毎日新聞:親子の絆:育てる父たち 離婚、別れて暮らしても−−

親子の絆:育てる父たち 離婚、別れて暮らしても−−

http://mainichi.jp/feature/news/20130327ddm013100019000c2.html

毎日新聞 2013年03月27日 東京朝刊

 ◇面会求める調停経て 「どこにいてもパパ」伝え続け

「イクメン」「カジメン」(育児や家事に積極的な父親)が注目を集めている。父親と子の結びつきは強まった? とはいっても、離婚した夫婦の関係がこじれると親子の別れにつながるケースが多いのが現状。そんな中で、絆を育てる父親たちを取材した。【山崎明子】

 ◇絶縁の危機越え

東京都内に住む公務員のタケオさん(55)=仮名=は、離れて暮らす高校2年の長男と交わした携帯メールを保存している。「お父さん、スポーツ用のポロシャツちょうだい」「出張中に鉢植えに水をやっておいてくれないか?」。何気ないやり取りだが、4年越しで取り戻した親子の絆を表す宝物だ。

08年春、外出先から帰宅すると妻と長男、長女の姿が消えていた。育児を巡って意見が合わず、妻に手を 上げたこともある。だが、家出前日にも息子とキャッチボールをしたばかり。やがてDV(ドメスティックバイオレンス)による保護命令が下り、離婚は訴訟に もつれ込んだ。子供らと会えないまま親権を手放した。

面会交流を求める2度の調停を経て長男と再会したのは11年のクリスマスイブ。面会を取り持つ第三者機 関の有料サービスを利用した。別れ際、「お父さんもつらかったよ」と漏らすと、長男は「僕も大変だったよ。お父さんもがんばって」と、背中を押した。父親 に戻れた瞬間だった。

 ◇週末は社長休業

都内でIT関連企業を経営するヒデノリさん(43)=仮名=は、離婚して長男(7)と別々に暮らすようになって5年。隔週の週末は子育ての日だ。

土曜日朝10時に元妻の家に迎えに行って親子2人で出掛け、夜はヒデノリさん宅で夕食を作って食べて寝る。日曜日は魚釣りなどを楽しみ、夕方に送っていく。平日は会社と社員のため仕事に没頭するが、長男と会う日を待つ2週間は早く過ぎるという。

「子供に両親の不仲を見せつけるぐらいなら別れよう」。ヒデノリさんは08年、3年間の結婚生活に終止 符を打った。離婚には夫婦とも納得したが、長男を奪い合って協議はもめ、最終的に親権は父、監護権は母が分けて持つことで折り合った。「今の法律では、両 親が離婚すると一つしかない親権を取り合ってもめる。どちらかの親は親でなくなってしまうのはおかしい」

 ◇実績重ねて

「今のカレシは内気だからパパとの食事会はちょっと待ってね」。埼玉県に住む会社員のヨシオさん(46)=仮名=の携帯電話には、札幌市で暮らす22歳の長女からこんなメッセージが届く。

今でいう「授かり婚」。家庭に不満はなかったが、ヨシオさんの火遊びがもとで夫婦仲は破綻。妻は小学校5年生だった長女を連れて帰郷した。しばらく婚姻関係を維持したが、将来を見据えて6年ほど後に正式離婚した。

仕事と育児を両立させる自信はなかったし、元妻は娘を手元に置きたがった。「建設的な別れ方をしよう」。親権では争わなかった。

長女と会えるのは1年に1〜2回。長期休暇を取っては会いに行った。屋外でバーベキューやドライブをするなど、人目を気にしなかった。「パパはどこにいても君の父親」。ヨシオさんは言葉と態度で伝え続けた。その思いはやがて、長女にも伝わった。

 ◇自己肯定のために

厚生労働省の人口動態調査によると、2011年の婚姻件数は66万1895組、離婚は23万5719 組。3組に1組が離婚している。約14万組は未成年の子を持つ。離婚、再婚後も2人の娘を元夫に会わせている家族問題カウンセラーの寺尾由佳子さん (42)は「子どもが自分を肯定するためにも、別居の親とのつながりを作るのは同居の親の務め。子どもは育ててくれる親をきちんと見てくれます」と話す。

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