ハーグ条約 親子の人権守るために 05月23日(木)
http://www.shinmai.co.jp/news/20130523/KT130522ETI090005000.php
「ハーグ条約」への加盟が国会で承認された。国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めている。国内の手続きを定める関連法案も今国会での成立が見込まれる。早ければ年度内にも加盟する見通しだ。
子どもを一方の親が勝手に国外に連れ去った場合、もう一方が求めれば原則として、いったん元の国に返すことになる。どちらが子どもの世話をするかなど、その国で話し合って決める。
子どもを日本に連れ帰った親が元の国で訴えられるといった問題が出ている。一方の親と会えない状況は、子どものためにもならない。国際ルールに沿ってトラブルを解決できるよう、政府はしっかり態勢を整えてもらいたい。
ハーグ条約は1983年に発効した。ことし4月現在、米国や欧州各国、韓国など89カ国が加盟している。主要国(G8)では日本だけが未加盟だ。連れ去りの件数はつかみにくいものの、例えば米国からは昨年9月の時点で81件が日本に伝えられている。
加盟国は子どもを返すよう求められたら、居場所を確かめ、まずは親同士の話し合いでの解決を促す。うまくいかなければ裁判所が返すかどうかを決める。
日本から子どもを連れ去られた親には大きな助けになる。今は自力で相手を捜し、外国の裁判所に子どもを返すよう訴えなければならない。ハーグ条約に加わることで、加盟国間の協力によって手続きが進められる。
離婚後も外国で暮らす日本人が子どもを連れて帰国しようとしても、未加盟を理由に裁判所が許可しないケースもあるという。こうした問題の解消も期待できる。
半面、日本では加盟への慎重論も根強い。母親が家庭内暴力(DV)から逃れ、子どもを連れ帰るケースが目立つからだ。返した場合、子どもの安全が脅かされないか心配する声がある。
虐待やDVの恐れがあるときは返還を拒否できることになっている。問題は元の国での被害を立証しなければならないことだ。追い詰められ、やむを得ず逃げてきた場合、証拠を示すのは難しい。
外務省は、国際結婚して海外で暮らす日本人女性らのDVの相談に力を入れる考えだ。相談内容の記録を保管し、求めに応じて裁判の証拠として提出する。被害を食い止めるためにも、積極的に取り組む必要がある。
条約に基づき、日本人の親が外国で協議に臨む場合も必要に応じて適切に支援するよう求めたい。