産経:ハーグ条約 子の幸せ最優先で支援を

ハーグ条約 子の幸せ最優先で支援を

 国際結婚が破綻した夫婦間で子供の奪い合いが起きた際の解決法を定めた「ハーグ条約」加盟承認案と関連法案が国会に提出され、5月中にも承認、成立の見通しだ。

政府は虐待する親の元に子供が戻される事態が起きないよう、法制度と日本人親子を支援する体制の整備に万全を期すべきだ。加盟慎重論が根強いことを忘れるべきではない。

条約では、一方の親が子供(16歳未満)を無断で国外に連れ去った場合、加盟国が子供を捜し元の居住国に戻す義務を負う。どちらの親が養育するかなどは元の国で決める。

日本で慎重論があったのは、外国人の夫の家庭内暴力(DV)から逃れ、子供とともに帰国した女性が少なくないからだ。

条約は、子供が危害を受ける危険を返還拒否の理由として認めている。法案では、子供だけでなく、母親への暴力も理由に加えられたが、子供の気持ちを傷つけ、やはり危険との判断からだ。法案に盛られた拒否理由で十分に母子の安全が保たれるか、慎重に審議を尽くしてほしい。

日本に子供が連れてこられた場合、外務省がその所在を調査し、日本の裁判所が返還か拒否かを判断する。問題は外国でDVの被害に遭っていたとしても、その立証が難しいことだ。

政府は在外公館を通じて、DV被害の相談に乗り、内容を記録するなどして、日本の裁判所に送ることにしている。元の居住地へ返還となった場合でも、親権などを争うケースについては、現地の弁護士や支援団体の紹介などの手助けも必要だろう。

送り返された子供が再び虐待されることを防ぐため、可能な限りの手段を尽くして子供の幸せを最優先にした支援を求めたい。

日本人の国際結婚は一時、年間4万件を超えた。離婚、別居などに伴う子供をめぐるトラブルも増え、国際ルールが必要との指摘もあった。条約には、89カ国が参加しているが、主要国(G8)で未加盟は日本だけで、安倍晋三首相が先の訪米で加盟を約束した。

一方、条約に参加すれば、日本から他の加盟国に連れ去られた子供の返還手続きを取ることも可能になる。未加盟を理由とした子供を連れた日本への渡航制限も改善されることになり、プラスとしてとらえたい。

12年前