沖縄タイムス社説:[ハーグ条約加盟]子どもの利益最優先に

社説[ハーグ条約加盟]子どもの利益最優先に

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130524-00000012-okinawat-oki

沖縄タイムス 5月24日(金)11時56分配信

 国際結婚が破綻した夫婦間で子どもの奪い合いが起きた際のルールを定めた「ハーグ条約」案件が22日の参院本会議で全会一致で可決、承認された。条約とセットとなる関連法案も今国会内で成立する見込みで、早ければ年内にも正式加盟する見通しだ。
条約は、一方の親が16歳未満の子どもを無断で自分の出身国などへ連れ出した場合、残された親が求めれば原則として返さなければいけないという内容だ。
関連法案では、日本人の親が子どもを連れて帰国した場合には、外国人の親は外務省に子どもの返還を申請できる。外務省は子どもの居場所を調べて見つけ出し、まずは当事者間での解決を促す。不調に終われば、東京、大阪の家庭裁判所が判断する。
1983年に発効したハーグ条約には米国や欧州連合(EU)の全加盟国、韓国、タイなど89カ国が加盟。主要国(G8)では日本だけが未加盟で、米国などから早期加盟を強く求められていた。
日本人の国際結婚は1980年代後半から急増し、2011年には約2万6千組の夫婦が誕生した。ただ、結婚生活が破綻し、離婚するケースも増加。一方の親が子どもを国外に連れ出し、誘拐罪に問われるなどのトラブルも多発、国際問題化してきた。
こうした状況下にありながら、日本が加盟に慎重だったのは、外国人の夫による家庭内暴力(DV)や虐待被害を訴えて日本人の妻が子どもを連れ帰るケースが多数あったためだ。
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ハーグ条約に対しては、子どもの利益よりも親の権利を優先しているとの指摘もある。国際ルールに沿った対応をしたために、子どもが元の国に戻されてDVや虐待にさらされてしまったとなると、本末転倒である。ここは子どもの利益を最優先するという大原則に立つべきだ。
条約には、「子どもの心身に害を及ぼす重大な危険がある場合」は返還拒否できるとの規定がある。政府の関連法案でもDVや虐待の恐れがある場合には、子どもを返すのを拒否できるとの例外規定が盛り込まれている。当然の措置である。
外国人親によるDVなどの証明を求められるのは日本人親の側だ。ただ、個人で対応するのは容易なことではない。日本の在外公館が現地で国際結婚している邦人の相談に応じ、訴えの内容を記録したり、診断書の取り寄せ方を助言するなどのきめ細かいサポートが不可欠だ。
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ハーグ条約への加盟は、国際結婚の破綻だけに限らず、国内の離婚問題についても、国際ルールとの整合性をどう図っていくかを議論する機会になるはずである。
欧米では離婚後も両親が親権を持つ共同親権が一般的であり、条約の趣旨もこれに基づいている。日本の場合は、どちらか一方が親権を得て子どもを引き取 り、別れた親と定期的に面会交流することもいまだに一般的にはなっていない。子どもの利益を守ることを最優先に考え、法律や制度の改善を図っていく時期を 迎えている。

最終更新:5月24日(金)11時56分

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