毎日新聞:<ハーグ条約>子育て困難なら返還拒否 異例の独自規定に賛否

<ハーグ条約>子育て困難なら返還拒否 異例の独自規定に賛否

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130512-00000002-maiall-soci

毎日新聞 5月12日(日)10時29分配信

 ◇「加盟国で孤立も」「子の福祉重視を」

ハーグ条約は、子の返還を拒否できるケースを「子の心身に害を及ぼす重大な危険がある場合」と定める。9日に衆院を通過した国内手続き法案は、DVの恐 れがある場合や外国での子育てが困難な場合なども、日本の裁判所が返還を拒否できるとした。加盟国がこうした規定を明示するのは異例で、専門家の間にも賛 否両論がある。

中央大法科大学院の棚瀬孝雄教授(法社会学)は「加盟は大変好ましいが、日本が独自に『子を返還しない』運用をしたら、条約の趣旨が骨抜きになる恐れがある。加盟国の中で孤立し、国際的信用が失墜しかねない」と懸念する。

米国などの加盟国は日本以上にDVの保護制度が整っているとして、棚瀬教授は「被害女性も不法に子を連れ帰るのではなく、まず現地の制度を利用した上で、離婚後に両方の親がどのように子の養育をしていくか取り決めてから別れるべきだ」と話す。

一方、日本弁護士連合会「両性の平等に関する委員会」副委員長の長谷川京子弁護士(兵庫県弁護士会)は「返還されるのは生きた子であり、その福祉が害さ れてはならない。家裁は、条約が定める返還例外事由や国内手続き法の規定を踏まえ、元いた国に子を返すかどうか、慎重に判断すべきだ」と指摘する。

その上で、条約加盟にあたっては(1)担当裁判官が児童虐待やDVも含め、子供の人権に関わる専門的な研修を受ける(2)児童虐待やDVを理由に子を連れ帰った親が裁判でそうした事実を証明できるよう、在外公館が支援態勢を整える--ことの必要性を強調した。

また、条約は返還手続きとは別に、加盟各国の「中央当局」(日本では外務省)に当事者間の友好的な解決を促すよう求めているが、日本では当事者間を仲介する「受け皿」の整備が進んでいない。

このため日本仲裁人協会(東京都)は条約発効後に国際的な家事調停を実施できるよう、調停人の研修などを始める予定だ。同協会常務理事の小原望弁護士 (大阪弁護士会)は「返還は必ずしも子の最善の利益にはならない。十分な面会が保障されるのであれば、返還まで求めない親もいるはず。連れ去られた外国人 の親が利用しやすい調停機関は不可欠だ」と話している。

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