沖縄タイムス:ハーグ条約加盟 県内どうなる?

ハーグ条約加盟 県内どうなる?

2013年5月28日 09時40分
(4時間22分前に更新)

国際結婚が破綻した際の子どもの扱いを定める「ハーグ条約」への加盟が22日の参院本会議で可決し、 国会で承認された。必要な手続きを経て、早ければ年内にも加盟する。米軍関係者との国際結婚が多い県内で、関係者は同条約により、基地内から米軍機での子 どもの連れ去りをある程度防げるとの見方を示す。一方、条約に基づいた返還手続き後に、相手国で親権を協議する際、資金のない女性が不利な立場となる可能 性があるなど課題を指摘する。(湧田ちひろ、伊集竜太郎)

対象の子どもは16歳未満。親権を持つ相手に無断で子どもを国外に連れ帰った場合、その親が相手国の 「中央当局」(日本は外務省)に返還申請する。当局が子どもの居場所を特定し、双方での協議を提案。結論が出なければ、子どもが現在住む国の裁判所で返還 の可否を判断する。虐待の恐れがある場合などは返還拒否できる。

厚生労働省の人口動態調査(2011年)によると、県内で一方が外国人のカップルの婚姻は399件。 妻が日本人で夫が外国人の婚姻は308件(77%)と、全国平均の26・6%よりも高い。うち、米国人男性との婚姻が約9割を占めており、多くは軍人・軍 属とみられている。

県内の関係者によると、DVなどを訴えて、子どもを連れて日本に戻る事例が少なくないという。

■未然防止が最善

国際結婚や離婚に関わる「ウーマンズプライド」のスミス美咲代表は、米軍関係者の夫と離婚後、軍用機で子ども二人を米国に連れ去られた女性の相談を受けた。今も子どもの行方は分かっていないという。

加盟のメリットとして、基地内から米国への連れ去りをある程度抑止できると期待する。

ただし、本来は連れ去りを未然に防ぐことが最善だと強調。基地内への連れ去り後、その子の居場所を特定するために時間がかかる問題を指摘する。基地内から米軍機での連れ去りを防ぐため、搭乗の条件に母親への同意を必要とすることなどを運用で実施すべきだと訴える。

■利用しづらい点

女性フォーラム沖縄のメンバーで国際離婚の経験がある嘉手納美音さんは「軍関係者は2、3年で異動す るため、女性は就労も難しく、地域からも孤立しやすい」と、軍関係者との結婚の特徴を語る。定職に就く男性と比べ、女性は結婚破綻後の交渉で必要な裁判費 用を捻出できず、不利な立場となる可能性を懸念する。

同条約に詳しい武田昌則弁護士は「条約はあくまで一時的に子どもを元の国に戻すか否かを判断するだけ だ」と説明。仮に沖縄の女性が条約で子どもを米国に返還された後で親権などを米国の裁判所で決める場合、資金のない人が法的支援を受けられる制度が米国で は州によって違い、利用しづらい点を指摘する。

そのため、米国の裁判で女性側の主張を十分に立証できない点を挙げ、「このままだと『取り戻した者勝ち』にならないか」と懸念を示す。

また、米国などが加盟する養育費の取り立てに関する条約を日本が締結しない点を問題視。同条約に加盟すれば、申し立てられた国が相手から養育費を取り立てる義務があるため、「経済的に不利な立場にある沖縄の女性にはとても必要だ」と強調した。

11年前