WLBジャーナル:グローバルスタンダードのWLBが日本を救う!WLBジャーナル独占取材。

グローバルスタンダードのWLBが日本を救う!WLBジャーナル独占取材。

日本のハーグ条約への加入が決まる中、4月19日に衆議院法務委員会において参考人として陳述された棚瀬孝雄弁護士(京大名誉教授、 ハーバードロースクール客員教授、ミシガン大学客員教授、カリフォルニア大学客員教授等々、豊かな国際経験を持つ弁護士)により主催された5月20日講演 会出席の為来日中のレオナルド・エドワーズ氏(経歴:カリフォルニア州家庭裁判所所長、シカゴロースクール教官)、追手門学院大学教授善積京子氏(ヨー ロッパ各国のワークライフバランスの研究を現在行う。スウェーデンに居住されての研究実績を著書で出版)お二人にWLBジャーナルの独占取材に応じて頂き ました。

独占取材に応えていただくエドワーズ氏独占取材に応えていただくエドワーズ氏

 

少子化に関して、司法の観点も含めた日本の子育て環境について伺いました。

 

―エドワーズ氏―

子供、家族の問題は社会の基礎であり、国をあげて、政府、政治家も含めて、堂々と広く公に議論されるべき問題です。

子供、家族の問題は日本のように公にされず処理される問題ではありません。

例として、共同親権などの子供、家族に関わる環境も、子どもが必要としているのは何か、しっかりと国家で考えるべき問題で、アメリカやフランスは、 親に対し、仕事だけでなく両方の親が育児に関わる事の大切さを訓練をする制度もあり、母親だけでなく父親も必ず育児休暇を取る制度を採用しています。

<アメリカでは州ごとに法律があるが、より子供に関わる環境が改善されるよう、多い州では毎年のように州法が改善されるそうです。―講演にて―>

 

―善積氏―

日本の一番の問題は、例え制度があっても実践されない、制度と実践にギャップがあることです。

職場に関して言えば、日本の共働きで育児をしている男性、女性それぞれ50人に行ったアンケートでも、女性の育児休業は昔に比べれば取れるように なってきているが、男性に関しては看護休業はとれるが、ほぼ育児休業はとれない。制度があるものでも、職場のムードで実際にはとれない。例えば司法の面で も、法律があるものですら、実際には適用されないというのも同じだと考えられます。

 

 

次にワークライフバランスについて伺いました。

日本では、子育て経験が仕事面で評価されるケースはごく少数で、特に女性労働者は出産を機に違法な退職勧告を受けて退職をするケースがアンケート調査で約1割、実質はもっとあるとも言われます。女性の企業役員もほとんど生まれない現状です。

実際に子育てをしながら仕事をされている方の中には「こども=仕事にマイナス」とされる場面が多いと言う意見も多く聞かれます。

アメリカや、ヨーロッパではどうでしょうか?

 

―エドワーズ氏―

アメリカでもかつて企業側の意見として子育てなどせずに働けという意見があり、論争が起こってきました。その為子供、家族に関する多くの研究が行わ れる事により、フランスやノルウェーなど進んだ国にはまだ及んでいませんが、実際に制度として導入される事で解決がなされてきています。

日本人へのアドバイスとしては、個々人が実践をしていく事も大事。仲間を増やしながら

行っていくのです。

 

―善積氏―

スウェーデンを例にとると、日本と同様にかつて少子化が起こりました。それまでスウェーデンでも日本と同様、男性が働き、家庭の事は女性が行うとい う文化でした。1960年代頃、女性も働き、男性も家庭に関わるように価値観が変わりました。仕事を行いながら子育ても行う為、仕事を効率よく終わらせ、 無駄にだらだらと仕事をしないで帰って家庭に関わるのです。そして、こどもは社会の子供であり社会で育てるという認識に変わりました。

 

1人あたりのGDPなど、子育てを支援している国の方がはるかに日本より順位が高くなっていますね、

 

―善積氏―

そうですね、時間になったら家庭にちゃんと帰れるように、効率よく仕事をするようになるんですね。日本で最近話題になる育メンはあたりまえなんです。性別を問わず、子育ても含め家庭も大事にします。

子育ての経験により、効率よく働けるという認識もあり、仕事面でもよい評価がされます。

 

本日はありがとうございました。

 

ご挨拶の中、法務委員会での取り組みをご説明いただく、みんなの党 真山勇一参議院議員ご挨拶の中、法務委員会での取り組みをご説明いただく、みんなの党 真山勇一参議院議員

このインタビューの他、日本のWLBの現状に関わるさまざまな問題点を教えて頂きました。その中で特に子育てに関わる、現実的な環境への取り組みが 行われていない事が大きな社会問題を生み出している事が理解できます。日本ではおよそ3組に1組の夫婦、年間約25万組の夫婦が離婚しています。その中で 毎年16万人以上の子供が片方の親と会えなくなっており、国際的に問題とされている中で今般のハーグ条約への参加となりました。子供と会えなくなった親も 精神的なショックを受け、うつ病により働けなくなる、自殺をする、といったケースが起っています。職場の労働力にも大きな影響を与えており、現在全体の統 計は取られていませんが、各国大使館でそれぞれ自殺者などの把握が行われています。

棚瀬氏、エドワーズ氏、善積氏、ハーグ条約参加に際しての国際法に関する講演「共同監護と面会交流」講演にて棚瀬氏、エドワーズ氏、善積氏、ハーグ条約参加に際しての国際法に関する講演「共同監護と面会交流」講演にて

国連からも、片親家庭における子どもの養育状況が悪い事への指摘を日本は受けています。

 

この点の日本における原因は、家庭内暴力へ対応する制度、運用する機関が国際比較で貧弱な為、親子の交流と度々混同して取り扱われる点、また家庭裁判所での取り扱いの中で、日本も加盟している子どもの権利条約の誤った運用にあります。

 

子どもの権利条約の中に意見表明権というものがあります。日本の家庭裁判所におけるこの子どもの意見表明権の誤った運用が、国連子どもの権利委員会の中で問題視されています。

 

日本の家庭裁判所では、離婚家庭の子どもから、同居をしていない父親、母親に会いたくないと発言があった場合には、その親に会せない、もしくは交流を大きく制限するといった対応が取られています。

その理由としてこの意見表明権を家庭裁判所の職員が引用していますが、14,15才以下の子どもの交流をこの意見表明権を理由に行わせない、もしくは大きく制限する国は、先進国と呼ばれる国では一つもないそうです。

国際的に、離婚夫婦間で協力して子どもの取決めができない環境下におかれた子供が、一緒に暮らしていない親と会いたいと発言できるケースはほぼ無いという多くの研究結果が出されています。

通常、離婚して親が別居となった段階で、親同士が激しくもめていて子どもの養育に関して決め事が出来ない場合に日本のように単独親権となるが(G8 の中で共同親権を採用していないのは日本のみ)、その場合でも一緒に住んでいない親とも、一般的には「週に3回の食事をする、隔週で週末宿泊で過ごす、夏 休みは1カ月一緒に過ごす」、といった取決めが即座に厳格に行われる為、日本のような争いにはならず、通常の共同親権の中では、半分ずつ子供が生活をする といった事が親同士の取決めの中で行われているそうです。親子の交流が同居している親に守られない場合には、裁判所によりその親の監護が認められなくなる 為約束は守られ、親が麻薬中毒・アルコール中毒・家庭内暴力が確定している、などの場合には、幾重にも作られている司法、行政の子供を守る制度の中で、公 費負担で特別な訓練を受けた担当者による付き添いで親子の交流が行われるそうです。

また、祖父母、その他の親族や、地域のコミュニティとの交流なども子供を支える交流として司法により積極的に行わるとの説明がなされました。それは、片方の親が亡くなった場合にも行われるそうです。

 

親子の交流の中で養育費も支払われ、日本の様に8割の子どもが一緒に暮らしていない親からの養育費が支払われないといった事も起こりません。日本の 司法では、同居親が養育費の受け取りを拒否した場合には、裁判においても受け取りの拒否が認められたケースもあり、子どもの権利である養育費も、同居して いる親の判断で左右されてしまいます。

 

各国の歴史が物語っていますが、社会の礎である子どもを、その境遇に関わらず大切に社会で育てる制度・文化を整えた国は、少子高齢化から脱し、大人も性別を問わず社会で活躍し生産性を上げています。これは、国にとっても、個々の企業にとっても大きなプラスです。

そのような国々は、一人あたりのGDPで軒並み日本を上回っています。

日本でも政府が議論を本格化させ、ダイバーシティー、ワークライフバランスの取り組みを先進的な企業では始めています。これを大きな動きにし、子どもや孫の先まで皆で幸せに過ごせる文化を作るのは今です。

11年前