ハーフを考えよう:ハーグ条約、日本が年内に加盟の予定

ハーグ条約、日本が年内に加盟の予定

2013.5.25

http://half-sandra.com/column/2013/05/25/1471.php

日本が年内にハーグ条約に加盟するそうです。

国際結婚をしている人、国際離婚をしている人、そしてハーフ達にとって、この「ハーグ条約」は非常に身近です。直接、自分達にかかわってくる問題なので。

念のためにハーグ条約は・・・

(1)他国に連れ去られ、片方の親としか暮らせないのは子供に有害

(2)元の居住国へ子供を返すことで、元の国の裁判所で親権を協議するのが子供には最善の利益

-という考え方に立っています。ここで言う「子供」は基本的には16歳以下の子供のことです。

日本人が欧米人と結婚をし、欧米諸国に住み、現地で子供をもうけて、夫婦関係が破綻し、日本人側の親が子供を連れて日本に帰国してしまい、欧米諸国 側から「日本への子の連れ去り」と見なされている件は、米国81人、英国39人、カナダ39人、フランス33人です(各国政府の説明による。出典:平成 25年5月22日付け朝日新聞)。そして、現在、国際離婚の数は年間約2万件にものぼります。

G8の国々の中でハーグ条約に加盟していない国は日本だけだったので、今回の日本の加盟は、長年欧米諸国から加盟を求められた結果だと見られています。

詳しくは、このコラムの一番下に貼り付けてあるリンクをご覧いただくとして・・・

私は基本、日本が条約に加盟するのは良いことだと思っています。でも同時に、今まで日本が加盟していなかった事実からも分かるように、日本の「離婚後の親の子供への接し方」は欧米諸国の考え方とはかなり違うのが加盟にあたって気になります。

「欧米諸国に住む日本人女性が子供(ハーフ)を連れて日本に帰国」というのは、日本の感覚から言うと、ごく普通の事だったりしますが、この「ごく普通の事」がアメリカのFBI「誘拐犯の指名手配犯リスト」 に載ってしまいます。子の母親である日本人女性の名前と顔写真ががWantedとしてサイトに載っています。このFBIの指名手配犯リストをご覧になった日本人のほとんどの方が「やり過ぎ」と違和感を持つのではないでしょうか。

認識の違いというか、「文化の違い」がそのあたりの「温度差」の理由だと思っています。

さて、この「文化の違い」ですが、基本的には「離婚後の『親子のあり方』」に関する日本と欧米諸国の考え方の違いですね。

たとえば日本では、離婚後、片方の親が親権を持ち、もう片方の親は離婚後子供に会わなくなる・または会えなくなる事が少なくないようです。

小泉元総理がいい例です。彼には3人の息子がいますが、長男と次男に関しては離婚後に父親(小泉元総理)が親権をとっていました。ところが、3男に 関しては、離婚のタイミングが、3男が母親のお腹の中にいた時期と重なったため、3男に関しては母親が親権を取り、この3男は長年父親(小泉元総理)に会 えませんでした。父親(小泉元総理)側も、「3男は関係がない」というスタンスで、彼(3男)が成長し父親に会いに行っても父親サイドに拒まれたそうで す。

この事を雑誌で読んで、私は(父親としての対応が)とても冷たいなと感じたのですが、この小泉元総理のことをヨーロッパ人に話すとほぼ全員が「信じ られない」と言います。「同じ兄弟で、同じ父親なのに、離婚のタイミングが違っただけで、3男だけが父親に会えないなんて、そんな残酷な事があるのか」 と。(私の想像ですが、逆におそらく長男と次男は「母親」に会えなかったのだと想像します。)

もちろん日本人の中にも冒頭のような父親の態度や対応を「冷たい」と感じる人もいるのでしょうが、現実は「でも親の事情だから仕方ないよね」となってしまっているのが現状です。

これを「仕方ない」としていないのが欧州の考え方で、日本は離婚後に単独親権であるのに対し、欧州では離婚後に共同親権(つまり離婚はしたけれど、離婚をした後も父親と母親の両方が子供が成人するまでに定期的に会う)が普通です。

日本人的な感覚では「ずいぶん欧州は『父親の(子供に会いたいという)権利』を大事にしてるんだなあ」と感じるようですが、確かに欧州では離婚後の「子供に会いたい父親の権利」が法律上も大切にされています。それと同時に欧州では「両方の親(つまり父親と母親)と接点を持つ事は子供の権利である」と考えられているのです。親によほどの問題(片方の親が麻薬中毒であるとか、子供に暴力をふるうなど。ちなみに浮気は関係ありません)がない限り、「どの子供にも両親両方とかかわる権利がある」というのが欧州諸国の基本的な考え方であるわけです。

ちなみにこの「子供の(親に会う)権利」がどれほど重要視されているかという事は、先日ドイツで「精子バンクに父親に関する情報や詳細を開示してほ しい」と裁判所に訴え出たドイツ人女性が勝訴し、「どの人間にも親の事を知り、親とかかわる権利がある。精子バンクは女性に精子提供者(父親)の情報を開 示せよ」というある意味衝撃的な判決が出た事からもよくわかります。(男性側からしてみると、20年前に「支払いの良い学生アルバイト」として「将来自分 の情報が一切外に漏れないこと」を条件に精子を提供したのですから、困惑を隠せないようです。)

さて、話を元に戻すと、基本、日本は「子供は母親と一緒が一番」という考えから、「夫婦が別れた場合、母親が子供を引き取る」のが慣習であり文化でもあるわけですが、その考え方が国際的には必ずしもそのままの形で通用しないのが大きな問題ですね。

なので、日本が国際的な条約である「ハーグ条約」に加盟する日までに、「日本国内」においても、単独親権⇒共同親権という流れになれば良いのです が、そうでない場合、つまり今のままの法律と慣習のままでハーグ条約に加盟をすると(もう加盟は決まっていますが)、日本国内の元夫婦は単独親権、でも海 外在住者や国際結婚組だけが共同親権の方向へ、というなんだか矛盾した事になってしまいそうです。私は個人的には、日本国内でも離婚後は共同親権にして、 子供が親の離婚後も両方の親に会えるようにするのが良いと思っています。ハーグ条約への加盟は国内法を見直すための良いきっかけかもしれません。新たな一 歩を踏み出した感じですね。皆様はどう思われますでしょうか。

いずれにしても、「ハーグ条約」に加盟する事で、ハッピーな子供とハッピーな親が増えればよいですね。

サンドラ・ヘフェリン

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過去何日間の「ハーグ条約」関連ニュースのリンク:

http://sankei.jp.msn.com/life/news/130523/trd13052301090001-n2.htm

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130523-00000090-san-pol

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201305/2013052200051&g=pol&_

http://www.bbc.co.uk/news/world-asia-22620662 (英語)

http://news.yahoo.com/japan-approves-joining-intl-child-abduction-pact-113639592.html (英語)

12年前