堀尾の保険学:今週の雑談

今週の雑談

(1)以下の2つは、米国下院の関連する委員会(2013年5月9日)における「親による国境を越えた子どもの誘拐」についての公聴会における証言です。
アメリカ海兵隊員だったMichael Elias 氏は、日本人女性と結婚し、2児をもうけましたが、ある時、妻は子どもを連れて帰国し、それ以後、子どもと会えなくなりました。同氏は、公聴会において、次のように述べました
「日本が今回ハーグ条約を締結するのは、国際的な圧力をかわすことだけが目的であり、この件をそれで終わりにすることが目的である」。
また弁護士のPatricia Apy氏は、最近20年間、国際的な子どもの養育の裁判に関わってきました。 同氏は、同じ公聴会で次のように述べました
「日本の当局が繰り返し強調しているのは、ハーグ条約の締結後も、DVの訴えがあれば、その証拠が無くても、子どもを返還しないことである。 (中略)。またもし、連れ去った親が、連れ去りにより犯罪者として訴追されるのであれば、それは子どもを返還しない明白な根拠となることである。」
(2)世界ニュースWorld News の「日本における子どもの誘拐問題」Japan’s Child Kidnapping Problem の中で、棚瀬教授は、次のように述べておられます。(2013年5月19日)
「日本は、ハーグ条約を締結しても、基本的には現在の家族法の実務を続ける。諸外国は、日本がハーグ条約を締結しても、それを守らないことに気がつくであろう。」
(3)ハーグ条約は、両院で、それぞれ全会一致で採択されました。どの政党も、国民がハーグ条約を支持していることをよく知っています。
しかし、「ハーグ条約の実施に関する法律」により、ハーグ条約の条文には注釈がたくさん付きました。注釈の条件を満たさなければ、子どもを返還 しないということです。ハーグ条約に従って「原則的に返還する」のではなくて、裁判所がありとあらゆることを考慮して決めるということです。その裁判は、 これまで通りの日本のやり方で行うということです。
日本政府がハーグ条約を締結したのは、「良親は両親」の制度を実現するためではありません。実際、それは実現されません。今回の件で、離婚後の 子どもの養育について、マスコミで話題になったのは良いことですが、これで目標が達成されたわけではありません。多くの人にとって、ハーグ条約締結後も現 状はほとんど変わらないと考えられます。現状では権力は、少数である反対派が握っています。
次の参議院選挙でまた頑張りましょう。選挙は、「今から2ヶ月後」という観測が有力です。

(4)追記(H25.5.25)

 5月16日の外国人特派員協会における記者会見で、棚瀬教授は次のように述べておられます。(英語です)
「米国の国内法では、子どもを返還しないのは、希 な例外であり、連れ去った親には重い立証責任が負わされている。しかし、今回の日本の国内法では、きわめて広い範囲のケースが返還しないケースに該当す る。例えば、連れ去った者が訴追される場合、英語が上手でないとか、友達が米国にいないとか、良い仕事が見つからないとかの理由で、現地での生活が容易で ない場合などである。その他、非同居親の言動により、子どもや同居親に精神的なショックが与えられる恐れのある場合も含まれる。欧米諸国は、しばらくすれ ば、日本がハーグ条約を守らないことに気が付くであろう。」 (私の訳です)
11年前