産経:ハーグ条約、参院も承認 年度内にも加盟の見通し

ハーグ条約、参院も承認 年度内にも加盟の見通し

国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めたハーグ条約を全会一致で承認した参院本会議=22日、国会参院本会議場(酒巻俊介撮影)国際結婚が破綻した夫婦間の子どもの扱いを定めたハーグ条約を全会一致で承認した参院本会議=22日、国会参院本会議場(酒巻俊介撮影)

 結婚が破綻した夫婦の一方によって、国境を越えて不法に連れ去られた子供を保護するため、もともと家族で生活していた国への子供の返還などの手続きを定めた「ハーグ条約」への加盟案が22日、参院本会議で全会一致で承認された。衆院では可決済み。

条約加盟に合わせた国内手続きを定めた条約実施法案も今国会で成立見込み。所管する政府機関の整備を進め、年度内にも加盟する見通し。政府が対米公約としていた早期加盟が、昨年3月の国会提出後、衆院解散による廃案、再提出を経て実現する。

ハーグ条約は、一方の親が16歳未満の子供を国外に連れ去り、もう一方の親が返還を求めた場合に、原則として子供を元の国に戻すことを義務付けた条約。一 方の親から国外に連れ出された場合、元の居住国で親権・養育などの問題を協議することが、「子供にとって最善の利益」という考え方に立って定められた。

関連の条約実施法案では、主導的役割を果たす政府機関である外務省が、子供の居場所確認や当事者解決を促すとされる。不調の場合、東京、大阪両家庭裁判所 が子供を元の居住国に戻すかを判断する。戻すのが原則だが、「子に重大な危険がある」といった返還拒否のケースも例外として、実施法案内に盛り込まれてい る。

近年、国際結婚の破綻が増え、一方の親が他方に無断で子供を国外に連れ出すケースが目立っており、ハーグ条約はこの問題に対処するため機能してきた。

■子供の利益どう判断、求められる国際水準

日本は主要8カ国(G8)の中で、唯一の非加盟国だったこともあり、特に欧米人との国際結婚で破綻した日本人による子供の連れ去りを批判されるケースが目立ち、欧米諸国から加盟を強く求められてきた。

 日本人による連れ去りでクローズアップされがちなのが、夫か元夫の家庭内暴力(DV)が原因で、子供を日本に連れ帰る母親のケース。国際結婚の破 綻による子供の引き渡し請求事件をいくつも扱う池田崇志弁護士は「実際には、日本の女性が実家に連れ帰るのと同じ感覚で子供を連れ去るケースが数多い。 DVがないのに、自らを正当化するためにDVを主張するケースも少なくない」と話す。

ハーグ条約は、(1)他国に連れ去られ、片方の親としか暮らせないのは子供に有害(2)元の居住国へ子供を返すことで、元の国の裁判所で親権を協議するのが子供には最善の利益-という考え方に立っている。

池田弁護士は「離婚事案を扱う日本の調停委員は『母親の元にいる方が子の幸せ』との意識がいまだに強い。だが、欧米人の父親の子に注ぐ愛情は強い。日本でも国際水準に合わせていく必要がある」と指摘している。

12年前