北日本新聞:ハーグ条約加盟/子供を守る意識明確に

ハーグ条約加盟/子供を守る意識明確に

http://webun.jp/news/C100/knpnews/20130408/78319 

国際結婚が破綻した夫婦の子供の扱いを定めた「ハーグ条約」への加盟承認と関連法案が国会で審議入りした。

5月中に関連法案が成立する見通しで、年内にも締約国となる。

夫婦や親子間、しかも国境を隔てた家庭問題に政府が介入することになる。

互いの国の法制度や慣習、言葉の違いもあり、当事者だけで対応するには困難なことが多い。国の手厚い支援がなければ決着は望めない。

まず政府は子供の人権を守るという意識を強く持ち、親を含めて守られるべき人が確実に保護される支援体制を整えたい。

条約は、夫婦で子供の奪い合いになり、一方の親が16歳未満の子を無断で自分の出身国などへ連れ出し、他方の親が会えなくなる事態に対処するためのものだ。

仮に、日本人の親が子供を連れて帰国すれば、外国人の親は日本政府に返還を求めることができる。外務省が子供の居場所を調べ、もと住んでいた国に戻す義務を負う。その後、親権などの争いを解決することになる。

欧米を中心に89カ国が加盟しており、主要国(G8)では日本だけが加盟していない。米国は子供の連れ去りを人権問題として重視しており、加盟を強く求められていた。

欧米では、連れ去りを「誘拐」だとして親が刑事責任を問われる例もある。国情の違いも考慮した上で、不幸な出来事を連鎖させないルールを整えなければならない。

あらかじめ外務省が話し合いでの解決を促すこともできる。司法に裁定させる前に、当事者間で協議が進むよう支援する仕組みが大切だ。

子供を元いた国に戻すのが原則とはいえ、返すのが妥当かどうかは日本の裁判所が判断する。「子の心身に重大な危険がある場合」と認めれば返還を拒否できる。

配偶者の家庭内暴力(DV)から逃れるために子連れで帰国するケースは現実にある。危険の芽を見過ごすようなことがあれば、深刻な結果を招きかねない。

そんなことを防ぐためにも、返還拒否できる条件を、条約承認に伴う国内の関連法で詰めておく必要があろう。

外国でのDV被害を個人が独力で立証することは簡単ではない。日本の在外公館が、国際結婚している邦人の相談に応じるとともに、訴えの内容を記録したり、診断書の取り寄せ方を助言したりするなど、普段からサポートに力を注いでほしい。

相手国に戻して親権をめぐる裁判を行う場合にも、弁護士を紹介するといった支援も行うべきだ。

子供が父母どちらと暮らすことになっても、両親と健全な環境で面会し、交流できることを保障しなければならない。

国際結婚の破綻に限らず、国内の離婚問題についても現在の単独親権や面会のあり方を議論し、国際ルールとの整合性をどうとるのか、あらためて考えるタイミングではないか。

12年前