裁判官の出張尋問認める ハーグ条約で見解
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http://article.okinawatimes.co.jp/article/2013-04-13_47973
【東京】法務省は12日、国際結婚が破綻した夫婦間で子どもの奪い合いが起きた際のルールを定めた ハーグ条約の関連法案で、沖縄で子の返還手続きを行う場合、大阪家裁の裁判官の出張尋問を認め、その出張費用を公費で賄えることを認めた。同日の衆院法務 委員会で、宮崎政久衆院議員(自民)の質問に、法務省が見解を示した。
法務省は当初、子の返還手続きの管轄裁判所は東京家裁と大阪家裁の2庁だけとし、遠隔地で裁判を起こした場合、当事者が東京や大阪に出向いて尋問するか、現地でのテレビ会議や電話会議システムを利用するだけだった。
国際結婚の多い県内の弁護士や識者らは「管轄を沖縄の裁判所にして、当事者が裁判官に直接訴える機会を設けることが重要だ」としていた。
また、裁判官の出張費用も訴訟費用に含み当事者負担の予定だったが、公費負担に転換し、運用で配慮した形だ。
同問題に関わってきた宮崎氏は「沖縄は米軍基地があるため国際結婚も多く、県民の女性が、子の返還をめぐる案件に巻き込まれることも予想される。遠隔地にいても不利益を被らないような法律にすることが大切だ」と述べた。
同法案の本格審議は5月以降になる見通しで、今国会で承認される方向だ。
県内関係者「さらに対応を」
ハーグ条約関連法案で、子どもの親権をめぐる裁判の出張尋問を県内で一部公費で行うとする国の方針を、県内の関係者らは、負担軽減策として一定評価した。ただ、養育費受け取りなど、国際結婚の失敗から派生する問題は多く、政府にさらなる対応も求めた。
米軍人・軍属との交際や結婚問題の相談にのっているウーマンズプライドのスミス美咲代表は「公費負担となれば、気持ちの上では楽になる面もある」としながらも「なぜ大阪からの出張という形なのか。国際結婚が多い沖縄の裁判所でも管轄できるようにするべきだ」と強調した。
国際離婚の代理人などを務めた経験がある加藤裕弁護士も費用の公費負担は評価する一方、「ハーグ条約 は子どもをまず元の国に戻すことを原則にしており、子どもの移動負担が問題になっていると聞く。子どもの福祉を最優先に居場所を決める枠組みを、日本政府 も加盟国に求めていくべきだ」と指摘した。
琉大法科大学院の武田昌則教授は、養育費を回収するハーグ条約に日本が加盟していないことを疑問視。「当事者の総合的な保護を考えるなら、子どもを奪取する条約だけでなく、養育費回収の条約にも加盟すべきだ」と、国のちぐはぐな対応を批判した。