http://www.topics.or.jp/editorial/news/2013/03/news_13632231940451.html
国際結婚が破綻した夫婦の間で子どもの奪い合いが起きた場合、どう対処すればいいか。その解決策を定めた「ハーグ条約」に、日本が加盟することが確実となった。
条約承認案と関連法案が今国会で承認・成立の方向になったためで、先の日米首脳会談でも安倍晋三首相がオバマ大統領に早期加盟を約束した。政令などの整備を経て、年内にも締約国に仲間入りする見通しだ。
ハーグ条約は子どもの福祉を守ることを基本としている。適切に運用し、実効が上がるようにしなければならない。
条約は30年前の1983年に発効し、米国や欧州諸国、タイ、韓国など計89カ国が加盟。主要国(G8)の中で唯一未加盟の日本は欧米から加盟を強く求 められ、人権問題として重視する米国では「取り扱いを間違えれば、潜在的には爆発するような重要案件だ」との声まで上がっていた。
このため、2011年に民主党政権が加盟方針を決め、安倍政権が引き継いだ。
ただ、条約はあくまで民事上の手続きを定めたものであり、国が当事者を全面的に支援しなければ十分に機能しない。成否は政府にかかっていると言えよう。
条約加盟後、国際結婚が破綻した日本人の親が16歳未満の子どもを連れて勝手に帰国したら、もう一方の外国人の親は、日本の外務省に設置予定の「中央当局」に子どもの返還申請ができる。中央当局は子どもの所在を調べ、日本の裁判所が返還の可否を判断することになる。
しかし、司法手続きの前に中央当局が当事者の話し合いによる解決を促すことも可能だ。加盟国の状況を見ても、この段階での決着が半数に達している。任意の解決ができるに越したことはなく、政府はまず、こうした協議の支援に全力を挙げるべきだろう。
さらに加盟国では、司法手続きに入っても3割は裁判所が返還を拒否している。拒否できる場合が条約に規定されており、中でも「子どもにとって重大な危険がある場合」が重要だ。
政府が関連法案で「家庭内暴力(DV)の親への返還」が「重大な危険」に当たるとしたのは当然である。返還命令が確定すると、強制執行による子どもの引き離しもできる。DVの親に返還するといった過ちは決してあってはならない。
そのためには、政府が立証に関して援助する必要がある。司法手続きで外国人の親によるDVの証明を求められるのは日本人の親の側だが、個人で対応するのは容易ではないからだ。
日本の在外公館が、現地で国際結婚している邦人の相談に日常的に応じるなどの取り組みが欠かせない。外務省は既に一部でこうした試みを始めているが、専門要員の配置など一層の対応が望まれる。
日本から連れ出された子どもの返還を求める逆のケースも出てくるだろうが、最優先しなければならないのは子どもの利益である。政府は条約加盟までに準備をしっかりと整えてほしい。