は条約加盟を諸外国との体面を繕う手段ではなく、子どもの福祉のためと主張するならば、加盟をゴールと考えずに、両親の間だけでなく二つの国の間でも揺れ動く子どもの幸福を最優先に考えねばならない。

国内の支援態勢充実はもちろん、DV立証の簡略化など、条約のマイナス面改善に向け積極的な働きかけをすべきだ。「後発国」と臆することなく先頭に立ち不備の改善を進めてこそ、日本がこの時期に加盟する意義があるのではないか。

11年前